ここで、実際の例をお話しましょう。
私がプレイングマネジャーだったときの話です。部下のT君は、どちらかといえば物事をあまり自分で考えないタイプでした。
「竹内さん、この設計書、チェックしてもらっていいですか?」と頻繁に設計書を持って来るので、「先頭で引っ張る」スタイルでリーダーシップを実践していたときの私は、T君の設計書をチェックする仕事が増え、結構なストレスになっていました。
そこで私は、T君との関わり方を変えることにしました。「1つ1つの仕事自体の責任を持つのはT君であり、私ではない」ことを意識し(チームの運営や業績に、最終的に責任を持つのは私ですが)、「T君にとって、この設計書は100満点中何点の出来?」「他に改善点があるとしたら、どこにあるかな?」と問い掛け、T君が物事を“自分で”考えるような関わり方に変えました。すると、T君は次第に自分で考えるようになり、私が設計書をチェックする時間も減りました。
このように、関わり方を「後方から支援する」スタイルに変えることで、リーダーを務めることに対する抵抗感が小さくなり、「人を育てるのも楽しいじゃないか」と思うようになりました。
リーダーになりたてのプレイングマネジャーは、今までの仕事に追加してマネジメントの仕事が増えて、いろいろな不安や焦りがあると思います。それを全部1人でやろうとすると大変です。
また、人には得手不得手があります。私のように「先頭で引っ張る」のが苦手なタイプもいるでしょう。
もし、あなたが、「後方から支援する」のが得意なタイプなら、個性に合ったリーダーシップを取ることを心掛けてみてください。そうすれば、リーダーの仕事に対する苦手意識や心のストレスを軽減できるでしょう。
静かな場所に行って、コーヒーでも飲みながら、紙とペンを取り出して考えてみてください。
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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