企業が「アナリティクス・ライフサイクル」を確立するためのツールとして、SASが提供しているのが「SAS Viya」と呼ばれるプラットフォームだ。SAS Viyaでは統一されたGUI環境から、先ほど挙げたライフサイクルの全プロセスを、実行および管理できる。
「SAS Viyaでは、ビジネスユーザーやビジネスアナリスト、データサイエンティスト、デベロッパーなど、さまざまな役割とスキルレベルを持つ人が、自分に合ったユーザーインタフェースを使い、同一のプラットフォーム上でアナリティクス・ライフサイクルを展開できる」(畝見氏)
例えば、ビジネスアナリスト(業務部門でデータ分析を行うユーザー)は、基本的にSAS Viyaに用意されたGUIツールを使ってデータの準備や分析を行い、データサイエンティストは、GUI環境やSAS言語に加えて、Python、R、Java、Luaといった言語の中から自分が慣れ親しんだものを使って独自の処理を加え、そのコードをViya上にホスティングし、共有するといったことも行える。
データの分析やモデル作成といったアナリティクスは、SASの最も得意とする領域だ。SAS Viyaでは、あらかじめ用意されたモデルテンプレートを使って視覚的に分析のプロセスを作成できる。このテンプレートのコードはオープンになっているため、必要に応じて独自にカスタマイズすることも可能だ。
また、SAS Viyaは、ディープラーニングの活用に当たって「モデルによる判断の根拠を可視化できる」機能が用意されている点が特長だという。一般に、ディープラーニングによる判断のロジックは“ブラックボックス”であり、なぜそのような結果になったのかの原因究明は難しいとされる。
SAS Viyaでは、例えば画像認識ならば、判断結果に強く影響を与えた部分をヒートマップとして表示したり、影響の大きな入力変数や、その変数と他の変数との相互作用などを探索したりできる仕組みが用意されている。この機能は「より効率的なモデル改善に活用できる」(畝見氏)という。
作成したモデルは、業務に適用して初めて価値が生まれ、その結果をモニタリングし、改善していくことで価値を高められる。SAS Viyaでは、モデルを“企業の資産”として管理し、改善していくための環境も用意している。予測モデルのバージョン管理、業務プロセスへのデプロイ、実装後の精度モニタリング、必要に応じた再学習の実施といった作業が、他のプロセスと統合されたGUIから実行可能だ。
「こうした、各プロセス間の遷移や連携がスムーズに行える点が、統合プラットフォームであるSAS Viyaの最大の特長。複数ベンダーのプロダクトやOSSの組み合わせでは、ここまでスムーズにはいかない」(畝見氏)
畝見氏は今後、企業におけるデータサイエンティストの役割は、さらに広がっていくと予測する。
「かつてのデータサイエンティストは、データの加工や分析、モデルの精度向上などが主な仕事とされていた。しかしこれからは、ビジネス知識を備え、社内のさまざまな部署を巻き込みながら、プロジェクトマネジャーと連携して『アナリティクス・ライフサイクル』のグランドデザインを描き、ビジネス価値を創出していくことが真価になるだろう。ただ、そこまでが可能なスーパーマンは少ないのも事実。そのときは、SASが提供しているソリューションもぜひ検討してほしい」(畝見氏)
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