元請けにつるっと丸投げされた下請け企業。身を守るために自主的に工程を管理していたことがあだとなり――。
システム開発にも大きな影響を及ぼす改正民法の施行が、2020年4月に迫っている。
改正法によれば、請負契約での不具合に対する損害賠償請求の考え方や、システムが未完成のまま契約が解除されたときにベンダーが既作業分を請求できるのか、などの考え方が大きく変わる。
一方で、「当該システム開発は請負か否か」の争いは、今でも多い。請負契約であれば、ベンダーはシステムを9割方作り終わっていても、最後まで完成させない限り、1銭ももらえない危険がある。
準委任や派遣であれば、システムの完成とは関係なく、働いた分の代金は払ってもらえる。
プロジェクトが途中で頓挫してシステムが完成しなかったとき、「請負契約だからお金は払わない」とするユーザー企業と「派遣契約だから働いた分は払ってもらう」と主張するベンダーが法廷の場で争うことは珍しくない。
この「請負か派遣(あるいは準委任)か」問題をどこで区別するのか、裁判所も幾つかの「条件」のようなものを判決の中で述べている。
本連載読者ならすぐに判別がつくと思うが、1がYesなら請負契約であり、2なら準委任か派遣だ。
しかし、請負か派遣(準委任)かの判断材料はこれだけではない。
IT訴訟事例を例に取り、システム開発にまつわるトラブルの予防と対策法を解説する本連載。今回は、裁判所が1つの判断材料を提示した約30年前の判決を見つけたので紹介する。
1と2のいずれもが判然としない開発プロジェクトで、裁判所はどこに着眼したのだろうか。
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