Chromium版「Microsoft Edge」への移行に備えよう(その2)――企業利用でのポイント企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(67)

前回に引き続き、近い将来、現在の「Microsoft Edge」(EdgeHTMLベース)を置き換えることになる新しいMicrosoft Edge(Chromiumベース)に関して企業向けのポイントを解説します。

» 2020年02月12日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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「企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内

企業にとって魅力的な新しいMicrosoft Edge

 前回説明したように、「Windows 10」のHomeおよびProfessional(ただし、Azure ADまたはActive Directoryドメインに非参加)に対しては、2020年4月1日以降、Windows Updateを通じて新しい「Microsoft Edge」(Chromiumベース)が自動配布され、現在のMicrosoft Edge(EdgeHTMLベース)を置き換えていきます。

 一方、企業においては、現時点では自動配布の対象ではありません。もちろん、企業での利用であっても自動配布の条件に一致してしまう場合は、前回説明した自動配布をブロックするツールを利用することができます。

 しかしながら、Microsoft Edge(Chromiumベース)は企業にとって魅力ある新機能が多数搭載されており、「Windows 7」以降のWindows、「Windows Server 2008 R2」以降のWindows Server、10.12(Sierra)以降のmacOSに共通のブラウジング環境を提供できるという利点があります(画面1)。

画面1 画面1 新しいMicrosoft Edge(Chromiumベース)は、全てのWindowsとmacOSに共通のブラウジング環境を提供(左からWindows 7 SP1、Windows 10、Windows Server 2016、macOS)

 例えば、前回説明した新機能「Internet Explorer(IE)モード」は、IE 11を起動することなく、同じブラウザの中でIE 11に依存するWebサイトやアプリの利用を、新しいMicrosoft Edgeがサポートする全てのWindowsで可能にします(ただし、ポリシー管理に対応していないHomeエディションは除く)。

Microsoft Edgeの配布と更新に関する補足

 現状、企業での利用においては、Microsoft Edge(EdgeHTMLベース)からMicrosoft Edge(Chromiumベース)に置き換わってしまうことはありません。将来の予定については不明ですが、それが明らかになるまでは、管理者が何らかのアクションを行わない限り、Microsoft Edge(Chromiumベース)が導入されることはないということです。新しいMicrosoft Edgeの新機能を企業内で活用したいという場合は、新しいMicrosoft Edgeを企業内に展開する方法を計画し、実施する必要があります。

 現時点では、「Microsoft Endpoint Configuration Manager Current Branch」のバージョン1910以降(※1)を導入済みであれば、新しいMicrosoft Edgeに最適化された配布および更新機能を用いて、企業内のWindows(およびWindows Server)に展開することができます。

【※1】System Center Configuration Manager(SCCM)は、バージョン1910以降、Microsoft Endpoint Configuration Managerに名称が変更されました。



 クラウドベースの「Microsoft Intune」を利用できる場合は、新しいMicrosoft EdgeをWindowsおよびmacOSに展開することができます。また、以下のサイトからダウンロード可能なWindows用パッケージ「MicrosoftEdgeEnterpriseX64(またはX86).msi」、macOS用パッケージ「Microsoft-Edge-X.X.X.X.pkg」を任意のソフトウェア配布ツールを利用して展開することも可能です。

 前回も触れましたが、現時点で「Windows Server Update Services(WSUS)」だけで、新しいMicrosoft EdgeをWSUSクライアントに配布することはできません*1

*1 訂正情報(2020年10月20日訂正)

 本稿初出時、WSUS単体ではChromium版Microsoft Edgeの配布と更新はできないと記載していましたが、これは誤りです。初期展開についてはWSUS単体では行えませんが、Windowsインストーラーパッケージ(MSI)を用いて既にインストールされているChromium版Microsoft Edgeに対して更新プログラムを配布、更新することは可能です。


 WSUSで製品「Microsoft\Windows\Microsoft Edge」を有効にして同期される「Microsoft Edge-x64(またはx86)ベースエディション(ビルド XX.X.X.X)のStable(またはDevまたはBeta)チャネルバージョンXX Update」は、WSUSクライアントへの展開、更新用に設計されたものではなく、Configuration Manager Current Branchの管理下にあるWindowsクライアントへの更新用(展開は専用のインストールウィザードで行う)に設計されたものです(画面2画面3)。

画面2 画面2 新しいMicrosoft Edgeの更新プログラムはWSUSに同期することが可能だが、WSUS単体でクライアントに配布することはできない(更新プログラムの「説明」を参照)。この更新プログラムを承認しても、WSUSクライアントには「インストール済みまたは該当しないコンピューター」として評価される
画面3 画面3 Configuration Manager 1910以降では、「Microsoft Edgeクライアントインストールウィザード」を使用して配布用パッケージをダウンロードし展開でき、展開後はWSUSのソフトウェア更新ポイントから更新を配布できる(この機能に関しては日本語を含む一部の環境において既知の問題があります。詳細はConfiguration Managerのリリースノートを確認してください)

 これに似たものとして、「Office 365 ProPlus」の更新プログラムの配布があります。WSUSで製品「Microsoft\Office\Office 365 Client」を有効にして同期される「Office 365クライアントの更新」は、Configuration Manager Current Branchを使用した更新の配布のために設計されたものです。

Microsoft Edge Updateによる更新

 新しいMicrosoft Edge(x64 Windowsの場合は「C:\Program Files (x86)\Microsoft\Edge\Application\msedge.exe」)を手動でインストールした場合、同時にインストールされる「Microsoft Edge Update」(x64 Windowsの場合は「C:\Program Files (x86)\Microsoft\EdgeUpdate\MicrosoftEdgeUpdate.exe」)によってオンラインで自動更新されます。

 新しいMicrosoft Edgeのウィンドウの右上にある「・・・」から「ヘルプとフィードバック」または「設定」の「Microsoft Edgeについて」を開くと、現在のバージョン(ビルド)が表示され、新しいバージョンが利用可能になっていないかどうかチェックされます(画面4)。利用可能な場合、ダウンロードとインストールが行われ、Microsoft Edgeの再起動が要求されます。

画面4 画面4 Microsoft EdgeはMicrosoft Edge Updateという機能によって、オンラインで自動更新される(Configuration Manager Current BranchやMicrosoft Intuneによる展開は除く)

 なお、Configuration Manager Current BranchまたはMicrosoft Intuneを導入済みであれば、これらのツールを使用して更新を詳細に管理することができます。

FlashはEdgeに同梱、ただし既定で「無効」

 Microsoftはサポート期間中のOS(Windows 7/Windows Server 2008 R2を除く)のIEおよびMicrosoft Edgeに「Adobe Flash Player」を同梱し、Windows Update、WSUS、Microsoft Updateカタログを通じてAdobe Flash Playerのセキュリティ更新プログラムを配布してきました。

 新しいMicrosoft Edgeでは、更新の提供方法が変わります。なお、IE 11(IE 10のサポートは2020年1月末で終了)および旧Microsoft Edgeの環境に対しては、Adobe Systemsがサポートを終了する2020年末まで、引き続きWindows Updateを通じてAdobe Flash Playerのセキュリティ更新プログラムが提供されることになります。

 新しいMicrosoft EdgeのAdobe Flash Playerは、新しいMicrosoft Edgeに統合されており、最新版に更新すると、Adobe Flash Playerも最新になります。1月末時点のビルド「79.0.309.71」ではその時点で最新のAdobe Flash Playerバージョン「32.0.0.321」に更新されます。Adobe Flash Playerのバージョン情報は、新しいMicrosoftEdgeのアドレス欄に「edge://components」または「edge://version」と入力することで確認できます(画面5)。また、「edge://components」で「更新プログラムの確認」をクリックすれば、現在のMicrosoft Edgeのバージョンに関係なく、利用可能な最新のAdobe Flash Playerに更新されます。

画面5 画面5 アドレス欄に「edge://components」と入力すると、新しいMicrosoft Edgeに同梱されているAdobe Flash Playerのバージョンを確認できる

 Adobe Systemsが公開している最新バージョンの一覧は、以下のサイトで確認できます。2020年1月末時点でのIEおよび旧Microsoft EdgeのAdobe Flash Playerはバージョン「32.0.0.225」(2019年9月のWindows Updateで提供)ですが、新しいMicrosoft Edgeについては「Chromiumベースのブラウザー」の行で確認してください。

 注意点は、以前のMicrosoft EdgeでAdobe Flash Playerが有効(既定)になっているか無効(推奨)になっているかに関係なく、新しいMicrosoft Edgeでは既定で無効(常にFlashをブロックする(推奨))になることです。この設定は「・・・」の「設定」にある「サイトのアクセス許可」を開き、「Adobe Flash」の「>」から変更することができます(画面6)。

画面6 画面6 旧Microsoft Edgeの以前の設定に関係なく、新しいMicrosoft EdgeではAdobe Flash Playerが既定で無効

 社内にAdobe Flash Playerに依存するコンテンツがある場合は注意してください。ただし、Adobe Flash Playerを有効にすることよりも、コンテンツ側をAdobe Flash Playerに依存しないものに置き換えることを早急に検討すべきです。なぜなら、Adobe Flash Player自身が年内にサポートを終了するレガシーなテクノロジーであり、頻繁にセキュリティ問題にさらされてきたコンポーネントだからです。

 新しいMicrosoft Edgeは旧Microsoft Edgeの設定の多くを引き継ぎますが、Adobe Flash Playerの設定など、旧Microsoft Edgeで使用していた環境を引き継がないものものあることには注意が必要です。

 この他、スタートページが新しいMicrosoft Edgeの既定のものに固定(外観などをカスタマイズ可能)され、「ホーム」の設定や検索エンジン設定など、以前の設定が引き継がれないように見える部分に戸惑うかもしれません(「ホーム」アイコンは「設定」でオンにできますし、アドレスバーの検索エンジンは引き継がれています)。

IEモードの実力は?

 前回も紹介しましたが、新しいMicrosoft EdgeのIEモードとは、IEに依存するレガシーサイトやアプリとの互換性を単一のWebブラウザで実現する新機能です。この機能は、新しいMicrosoft Edgeを導入したWindows 7以降の全てのWindowsで利用可能になります。ただし、利用するには品質更新プログラムの要件を満たす必要があります。前提条件については、以下の公式ドキュメントで確認してください。

 前回はIEモードがIE 11の「エンタープライズモード」を置き換えることを説明しました。従来の旧Microsoft EdgeからIE 11への誘導は、新しいMicrosoft EdgeのIEモードに置き換えられます。管理者は、新しいMicrosoft Edgeの以下のポリシー設定を構成することで、「すべてのイントラネットサイト」または「エンタープライズモードサイト一覧」に従って、IEモードのシームレスなエクスペリエンスをユーザーに提供することができます。

  • コンピューターの管理\管理用テンプレート\Microsoft Edge\Internet Explorer 統合を構成する

  • コンピューターの管理\管理用テンプレート\Microsoft Edge\すべてのイントラネット サイトを Internet Explorer に送る(または\エンタープライズ モード サイト一覧を構成する)

 IEモードを構成すると、アクセス先のURLに応じて自動的にIEモードに切り替わり、IEに依存するサイトやアプリをレンダリングすることができます。例えば、IEモードではIEのコンテキストメニューが利用可能になります。また、IEのActiveXコントロールやMicrosoft Silverlightに依存するサイトやアプリも可能です。

 以下の画面7は、新しいMicrosoft Edgeの標準モードと、IEのアドオン「Microsoft Update Catalog」(ActiveXコントロール)に依存するIE専用のMicrosoft UpdateカタログサイトをIEモードで開いたところです。

画面7 画面7 新しいMicrosoft Edgeのタブ内で自動的に切り替わるIEモード。コンテキストメニューも変わる

 トップページは問題なく表示されますが、検索結果がアドオンを必要としないMicrosoft Updateカタログに切り替わったり、バケットの表示がエラーになったりと、IE専用のMicrosoft UpdateカタログサイトのIEモードでの利用についてはさまざまな問題が発生しました。言い換えると、IEモードは完全なものではなく、例えば自社サイトで利用できるかどうかのテストが必要です。

 次の画面8は、「Microsoft Silverlight」のデモ(https://www.microsoft.com/silverlight/new-controls/demo/)を、新しいMicrosoft Edgeの標準モードとIEモードのそれぞれで表示したものです。

画面8 画面8 Microsoft Silverlightのデモへのアクセス。左は新しいMicrosoft Edgeでの表示(画面奥)とIE 11での表示(画面手前)、右は新しいMicrosoft EdgeのIEモードによる表示

 Microsoft Silverlightは現在、IE 11のみでサポートされており、そのサポートは「2021年10月12日」で終了することに注意してください。IE 10のサポートは2020年1月31日で終了しました。

 なお、新しいMicrosoft EdgeのIEモードは、Microsoft Edgeのタブ内でシームレスに動作しますが、Windows 10に標準搭載されているIE 11のコンポーネントを利用しています。そのため、Windows 10からIE 11を削除すると、IEモードは利用できなくなることに注意してください(画面9)。

画面9 画面9 Windows 10のIE 11の機能を削除すると、IEモードは機能しなくなる

最新情報(2020年7月1日追記)

 2020年7月30日以降(開始時期は未定)、Windows Updateによる自動配布の対象がEnterpriseおよびEducationエディションにも拡張されることが発表されました。


筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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