「箱根銀行」のトラブルの調査に乗り出したITコンサルタントの白瀬。「与信管理システム」はALMが接続不良、1年前にも「ネットバンキングシステム」導入に失敗。どうして箱根銀行はシステム導入に失敗し続けるのか――いぶかる白瀬が開発会社「ゴールウェイテクノロジー」で耳にした言葉とは?
仮想ストーリーを通じて実際にあった事件・事故のポイントを分かりやすく説く『システムを「外注」するときに読む本』(細川義洋著、ダイヤモンド社)。連載「コンサルは見た! 与信管理システム構築に潜む黒い野望」は、本書制作時に諸般の事由から掲載を見送った「幻の原稿」を、@IT編集部が奇跡的に発掘し、著者と出版社の了承を得て独占掲載するものです。
ITコンサルタントの白瀬智裕は、自社が担当する「箱根銀行」のトラブル調査に乗り出した。
「与信管理システム」はALMが接続不良、異常系は手つかずのまま。1年前にも「ネットバンキングシステム」導入に失敗。どうして箱根銀行はシステム導入に失敗し続けるのか……。いぶかる白瀬にメンターの江里口美咲は、「不自然なことの裏には、下手くそなシナリオライターがいる」とつぶやく。
数日後、白瀬は箱根銀行の別府システム部長から、与信管理システムから開発会社「ゴールウェイテクノロジー」が手を引くこと、既払い金1億円の半額、「5000万円」を返金してもらうことになったと聞かされる。プロジェクトの存続を心配する白瀬に対する別府部長の答えは、意外にあっさりしたものだった。
「そこは、何とかなるかと思います。実は、『与信管理システム』の接続先である『ALMシステム(※)』を作った『大江戸ソリューション』に尋ねたところ、『3、4人なら技術者を出せる』と言ってもらえて」
「ゴールウェイテクノロジー」撤退後のプロジェクトの存続を心配する白瀬智裕に、「箱根銀行」の別府部長は「心配する必要はない」とでも言いたげに説明した。
「大江戸ソリューションは、ゴールウェイと違って業務知識の心配はありません。何せ古くから箱根銀行の情報系システムをたくさん作ってますし、ALMシステムはもともと与信管理も含めた会計の知識がないとできませんから」
「そうですか。それなら安心ですね。ところで一つお願いがあるのですが、撤退前にゴールウェイの有馬社長と会ってきてもいいですか?」
「有馬さんと? 分かりました。一報入れておきましょう」
幾つかの「違和感」の答えを有馬社長は持っている――白瀬はそんな気がしていた。
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