「中古PC活用」の番外編として、Raspberry Pi向けOS「PIXEL」をx86対応にした「PIXEL for PC and Mac」を取り上げる。少ないリソースで実行できるのが特徴だ。Windows XP世代のモバイルPCでも実用レベルで実行することができた。
移行に際して不要となってしまった中古PCに、Windows OS以外のOSをインストールして活用する企画「中古PC活用」では、「Chromium OS」「Remix OS」「Zorin OS(デスクトップLinux)」を取り上げてきた。
前回の「中古PC活用:Windows PCにLinuxをインストールして再利用する」では、中古PCにWindowsユーザーでも比較的使いやすいと思われるデスクトップLinux「Zorin OS」をインストールして利用する方法を提案した。今回は、その番外編として、Linuxベースであるものの、少々変わったOS「Raspberry Pi OS(PIXEL)」を取り上げる。
Raspberry Piは、最近ではIoTを構築するための手軽なプラットフォームといった使われ方をしているが、もともとはARMプロセッサを使った安価な教育用コンピュータとして開発されたものだ。Raspberry Pi上で動作するOS(PIXEL)も、Linuxをベースに少ないリソースでも快適に動作するように設計されている(Raspberry Piについては、「Tech Basics/Catalog:小型ボードコンピュータ」参照のこと)。
今回取り上げる「PIXEL for PC and Mac(以下、PIXEL)」は、そのRaspberry Pi用PIXELを、Debianをベースにして作り直されたものだ。Raspberry Pi財団のBlogページによれば、ThinkPad X40(2004年発売、1.4GHzのPentium M搭載)の512MBメモリでも動作したということだ。
PIXELには、WebブラウザとしてGoogle Chromeのオープンソース版「Chromium」やオープンソースのOfficeスイーツ「LibreOffice」、テキストエディタなども標準で実装されているので、古いPCでもPIXELを使うことで、「使えるPC」として復活させられる可能性がある(名前の通り、Intel製プロセッサ搭載のMacにも対応している)。
ただ現時点のPIXELはデスクトップLinuxに比べ、インストール後の日本語化などの設定に少々面倒なところがある。そこで、ここではPIXELのインストールから日本語化、Mozc(Google日本語入力システムのオープンソース版)のインストールなどを紹介する。
最初に、PIXELのインストールイメージ(ISOファイル)をダウンロードし、インストールUSBメモリを作成しよう。以下のURLをWebブラウザで開き、[Download ISO]ボタンをクリックして、2017-06-22-rpd-x86-jessie.iso(原稿執筆時点のバージョン。サイズ2GB)をダウンロードする。
この際、「PIXEL Raspberry pi」などの検索キーワードでインターネット検索を行うと、Blogページがヒットし、古いバージョンをダウンロードしてしまうことになるので注意したい。
ダウンロードしたISOイメージは、ISOイメージからブート可能なUSBメモリを作成するツール「Etcher(エチャー)」などを使ってUSBメモリに書き込む。この際ツールによっては、設定変更などが記録できないことがある(詳細は後述)。「中古PC活用:Windows PCにLinuxをインストールして再利用する」で利用した「Rufus(ルーファス)」は、設定変更が記録できなかった。
ここではEtcherを利用してインストールUSBメモリを作成する。以下のURLをWebブラウザで開き、Etcherをダウンロードする(実行しているプラットフォームによってダウンロードするインストーラーが自動的に選択される)。
ダウンロードしたインストーラーを実行し、Etcherをインストールする。
PCにUSBメモリを差し、Etcherを実行する。USBメモリは4GB以上の容量のものが必要となる(設定をUSBメモリ上に保存するのであれば8GB以上が望ましい)。
Etcherの[Select image]ボタンをクリックし、ダウンロードしたPIXELのISOファイル(2017-06-22-rpd-x86-jessie.iso)を選択、[Flash!]ボタンをクリックすると、USBメモリにPIXELのインストールイメージが書き込まれる。
これで、PIXELのインストールイメージがUSBメモリ上に作成されたので、これを実行したいPCに差して、USBメモリから起動できるように設定した上で、電源を入れる(BIOSでブートデバイスを変更するか、[F10]キーなどを押してUSBメモリブートを選択する。このあたりは機種依存なので、詳細は省略する)。
USBメモリから起動すると、以下のような実行方法/インストール方法の選択画面が表示される。
それぞれ以下のような意味を持つ。「Run with persistence」「Run and reset persistence」「Run without persistence」は、いずれもいわゆるLive CDモードで起動させるものである。DVDやUSBメモリとPCのメモリ上でのみ動作するもので、ディスクにインストールせずに利用できる。
インストール方法/実行方法 | 内容 |
---|---|
Run with persistence | Live CDで実行。ただし、USBメモリ上に設定変更などを記録可能 |
Run and reset persistence | Live CDで実行。ただし、USBメモリ上の設定をいったんリセットした上で設定変更などを記録可能 |
Run without persistence | Live CDで実行。設定変更などの記録は不可 |
Install | ディスクにインストール |
Graphical Install | GUIを使ってディスクにインストール |
Advanced option | インストールの詳細設定などが可能 |
PIXELの実行方法/インストール方法 |
「Run with persistence」と「Run and reset persistence」は、Live CDながら、USBメモリ上に設定変更を記録する領域を作成し、そこに設定変更の内容が維持される(「Run and reset persistence」は、いったん設定内容をクリアして、新規記録するモード)。
「Install」と「Graphical Install」は、PIXELをディスクにインストールするモードだ。「Install」はキャラクタベースの画面で、「Graphical Install」はグラフィカルな画面で、それぞれインストール作業を行う。どちらも選択項目などは同じだ。
「Advanced option」では、さらに複数のインストール方法が選択できるようになっている。インストール時に細かな設定が可能なものなどもあるが、現バージョンでは反映されない項目も多いようなので、むしろシンプルな「Install」を選択し、後から設定を行った方がよいだろう。
そこで、ここでは「Run with persistence」と「Install」の2種類のインストール(実行)方法を紹介する。
「Run with persistence」を選択すると、何の設定も不要で、PIXELのデスクトップ画面が表示される。後は、後述の日本語化などを行えば、その設定はUSBメモリ上に記録され、再起動後(その際、「Run with persistence」を選択すること)も前回設定した内容が維持される。
「Run with persistence」で設定内容を記録するには、USBメモリに容量の余裕が必要だ。またRufusを使ってUSBメモリを作成した場合、なぜかUSBメモリへ設定内容が書き込めなかった(Etcherを使えば、設定内容が保存できる)。
動作を確認する意味でも、ディスクにインストールする前に「Run with persistence」を実行しておくとよい。
ただ、USBメモリへのアクセスがあるため、システムのアップデートやアプリケーションのインストールに時間がかかる(USB 3.0対応のUSBメモリなどを使えば、意外と快適に利用できるかもしれない)。
次ページでは、PIXELをディスクにインストールする手順を紹介する。
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