国会で紛糾している裁量労働制。果たして、働き方改革はエンジニアを幸せにするのでしょうか。
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裁量労働者の方が、一般労働者より労働時間が短い――この話を初めて耳にしたとき、私は思わず「そんなバカな……」とつぶやいてしまいました。
今国会の最重要法案と位置付けられている「働き方改革」法案。裁量労働制に関する議論が紛糾しています。何でも、裁量労働制の対象を広げるために用いたデータにおかしなところがあったといいます。
ちなみに、裁量労働制とは、実際の労働時間が何時間なのかに関係なく、労働者と使用者の間で「これだけ働きますよ」と決めて、お金を受け取る仕組みです。労働時間の管理は企業ではなく、労働者に委ねるのが特徴です。
裁量労働制が適用できるのは19業務に限られています。厚生労働省の「専門業務型裁量労働制」によると、新技術を開発する研究者や、新聞社などメディアの仕事をしている人、デザイナー、映画や番組を制作するプロデューサーやディレクター、コピーライター、インテリアコーディネーター、証券アナリスト、公認会計士、弁護士、弁理士、税理士、中小企業診断士などの仕事です。
この中には、情報システムの設計や、システムコンサルタント、ゲーム用ソフトウェアの創作など、エンジニアの仕事も含まれています。
もし労働時間が「裁量労働者<一般労働者」だったら、そもそも裁量労働制という仕組みはそれほど必要ないのではないかと思います。
なぜなら、裁量労働者の仕事の成果が、一般労働者の労働時間以内でコントロールできるなら、一般労働者の枠の中でも仕事ができるはずだからです。一般労働者の枠ではできない仕事がある。そのために、裁量労働制があると思うのです。
私は、働く時間や働き方を自分で決めている裁量労働者です。例えば、この記事のような「文章を書く」仕事は、裁量労働の極みです。1本の原稿を仕上げるのに、1〜2時間で書けるときもあれば、1日悩んでも書けないときもある……。
このような、仕事の成果が時間では測りにくく、業務の進め方を標準化しにくい仕事は確かにあります。「成果物はありません。でも、悩んでいた分のお金はください」とは、プロとしてはなかなか言えません。
「これだけの時間がかかる」とはっきりとはいえない。けれども、ものをゼロから作る必要がある。時間は自分でコントロールするから、その中ででき得る限りの成果を出したい。納得できる仕事がしたい。このような仕事をする人のために、裁量労働制があると思うのです。
エンジニアもそうですよね。ユーザーのニーズを把握したり、新しい技術を使ったシステムを設計したりするためには、時に、仕事の成果を時間だけでは測りにくい仕事です。ユーザーの業務分析にかかる時間? そんなの、正確には分かんないですよね。
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