Windows 10の導入、それはWindows as a Serviceの始まり企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(2)(1/4 ページ)

本連載では、これからWindows 10への移行を本格的に進めようとしている企業/IT管理者向けに、移行計画、展開、管理、企業向けの注目の機能について解説していきます。今回は、「サービスとしてのWindows(Windows as a Service:WaaS)」の理解を深めましょう。

» 2017年07月27日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
「企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内」のインデックス

連載目次

サービスとしてのWindows、WaaSとは何か?

 Windows 10は「サービスとしてのWindows(Windows as a Service:WaaS)」という概念に基づいて提供されます。WaaSは、新しいバージョンの開発とリリース、その展開、そして更新の提供の新しい方法です。WaaSにより、Windows 10にはセキュリティ更新や不具合の修正を含む「品質更新プログラム」と、新機能を含む「機能更新プログラム」(旧称、機能アップグレード)が継続的に提供され、常に最新のWindows 10環境が維持されます。

 以前は、OSの購入(またはOSプリインストールPCの購入)、更新プログラムの提供、新バージョンのOSの購入とアップグレード(またはプリインストールPCのリプレース)、更新プログラムの提供……というサイクルで、Windowsのアップグレードが行われてきました。

 企業では、新しいOSへの移行のためにアップグレードを計画し、購入、展開というプロセスに多大なコストを費やしていたはずです。コスト削減やアプリケーションの互換性問題のために移行が先送りされ、OSのサポートライフサイクルの期限が迫る、あるいは期限切れになってしまうという問題が、Windowsのサポート期限が来るたびに話題になります。2017年5月に世界的な騒動を引き起こしたランサムウェア「WannaCry」の問題は、サポート期限やセキュリティ更新の重要性をあらためて強調する事件でした。

 Windows 10を導入すれば、WaaSに基づいて、通常の更新プログラム(品質更新プログラム)に加え、Windows 10の新しいバージョン(新しいビルド)が機能更新プログラムとして継続的に提供され、理論上はハードウェアの寿命が尽きるまで最新のWindows 10を使い続けることができます。そして、適切にWindows 10が更新されていれば、ハードウェアが利用できなくなる前にサポート期限が切れることはありません。実際には、Windows 10における特定のハードウェア(特定のプロセッサモデルなど)のサポートが打ち切られ、事実上、利用できなくなる可能性もあります。

 なお、Windows 10 Enterpriseは、ボリュームライセンスの「Windows 10 Enterprise E3(旧称、Windowsデスクトップオペレーティングシステム用ソフトウェアアシュアランス、Windows Enterprise with SA)」や「Windows 10 Enterprise E5」サブスクリプションで提供される“非永続ライセンス”であるため、ボリュームライセンスの有効期限が切れないように、契約を更新する必要があります。

 あるいは、有効期間内で最新の(または有効な)バージョンのWindows 10 Enterprise LTSB(現時点では、Windows 10 Enterprise 2015 LTSBやWindows 10 Enterprise 2016 LTSBがある)に移行し、そのバージョンのWindows 10 Enterprise LTSBを永続ライセンスとして使用し続けることもできます。Windows 10 Enterprise LTSBには、以前のバージョンのWindowsと同様の、最低10年(メインストリーム5年+延長サポート5年)の長期サポートが提供されます。

 Windows 10の導入により、OSのサポート期限について心配する必要がなくなる一方で、アップグレードの機会は増え、継続的に行っていく必要が出てきます。OSのアップグレードは、以前は簡単に行えるようなものではなく、計画的かつ慎重に実施すべきプロジェクトでした。

 Windows 10では、WaaSがスムーズに進むように、以前のバージョンのWindowsと比べて展開が簡素化されています。例えば、「Windows Update」や「Windows Server Update Services(WSUS)」の更新プロセスの一部として、個人設定やデータ、アプリケーションを引き継いだまま、Windows 10では機能更新プログラムと呼ばれる新しいバージョンにアップグレードすることができます(画面1)。

画面1 画面1 OS展開に対応したソフトウェア配布システムを導入しなくても、Windows UpdateやWSUSを通じて、Windows 10の新バージョンを配布し、自動化されたアップグレードを実施できる

 しかしながら、企業のIT部門がハードウェアやアプリケーションの互換性問題に対応しなくてもよくなるわけではありません。最低10年の長期サポートが受けられるLTSBは、1つの解決策になるかもしれませんが、LTSBの採用は単に従来の方式をそのまま続けるというだけです。前回説明したように、LTSBは汎用的なビジネス用途には向いていないのです。

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