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» 2017年12月12日 05時00分 公開

微細化の限界は超えられる?――IoT時代の主役「Arm」のCEOが考えるテクノロジーの未来Go AbekawaのGo Global!〜Simon Segars編(3/3 ページ)

[取材・文:阿部川久広(Go Abekawa),@IT]
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ワクワクできるものを探しに行こう!

阿部川 2013年にCEOに就任されてから4年。ArmのCEOとして1番大切な仕事は何ですか?

サイモン氏 「1日24時間をどのように使うか」ではないでしょうか。今何をするのが会社にとって最も重要なのかを考えて選択し、どのくらいの時間を費やすかを決めます。そして最後に全ての権限を移譲することです。何をやるかよりも、何をやらないかを決めることの方が難しいのです。権限を移譲して社員にどうしたらより多くの力を与えられるかを学ぶこと、社員全員の専門能力を持ち寄って、より高い力を発揮することを毎日考えています。

阿部川 日本のエンジニアは大変優秀ですが、特に英語によるコミュニケーションが問題であり、現在悩みを抱えている人が少なくありません。世界で戦い、活躍するために、今後日本のエンジニアはどのようなことを意識すれば良いでしょうか?

サイモン氏 当然のことですが、CEOでもビジネスリーダーでも、エンジニアでも、技術に関する深い理解が1番大切です。そのためには、今業界でどのようなことが起こっているのか、1番話題になっている技術は何かなど、最新の情報を収集するのをやめないことです。

 1993年に初めて日本を訪れたとき、私はまだ20代の半ばでした。そこから現在まで本当に多くの人々と出会えたことが、今の私に確実につながっています。全てのビジネスはグローバルな規模へと広がっています。会社から世界に出て、さまざまな人に出会うべきです。世界のどこかに、あなたがまだ知らない、しかしきっとあなたをワクワクさせるものが必ずあるはずです。それを探しに行くべきですし、そのためにも多くの人々の話をよく聞くことが大切です。

シンギュラリティ時代に責任を負うべきなのは?

阿部川 Singularity(シンギュラリティ=技術的特異点)のことが話題になっています。10年か20年という近い未来に、人類は今まで経験したことがないようなテクノロジーの世界に直面します。あるいは定義や用途は別にして、IoTがIT業界のキーワードになっています。ArmのCEOとしてはどのような未来を思い描いていらっしゃいますか?

サイモン氏 私たちが関わっているマイクロプロセッサは、どの製品の中にも見られるようになると思います。特にシンギュラリティといわれる時代には、膨大なデータを扱うデータセンター規模のものから、個人が使う手のひらサイズのデバイスまで最適なプラットフォームを提供するのがArmの役割です。そのような役割をぜひ担いたいと思いますし、ただ実行するだけではなく、安全でしかも安心できる環境で行えるようにすることが大切だと思います。

 私たちは個人情報のハンドリングについて常に最大の注意を払っています。現代は、個人情報などのデータやそれを捉えるためのセンサーやカメラが至る所に張り巡らされているような時代です。私たちはデータの取り扱いについて、常に注意や気配りを忘れてはいけないと思います。「情報の機密性」への対応に終わりはないと考え、より良い解決策の研究を常に続けています。それが最終的に世界中の多くの人々に利便性を提供することになると考えています。

阿部川 日本とドイツは、特に個人情報の保護に関する観点をとても重要視していますから、サイモンさんからじかに情報の安全性、機密性について伺えて大変うれしく思います。情報の発達はリスクも伴いますからね。

サイモン氏 私たちのようなテクノロジーの会社こそが、未来のITに関して大きな責任を負うべきだと思っています。データに関しても、安全でしかも安心して取り扱うことができるようにすることが大切です。特にシンギュラリティの時代になれば、良い面ばかりではなく悪い面やリスクにも目を背けずに対峙していくことが求められるでしょう。世界を進歩させるためにテクノロジーが必要不可欠だと信じています。

Go's think aloud 〜インタビューを終えて〜

 すらっとした英国紳士であることは、幾多の写真や報道から知っていた。身長175センチの私より優に15センチ以上は大きい。

 Armの名は、Newtonの発表に携わったときから見聞きしていたが、ここまで世界をリードするマイクロプロセッサの企業になるとは正直思っていなかった。CEOにお会いし、お話をしているうちに、この企業はこれからも成長し続けるだろうと思った。なぜか。

 人の話を本当にじっくり聞いてくれるのだ。ときにはうなずきながら、ときには眉を少し寄せながら、しっかり私の目を見て「一言一句聞き逃すまい」と私の話に耳を傾けてくれる。ともすれば、一方的に「あれもできた、これも私だ」と強く吹聴する傾向がIT業界だけではなく、一部のリーダーにはみられる。サイモンさんはその対極だ。

 そして最後にはITのリスクの話。「あれもできる、これもできる」という夢物語だけではなく、現実にはそれらとトレードオフされるリスクも数多く存在する。その認識を忘れずに付け加えてくれたとき、「経営者の社会的責任」という、古くとも新しい、企業の果たすべき重要な役割を思い出した。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア グローバルビジネス担当シニアヴァイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサー、ライター、リポーター

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳なども行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在は英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家として執筆、翻訳も行っている。

編集部から

「Go Global!」では、インタビューを受けてくださる方を募集しています。海外に本社を持つ法人のCEOやCTOなどマネジメントの方が来日される際は、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。

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