画面3は、筆者の家族が主にWebブラウジングのために使用しているタブレットPCです。たまにOffice 2016で文書を作ることはありますが、ほとんどはWebサイトの検索とブラウザベースのゲームを楽しむくらいで、週に多くて3日ほどの利用です。
Windows UpdateとOffice 2016の更新は、毎月1回以上、筆者が手動で実行しています。Windows UpdateとOffice 2016の更新だけで、このタブレットPCのネットワーク使用量の8割を占めています。言い換えると、500MB以下のWebトラフィックを安心して見るだけなのに、更新のために数GBのネットワークとPCのCPU時間を割いていることになります。
画面4は10年前に購入したウルトラモバイルPC(UMPC)です。いつまで最新のWindows 10が動くのか、単に興味本位でアップグレードし、更新し続けています。
スペックはプロセッサがIntel A110 800MHz(Windows 10のシステム要件は1GHz以上)、メモリ1GB、内蔵HDD 60GB、ビデオ解像度1024×600ピクセルで、とても実用に耐えない遅さですが、何とかWindows 10 Home(x86)Creators Updateが動いています。一部の報道では、マイクロソフトがAtomの一部(Clover Trail)のサポートをWindows 10 Creators Updateから打ち切ったという情報がありますが、Atomの前身(同機種のAtom搭載モデルは翌年発売)のこのPCでは動いています。
この1カ月間、このUMPC、電源をオンにしたのは2017年7月12日のWindows Updateのために1回、その翌日に配布されたOffice 2016の更新のために1回(今回)の計2回だけでした。Windows UpdateとOffice 2016の更新だけで、ネットワーク使用量の98%を占めています。「WINWORD.EXE」は、Office 2016の更新を開始するために起動したものです。「ストア」は、おそらくビルトインのストアアプリの更新確認でしょう。「電子メールアカウント」は、Microsoftアカウントの確認か何かだと思います。
なお、Windows 10 Creators Update向けの2017年7月の累積更新プログラム「KB4025342(ビルド15063.483)」の「Microsoft Updateカタログ」からの手動ダウンロードサイズは、x86システム用が443.8MB(差分更新プログラムは308.9MB)、x64システム用が784.1MB(差分更新プログラムは596.1MB)でした。2017年7月は「Adobe Flashの更新プログラム」(x86は10.1MB)もありましたので、画面4の「システム」の使用状況とWindows Updateのダウンロードサイズに大きな差はないことが分かります。
4台のPCの過去1カ月のネットワーク使用状況をまとめてグラフ化してみました。大きなイメージのダウンロードやアップロードを繰り返しているメインのデスクトップPCは別として、ほとんどのユーザーのWindows 10のネットワーク使用状況は「システム」が大部分を占めているのではないかと想像します。使用頻度が低いPCほど、WindowsやOfficeの更新が占める割合が目立つようになります(グラフ1)。
さらに使用頻度が低い、めったに電源がオンにされないようなPCで、稼働時間も短時間だという場合は、ダウンロードが完了せずに失敗を繰り返し、適切に更新されない状態が続く可能性があることが心配です。
インターネット接続環境がモバイルブロードバンド回線だけの、PCに詳しくないユーザーのWindows 10がどうなっているのかも心配になります。そんなにPCを利用していないのに、Windows Updateのダウンロードが原因で、帯域幅の使用制限がかけられたりしていないでしょうか。Windows Updateが失敗を繰り返していて、脆弱(ぜいじゃく)性が放置されていたりしないでしょうか。Windows Updateは、毎月の品質更新(セキュリティ更新を含む累積更新プログラムやAdobe Flashの更新は第二火曜日の翌日の1回が基本、それ以外の更新も別のタイミングで1回以上配布される場合あり)だけではありません。年に2回(3月ごろと9月ごろ)の機能更新という、1回のダウンロードで数GBにもなるWindowsのバージョンアップが控えています。皆さんがきちんと更新できているのか、本当に心配です。
「使用状況の詳細」の「システム」には、Windows Updateの更新のダウンロードは含まれますが、イコールではないようです。Windows 10の次の機能更新バージョンである「Windows 10 Fall Creators Update(バージョン1709)」では、更新プログラムのダウンロードの動作および状況について、さらに詳細な機能が追加されることになるようです。
Windows 10 Insider Preview ビルド16237.1001(筆者が確認した限りこのビルドから)から、Windows Updateの「配信の最適化」機能にダウンロードとアップロードの帯域幅を制限する機能と、「アクティビティモニター」というダウンロードとアップロードの統計情報をレポートする機能が追加されました(画面5)。
開発中のビルドであるため、これらの機能の変更や廃止があるかもしれませんが(少なくとも「背景」は「バックグラウンド」の間違いですね)、Windows Updateでネットワークが占有されてしまう状況を簡単に回避でき(現行バージョンでは「インテリジェンス転送サービス(BITS)」の帯域幅制限のポリシー設定で制御可能)、ネットワーク使用量も今以上に明確になる予定です。
Windows Updateのダウンロードサイズは明確になりますが、それを確認する場所がどこにあるのか非常に分かりにくいです。Insider Previewでこれらの機能にアクセスするには、Windows 10 Insider Preview ビルド16237.1001以降で「設定」アプリの「更新とセキュリティ」→「Windows Update」→「詳細オプション」→「配信の最適化」→「詳細オプション」と、「更新とセキュリティ」→「Windows Update」→「詳細オプション」→「配信の最適化」→「アクティビティモニター」を開きます。
なお、この機能は追加されたばかりであり、ビルド16237.1001以降のダウンロードサイズが示されるため、以前のビルドから使用しているPCでは「使用状況の詳細」の「システム」の過去30日のサイズとは懸け離れた値になります。
ちなみに、マイクロソフトからのダウンロードはx64版のビルド16237.1001時点で1.6GB、ビルド16241.1001に更新後はプラス1.5GB増の3.1GBで、「使用状況の詳細」の「システム」は同時期に1.64GB増(8.3−6.66GB)でした。やっぱり、「使用状況の詳細」の「システム」は、Windows Updateのダウンロードサイズが大部分を占めていることが分かります。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。
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