おかしいと思うのは、「このアプリでは次のことが行えます」というところです(画面3)。
以下の2つが表示されていますが、実は、これらはこのアプリが使用するケーパビリティのことです。「詳細の表示」をクリックすると、さらに「Webカメラを使用する」「ピクチャライブラリを使用する」などが表示されます。
アプリが使用するケーパビリティは、ストアアプリのパッケージに含まれる「マニフェスト(AppxManifest.xml)」で宣言されています。例えば、以下のような感じです。
<Capabilities> <Capability Name="internetClient"/> <Capability Name="privateNetworkClientServer"/> ... </Capabilities>
ただし、これは実例ではありません。実際のマニフェストと比べると、ストアのケーパビリティの表示は、マニフェストに定義されているものを正確に反映しているわけではないようです(このゲームの場合、internetClientだけでした)。
「このアプリでは次のことが行えます」の下に「アクセス許可の情報」のリンクがあります。このリンクをクリックすると、これがアクセス許可であると説明されますが、「このアプリでは次のことが行えます」と「アクセス許可の情報」が同じことを言っていると認識するユーザーは少ないでしょう。
このアプリを取得するということは「このアクセス許可を行うことに同意したことになるんだ」と思うのですが(後で「プライバシー」設定で制御可能な部分もありますが)、そういう意識を持つ人はまずいないと思います。
日本語の翻訳ミスというのは、よくあることです。そこで、英語環境のWindows 10で同じ場所を確認してみました(画面4)。すると、シンプルに「This app can」となっていました。日本語と同じく、この表現も誤解を与えそうです。
少し時代をさかのぼってみましょう。Windows 10の初期ストアでは「このアプリは次の操作を実行する権限を持っています」と表示されていました(画面5)。英語環境では「This app has permission to do the following」です。どちらも小難しい表現ですが、間違った表現ではない気がします。
さらにさかのぼって、Windows 8.1のストアではどうだったでしょうか。「このアプリが使用する項目」と表示されていました(画面6)。英語環境では「This app has permission to use」でしたので、少し表現が和らげられているように感じます。
ただし、実際にアプリを使用するときには、アプリごとの「アクセス許可」の設定で確認、制御できるという点が、制御する場所が「プライバシー」設定に一本化されたWindows 10とは違って分かりやすいところです。
これまでの中では、Windows 10の初期ストアの表示が最も正しい表現だと思います。どのような経緯で「このアプリでは次のことが行えます(This app can)」になってしまったのでしょうか。
考えられるのは、ストアのWeb開発者がストアアプリに関して技術的に詳しくなく、良かれと思って表現をシンプルにしていった結果なのかもしれません。あるいは、意図的なのかもしれません。もし、プライバシーに関することは説明するのが面倒なので、適当に濁しておこうなんて考えだったとしたら、問題です。
ちなみに、Google Playは「アクセス許可/詳細表示(Permissions/View details)」とシンプルです。Windows 10のストアも「このアプリでは次のことが行えます」のところを、単に「アクセス許可」にすれば、全て解決するような気がします。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。
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