Windows 10 Pro Educationは、企業向けのWindows 10 Proをベースに作成された、教育機関向けのエディションです。Windows 10 バージョン1607で初めて登場したときは、Cortanaが既定で無効になっているなど、Proエディションとの明確な違いがありましたが、バージョン1703でCortanaが有効化され、これらの違いが分かりにくくなりました。この2つのエディションの違いを、Windows 10 バージョン1903で徹底比較してみました。
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「Windows 10」のPro Educationエディションは、Windows 10 バージョン1607で初めて登場しました。Enterpriseエディションをベースにした以前からのEducationとは異なり、Pro EducationはWindows 10 Proをベースにしています。
Windows 10 Pro Educationは、OEMベンダーによるプリインストールOSとしてデバイスとともに導入するか、IT担当者が「教育機関向けMicrosoft Store(Microsoft Store for Education)」や「Intune for Education」といった教育機関向けのサービスを利用して、Windows 10 ProをPro Educationに切り替えることで導入できました。
当初、Pro Educationでは「Cortana(コルタナ)」が無効化される(Educationも同様)など、Proとの明確な違いがありましたが、Windows 10 バージョン1703からは有効化(アップグレードの場合を含む、Educationも同様)されるようになりました。Cortana有効化の理由についてはうろ覚えですが、Cortanaの機能強化により、プライバシーの課題が改善したからだったと記憶しています。
Pro Education(およびEducation)は、「教育機関向けのライセンス」であるという最も大きな違いがあります。また、教育機関向けMicrosoft StoreやIntune for Educationサービス、「学校用PCのセットアップ」アプリの提供など、Windows 10のコア機能とは周辺環境も違います。
しかし、Windows 10のコア機能についてはどうでしょうか。筆者がなぜこのような疑問を持つのかというと、EnterpriseとEducationは「SKU(製品単位)」として異なる番号(Enterpriseは4、Educationは121)でしたが、ProとPro Educationは同じSKU番号「48」だったからです(ただし、Windows 10 バージョン1803まで)。つまり、SKU番号だけでは両者を識別できなかったのです。
SKU番号については、以下の連載記事でクライアントOSとサーバOSのそれぞれについて、当時の最新状況に基づいて説明しました。
Windows 10 バージョン1809以降、Pro Educationは個別のSKU番号「164」を持つようになり、ProとPro EducationはSKU番号で識別されるようになりました(画面1)。
SKU番号が異なるということは、Windows 10の機能差があるのかもしれません。実は、最初からSKU番号が異なっていたEnterpriseとEducationには、そのような例が幾つかありました。
例えば、「Windows Defender Application Guard(WDAG)」は、Windows 10 バージョン1709でEnterpriseエディションに初めて搭載されましたが、つい最近までEducationエディションでは利用できませんでした(バージョン1903でようやく利用できるようになりました)。他にも、Enterprise限定機能がEducationの存在を想定しておらず、制限されることもあります。これらに関しては、以下の記事で解説しています。
そこで今回は、Windows 10 バージョン1903のProとPro Educationをそれぞれ新規インストールして、両者の違いを徹底調査してみました。
今回は、「Visual Studioサブスクリプション」提供のWindows 10 バージョン1903のインストールメディアを使用し、両エディションを同一構成の仮想マシン環境に新規インストールしました。ローカルアカウントでセットアップするように選択してインストールを進めましたが、インストールオプションや設定画面に違いは全くありませんでした(エディションの選択場面は除く)。
初回のサインインの後、Proのデスクトップには「Microsoft Edge」のウィンドウが起動し、スタートページの言語選択が求められました。一方、Pro Educationは自動起動するウィンドウのあるアプリはありませんでした(画面2)。
スタート画面のレイアウトは、ProとPro Educationで大きく異なります。Pro Educationには「スクールエッセンシャル」という名前のグループに、「Microsoft Office」アプリ(ローカルにインストールされていないため、クリックするとWeb版のアプリが起動します)とMicrosoft Edgeのアイコンが並べられ、スッキリしています(画面3)。
スタート画面のレイアウトは異なりますが、スタートメニューと「設定」の「アプリ」の一覧を1つずつ比較したところ、プリインストールされているアプリはほぼ同じです。また、どちらにもユーザーごとにサインイン後に「OneDrive」の同期クライアント(C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Local\Microsoft\OneDrive\OneDrive.exe)がセットアップされました(画面3ではPro EducationのOneDriveのセットアップが完了していない)。
Pro Educationで利用可能なWindowsの機能とオプションの機能(「設定」の「アプリ」から有効化できるオンデマンド機能)は、その項目も初期のインストール状態についても、Proと全く同じでした(画面4)。
これは、「Get-WindowsOptionalFeature -Online」コマンドレットの実行結果に違いがないことでも確認しています。Windowsの機能としては、Pro EducationはProそのものであると言っても間違いはなさそうです。
最後に、以下の公式ドキュメントで説明されているEducationおよびPro Education向けの構成の推奨事項、「診断データ(基本)」「Microsoftコンシューマーエクスペリエンス(おすすめのコンテンツの提供を無効)」「Cortana(バージョン1703以降は有効)」「セーフサーチ(高レベルに固定)」「広告なしのBing検索」「アプリ(教育機関向け構成の検出)」について、新規インストール直後の状態を調べてみました。
Windows 10 バージョン1903のPro Educationで筆者が確認できたのは、「Microsoftコンシューマーエクスペリエンス(おすすめのコンテンツの提供を無効)」「Cortana(バージョン1703以降は有効)」「アプリ(教育機関向け構成の検出)」の3つです。
「設定」アプリの「プライバシー」にある「全般」を開くと、Pro Educationでは「設定アプリでおすすめのコンテンツを表示する」が「オフ」になっており、設定を変更できないようにグレーアウトされていました(画面5)。
また、最初に指摘したように、Pro EducationでもCortanaは利用可能であり、既定で有効です。「アプリ(教育機関向け構成の検出)」とは、Pro Educationで実行されるアプリが、教育機関向けの構成であることを検出できるというものです。これは、アプリにこの機能が実装されているかどうかによりますが、「映画&テレビ」アプリで挙動の違いを確認することができました(画面6)。これらの設定は、おそらくEducationエディションの新規インストールでもこうなっていると思われます。
筆者が確認した限り、「設定」アプリの「プライバシー」の「診断&フィードバック」において、Pro Educationで「診断データ」が「基本」に固定化されていることはありませんでした。
また、残る「広告なしのBing検索」については、米国の初等中等教育機関向けの機能であり、Microsoftへの学校ネットワークのIP登録依頼を行うことで利用可能になるもののようです。そのため、新規インストール直後の状態に関係するものではありません。
Pro Educationは、一部の設定が固定化されるものの、機能的にはProと同じです。違いは、このライセンスやプリンストールデバイスを導入した教育機関のそれぞれが、サービスやツール、アプリを利用してカスタマイズしていくことで明瞭になるのでしょう。そこは、教育機関に属するユーザー(学生など)には手が出せない部分です。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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