トラブルの原因は何だったのか、どうすれば良かったのか。実在する開発会社がリアルに体験した開発失敗事例を基に、より良いプロジェクトの進め方を山本一郎氏が探る本連載。今回は、ユーザーの体制変化が招いた失敗談を紹介します。
「開発残酷物語」は、システム開発会社比較検索サービス「発注ナビ」ユーザーのシステム開発会社の方々に過去の失敗事例をお話しいただき、契約で押さえるべきポイントやプロジェクト運営の勘所を読者諸氏と共有し、これから経験するトラブルを未然に防ぐことを目的としている。
聞き手は、山本一郎氏。今回、失敗談をお話しいただいたのは、「キューキエンジニアリング」企画グループ長の山村圭氏だ。
同社は、電力量計などを製造している九州電機製造(現:九電テクノシステムズ)のソフトウェア子会社として1986年に設立し、当初は電力向けの制御システムなどの開発を行っていた。
その後、親会社からの受注減少に伴い、プログラマー派遣業に業態を変え、さらに、九州電力輸送部門ITシステム開発プロジェクトへの参画を機に、IT化コンサルティング、システム運用保守に軸足を移した。
2007年からは中堅中小企業向けプロジェクト原価管理型ERPシステム「DENSOL」を自社開発し、SaaS形式で提供もしている。
キューキエンジニアリングが経験した失敗事例は、中堅企業での基幹システム再構築の事例だという。
この会社では、人事、労務、勤怠、購買などの、いわゆる基幹システムが老朽化し、新制度に対応できなくなったことや、高額な運用保守費の削減、業務改革の実施と新規事業への対応などで、システムを再構築することになった。
キューキエンジニアリングの自社製パッケージシステムと、クラウドの活用、特殊な業務に向けたカスタマイズでの提案が採用され、開発がスタートした。
ところが開発がスタートするや否や、経営者が交代。次に、ユーザー側プロジェクト責任者だった担当者の異動もあったという。
「あぁ……」何かを察し、残念そうな表情を浮かべる山本氏。
そもそもこのプロジェクトは、前経営者の社内システムへの危機感が出発点だった。前任の担当者がその意向をくみ推進してきたが、キーパーソンがそろっていなくなってしまったとたんに、プロジェクトは迷走し始めたという。
経営層と現場の意識のギャップをどう埋めていくかは、ユーザーにとっても、ベンダーにとっても頭の痛い問題だ。
「現行と違うから現場に説明できない、現行システムを作り直したくない、テストが面倒など、不満が続出し、結果プロジェクトは頓挫してしまいました」(山村氏)
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