営業部のEUCだけど、契約だけ情シスでやれってこと?――情シスはつらいよコンサルは見た! 情シスの逆襲(4)(4/4 ページ)

» 2019年10月24日 05時00分 公開
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もうできたの?

 最初の打ち合わせの2週間後に、「スマホ・デ・マルシェ」の開発が始まった。

 フルスクラッチで構築することとし、PCやスマホなど複数のデバイスから利用できるようにレスポンシブWebデザインを採用した。開発方式はアジャイル。2週間のスプリントでイテレーションを回し、徐々にイメージに近いものにしていった。



 「もう、できたんですか?」

 約2カ月後、ルッツの日本人技術者が持ち込んだPCを見て、小塚は目を丸くした。プロジェクトがスタートして以来、久しぶりに進捗(しんちょく)会議に出席した小塚が見た画面には、ラ・マルシェのイメージカラーであるマンダリンオレンジを基調にしたショッピングサイトに、さまざまな商品の写真と紹介が品良く並んでいる。

 全体に文字が大きく、数量選択や購買確定のボタンも見やすい位置にある。各種の設定を行うメニューには簡単な操作説明もあり、Webを見慣れない年配の人でも直感的に操作が分かる。

 「こりゃあ、いい」

 感心しながら画面に見入る小塚に、ルッツの技術者が説明した。

 「こんな感じでいかがでしょうか。これからもいろいろな調整をしないといけませんし、ユーザーがおかしな操作をしたときの、いわゆる異常系の処理なども組み込んでいかないといけないので、まだやることはたくさんありますが、既に裏側のプログラムと申しますか、ビジネスロジックも半分は完成しております」

 「それなら、来年春のオープンは……」

 「まず問題ないと思います」とルッツの技術者は大きくうなずいた。

 「いやあ、すごいですね。オンラインショップってこんなに早くできるんですか?」

 小塚は、同行してきたルッツの本田社長に笑顔を向けた。

 「インターネット上に公開されている部品がたくさんありましてね。そういうのを流用すれば、以前とは比べものにならないスピードで開発できます。ECサイト自体は珍しいものでもありませんし」

 「そういうものですか」

 小塚は感心して何度もうなずいた。やることは残っているとは言うが、ここまでできているなら、完成時期は大幅に短縮できそうだ。

 「ところで……」

 本田がせき払いをした。

つづく




 「コンサルは見た! 情シスの逆襲」第5話は10月31日掲載です。

書籍

システムを「外注」するときに読む本

細川義洋著 ダイヤモンド社 2138円(税込み)

システム開発に潜む地雷を知り尽くした「トラブル解決請負人」が、大小70以上のトラブルプロジェクトを解決に導いた経験を総動員し、失敗の本質と原因を網羅した7つのストーリーから成功のポイントを導き出す。

※「コンサルは見た!」は、本書のWeb限定スピンアウトストーリーです

細川義洋

細川義洋

政府CIO補佐官。ITプロセスコンサルタント。元・東京地方裁判所民事調停委員・IT専門委員、東京高等裁判所IT専門委員

NECソフト(現NECソリューションイノベータ)にて金融機関の勘定系システム開発など多くのITプロジェクトに携わる。その後、日本アイ・ビー・エムにて、システム開発・運用の品質向上を中心に、多くのITベンダーと発注者企業に対するプロセス改善とプロジェクトマネジメントのコンサルティング業務を担当。独立後は、プロセス改善やIT紛争の防止に向けたコンサルティングを行う一方、ITトラブルが法的紛争となった事件の和解調停や裁判の補助を担当する。これまで関わったプロジェクトは70以上。調停委員時代、トラブルを裁判に発展させず解決に導いた確率は9割を超える。システム開発に潜む地雷を知り尽くした「トラブル解決請負人」。2016年より政府CIO補佐官に抜てきされ、政府系機関システムのアドバイザー業務に携わる

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