前回に引き続き、近い将来、現在の「Microsoft Edge」(EdgeHTMLベース)を置き換えることになる新しいMicrosoft Edge(Chromiumベース)に関して企業向けのポイントを解説します。
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前回説明したように、「Windows 10」のHomeおよびProfessional(ただし、Azure ADまたはActive Directoryドメインに非参加)に対しては、2020年4月1日以降、Windows Updateを通じて新しい「Microsoft Edge」(Chromiumベース)が自動配布され、現在のMicrosoft Edge(EdgeHTMLベース)を置き換えていきます。
一方、企業においては、現時点では自動配布の対象ではありません。もちろん、企業での利用であっても自動配布の条件に一致してしまう場合は、前回説明した自動配布をブロックするツールを利用することができます。
しかしながら、Microsoft Edge(Chromiumベース)は企業にとって魅力ある新機能が多数搭載されており、「Windows 7」以降のWindows、「Windows Server 2008 R2」以降のWindows Server、10.12(Sierra)以降のmacOSに共通のブラウジング環境を提供できるという利点があります(画面1)。
例えば、前回説明した新機能「Internet Explorer(IE)モード」は、IE 11を起動することなく、同じブラウザの中でIE 11に依存するWebサイトやアプリの利用を、新しいMicrosoft Edgeがサポートする全てのWindowsで可能にします(ただし、ポリシー管理に対応していないHomeエディションは除く)。
現状、企業での利用においては、Microsoft Edge(EdgeHTMLベース)からMicrosoft Edge(Chromiumベース)に置き換わってしまうことはありません。将来の予定については不明ですが、それが明らかになるまでは、管理者が何らかのアクションを行わない限り、Microsoft Edge(Chromiumベース)が導入されることはないということです。新しいMicrosoft Edgeの新機能を企業内で活用したいという場合は、新しいMicrosoft Edgeを企業内に展開する方法を計画し、実施する必要があります。
現時点では、「Microsoft Endpoint Configuration Manager Current Branch」のバージョン1910以降(※1)を導入済みであれば、新しいMicrosoft Edgeに最適化された配布および更新機能を用いて、企業内のWindows(およびWindows Server)に展開することができます。
【※1】System Center Configuration Manager(SCCM)は、バージョン1910以降、Microsoft Endpoint Configuration Managerに名称が変更されました。
クラウドベースの「Microsoft Intune」を利用できる場合は、新しいMicrosoft EdgeをWindowsおよびmacOSに展開することができます。また、以下のサイトからダウンロード可能なWindows用パッケージ「MicrosoftEdgeEnterpriseX64(またはX86).msi」、macOS用パッケージ「Microsoft-Edge-X.X.X.X.pkg」を任意のソフトウェア配布ツールを利用して展開することも可能です。
前回も触れましたが、現時点で「Windows Server Update Services(WSUS)」だけで、新しいMicrosoft EdgeをWSUSクライアントに配布することはできません*1。
本稿初出時、WSUS単体ではChromium版Microsoft Edgeの配布と更新はできないと記載していましたが、これは誤りです。初期展開についてはWSUS単体では行えませんが、Windowsインストーラーパッケージ(MSI)を用いて既にインストールされているChromium版Microsoft Edgeに対して更新プログラムを配布、更新することは可能です。
WSUSで製品「Microsoft\Windows\Microsoft Edge」を有効にして同期される「Microsoft Edge-x64(またはx86)ベースエディション(ビルド XX.X.X.X)のStable(またはDevまたはBeta)チャネルバージョンXX Update」は、WSUSクライアントへの展開、更新用に設計されたものではなく、Configuration Manager Current Branchの管理下にあるWindowsクライアントへの更新用(展開は専用のインストールウィザードで行う)に設計されたものです(画面2、画面3)。
これに似たものとして、「Office 365 ProPlus」の更新プログラムの配布があります。WSUSで製品「Microsoft\Office\Office 365 Client」を有効にして同期される「Office 365クライアントの更新」は、Configuration Manager Current Branchを使用した更新の配布のために設計されたものです。
新しいMicrosoft Edge(x64 Windowsの場合は「C:\Program Files (x86)\Microsoft\Edge\Application\msedge.exe」)を手動でインストールした場合、同時にインストールされる「Microsoft Edge Update」(x64 Windowsの場合は「C:\Program Files (x86)\Microsoft\EdgeUpdate\MicrosoftEdgeUpdate.exe」)によってオンラインで自動更新されます。
新しいMicrosoft Edgeのウィンドウの右上にある「・・・」から「ヘルプとフィードバック」または「設定」の「Microsoft Edgeについて」を開くと、現在のバージョン(ビルド)が表示され、新しいバージョンが利用可能になっていないかどうかチェックされます(画面4)。利用可能な場合、ダウンロードとインストールが行われ、Microsoft Edgeの再起動が要求されます。
なお、Configuration Manager Current BranchまたはMicrosoft Intuneを導入済みであれば、これらのツールを使用して更新を詳細に管理することができます。
Microsoftはサポート期間中のOS(Windows 7/Windows Server 2008 R2を除く)のIEおよびMicrosoft Edgeに「Adobe Flash Player」を同梱し、Windows Update、WSUS、Microsoft Updateカタログを通じてAdobe Flash Playerのセキュリティ更新プログラムを配布してきました。
新しいMicrosoft Edgeでは、更新の提供方法が変わります。なお、IE 11(IE 10のサポートは2020年1月末で終了)および旧Microsoft Edgeの環境に対しては、Adobe Systemsがサポートを終了する2020年末まで、引き続きWindows Updateを通じてAdobe Flash Playerのセキュリティ更新プログラムが提供されることになります。
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