グローバルを股に掛けたキャリアを築いてきたIT業界の先輩にお話を伺うシリーズ。今回はサン・マイクロシステムズ社共同創立者のScott McNealy氏に、同社創立時の思い出、そして現在取り組んでいること、エンジニアへの思いなどを伺った。※マクネリー氏のメッセージ動画付き
アップルやディズニーなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広が、グローバルを股に掛けたキャリアを築いてきたIT業界の先輩にお話を伺うインタビューシリーズ。第7回はScott McNealy(スコット・マクネリー)氏にお話を伺った。
サン・マイクロシステムズ(以下、サン)の経営者としてIT業界を牽引(けんいん)し、「Network is the computer」などの名言でエンジニアたちを鼓舞してきたマクネリー氏が現在取り組んでいること、そして氏が考える今後エンジニアに必要な能力とは何か。
Scott McNealy(スコット・マクネリー:以降、マクネリー氏) 私はアジアが大好きで、年に1回はアジアパシフィク地域を訪れています。アジア市場は大きく成長していますし、新しい技術やトレンドも生まれています。日本にはたくさんの友人がいますし、「Wayin」が順調に成長していますので、日本に来るのはいつも楽しみです。
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) Wayinとはどのようなサービスですか?
マクネリー氏 例えば、私が「自分は素晴らしいCEOだ」と言っても誰も信じないですよね?
阿部川 信じるも信じないも、実際そうですよね(笑)。
マクネリー氏 信じてもらえるとは思いますが(笑)。もしかしたら、私は自分でそう言っているだけの人かもしれない。しかし50万人がTwitterで、同様のことをツイートしたらどうでしょうか。
Wayinは、ソーシャルメディア上の全ての会話や情報を集め、タグでインデックス付けします。そこからクラウドノイズ(※)を取り除き、それらに対して、リターゲティングや情報の伝達を行います。
阿部川 膨大なデータがやりとりされますね。
マクネリー氏 今現在、米国だけで1日に2億個以上のイメージデータがやりとりされているという試算を見たことがあります。5億や10億だという人もいます。現在は、ビッグデータやクラウドの時代ですから、それらの組み合わせを解明することは、社会学的な側面と、科学的な側面があります。
阿部川 スコットさんの大学での専攻は経済学でしたね。
マクネリー氏 ハーバードでゴルフを専攻し、副専攻で経済学を履修しました(笑)。
私は社会科学的な側面には非常に興味があります。人々を揺り動かすものは何なのか、人々の思考や行動を確実に促すものは何なのか、それらを科学的に解明できれば素晴らしいと思います。
ビッグデータの時代に移行し、大半の企業が、自分たちでは手に負えないくらいのデータを収集しています。全てのデジタルデータがネットワークでつながっていて、その規模たるや本当に膨大な量です。
最近は多くの企業から、時計やリストバンドが発売されています。これを装着すれば、体温、心拍、呼吸、血圧、血糖値などが24時間365日データ化されてネットワーク上を行き来します。
自動車の自動運転も、金融の取り引きも全てデータ化されています。どこにいってもカメラやマイクやスピーカーからデータが取集され、全てのデータが分析されています。
いまはデータが全てなのです。
単なるデータを知識や知恵にまで高められれば、積極的に戦略を構築し、実行できるでしょう。
阿部川 データの背景や、そこにあるストーリーを読み取らないといけないということですね。スコットさんは近年、「データサイエンティスト」についても、頻繁に発言されていますが。
マクネリー氏 現在、どこの大学にも「ビッグデータサイエンス」という学問はありません。そこで、スタンフォードにいる息子と共同して、カリキュラムを作っています。データを分析して、そこから何かを導き出す方法論を、コンピュータサイエンス、統計学、経済学、政治科学、数学などと融合して、学位にまで高めようと考えています。
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