Chromium版「Microsoft Edge」への移行に備えよう企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(66)

2020年1月15日(米国時間)、Chromiumベースになった新しい「Microsoft Edge」が正式にリリースされ、ダウンロード提供が始まりました。Microsoftは今後数カ月かけて、Windows 10標準搭載のMicrosoft Edgeを、この新しいMicrosoft Edgeに置き換えていく計画です。今回は、Windows 10を利用している企業が、この置き換えに備えるポイントをまとめました。

» 2020年01月28日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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「企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内

Chromiumベースの新しいMicrosoft Edgeの一般提供が開始

 「Microsoft Edge」は、「Windows 10」に標準搭載されるユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)アプリ版のWebブラウザとして登場しました。Microsoft Edgeは、Windows 10において“新機能”という位置付けにあり、長期サービスチャネル(LTSC、旧称LTSB)であるWindows 10 Enterprise LTSCや「Windows Server 2016」には搭載されていません。

 Microsoftは2018年12月、Microsoft Edgeが採用している独自エンジン「EdgeHTML」を、Googleがオープンソースプロジェクトとして開発している「Chromium」ベースに置き換える計画を発表し、その後、1年かけて開発を行ってきました。そして2020年1月15日(米国時間)、安定版(Stable)の公式ビルドが完成し、一般向けにダウンロード提供が始まりました。

 一般提供開始時の公式ビルドはバージョン「79.0.309.65」です。Windows 10、「Windows 8.1」、提供開始前日にサポートが終了した「Windows 7」、そしてmacOSで新しいMicrosoft Edgeをダウンロードしてインストールできます。バージョンは異なりますが、iOSおよびAndroid向けのMicrosoft Edgeも、それぞれのストアから入手できます。

 Windows 10に新しいMicrosoft Edgeをインストールすると、従来のMicrosoft Edgeは新しいMicrosoft Edgeに置き換えられ、デスクトップやスタートメニューのショートカット、アイコンが新しいMicrosoft Edgeのものになります(画面1画面2)。

画面1 画面1 Windows 10 バージョン1909以前に標準搭載されているMicrosoft Edge(EdgeHTML)。2020年1月時点の最新バージョンは「44.18362.449.0」
画面2 画面2 Chromiumベースの新しいMicrosoft Edgeは、これまでのMicrosoft Edge(EdgeHTML)を完全に置き換える。2020年1月22日時点の最新バージョンは「79.0.309.71」

 設定や「お気に入り」などは新しいMicrosoft Edgeに引き継がれ、既定のWebブラウザをMicrosoft Edge以外に設定していたとしても、それが新しいMicrosoft Edgeに置き換わることはありませんし、Windows 10が標準搭載しているレガシーのWebブラウザである「Internet Explorer(IE)11」にも影響しません。

 また、リリースと同じ週内にバージョン「79.0.309.68」、翌週に「79.0.309.71」と、リリース直後ということもあり、安定版ながら次々に更新ビルドが公開されています。そのため、先行導入して評価したいという場合でない限り、現時点で急いで導入する必要はないでしょう。

 新しいMicrosoft Edgeは、32bit版および64bit版のWindows 7以降にインストールできます。つまり、新しいMicrosoft EdgeはUWPアプリではなくなります。Windows 7に対応したのは、サポート終了後も最大3年間、セキュリティ更新を受け取ることができる「Windows 7拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)」の購入者に対し、Internet Explorerに代わる、よりセキュアなブラウジング環境を提供するためでしょう(画面3)。

画面3 画面3 新しいMicrosoft Edgeは、2020年1月14日にサポートが終了したWindows 7でも利用可能。恐らくESU購入者の利用を想定したもの

 Windowsの場合は、Windows Server 2016やWindows 10 Enterprise LTSCにもインストールして利用できます。macOSはSierra(10.12)以降に対応しています。詳しくは、以下の公式ドキュメントで確認してください。

Windows 10 Home/Pro向けには今後数カ月かけて自動配布

 Microsoftは、Windows 10 HomeおよびPro(ただし、Active DirectoryやAzure Active Directoryに参加しているデバイスは除く)に対し、今後数カ月かけてWindows Updateの自動更新で新しいMicrosoft Edgeに置き換えていく予定です。

 まずはWindows 10 Insider Programの「Preview Releaseリング」から開始し、その後、数カ月かけて自動更新で配布されることになります。最初のアナウンスにありますが、日本では確定申告への影響を考慮し、自動更新による配布は2020年4月1日以降になるようです。

 以下のアナウンスにあるように、数カ月かけての自動配布による置き換えは、現時点ではWindows 10 Enterprise、Education、Pro for Workstationsは対象外であり、自動的に置き換わることを心配する必要はありません。

 企業では「Microsoft Endpoint Configuration Manager Current Branch(バージョン1910以降)」(※1)や「Microsoft Intune」、その他のソフトウェア管理ツールを使用して、企業内のクライアントに展開することが可能です。

※1 初出時、System Center Configuration Manager(SCCM)と表記していましたが、バージョン1910からMicrosoft Endpoint Configuration Managerに名称変更されました。
Microsoft Endpoint Configuration ManagerのFAQ(Microsoft Docs)



 なお、「Windows Server Update Services(WSUS)」による新しいMicrosoft Edgeの展開のサポートに関しては、現状ありません。既にWSUSでは製品として「Microsoft\Windows\Microsoft Edge」を有効にすれば、新しいMicrosoft Edgeの更新プログラムを承認できるようになっていますが、これはConfiguration Manager Current Branch(WSUSは配布ポイント)の管理環境向けのものです(画面4*1

*1 訂正情報(2020年10月20日訂正)

 本稿初出時、WSUS単体ではChromium版Microsoft Edgeの配布と更新はできないと記載していましたが、これは誤りです。初期展開についてはWSUS単体では行えませんが、Windowsインストーラーパッケージ(MSI)を用いて既にインストールされているChromium版Microsoft Edgeに対して更新プログラムを配布、更新することは可能です。


画面4 画面4 WSUSでは既に新しいMicrosoft Edgeの承認が可能だが、現時点では承認したとしても未導入の環境に配布できるわけではない

 新しいMicrosoft Edgeが最初から組み込み済みの状態で提供されるのかなど、Windows 10の次期バージョン(「バージョン2004」になる予定)以降の扱いについて、現時点では情報がありませんが、今後、従来のMicrosoft Edgeは完全に新しいMicrosoft Edgeに置き換わることになります。

全社展開に備えた互換性の検証と展開方法の検討

 企業では、近い将来の新しいMicrosoft Edgeへの移行に備えるため、範囲を限定したWindows 10デバイスに先行的に新しいMicrosoft Edgeをインストールし、社内Webシステム(ユーザーエージェント変更の影響など)や外部アプリとの連携など、テストする必要があるかもしれません。

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