「勉強にコツはない」――両手で考え両手でプログラミングするドクターマルティネスGo AbekawaのGo Global!〜Juan Martinez編(後)(1/2 ページ)

エルサルバドル出身のJuan Martinez(ファン・マルティネス)氏。「不得意を得意に変える」ことでキャリアを積み重ねた同氏が教える「物事を学ぶコツ」とは。

» 2020年02月06日 05時00分 公開

 世界で活躍するエンジニアの先輩たちにお話を伺う「Go Global!」シリーズ。前回に引き続きクラウド名刺管理サービスを提供する「Sansan」のJuan Martinez(ファン・マルティネス 「i」の上にアクセント符号が付く)氏にご登場いただく。同氏が語る「物事を学ぶコツ」とは。

前編 「全く分からないけど、しょうがないので超スピードで学んだ」――勉強嫌いの少年がスーパーマンに

テクノロジーとデータサイエンスを融合させて答えを模索する

阿部川“Go”久広(以降、阿部川) Sansanに入社されたのは2019年2月ですね。きっかけは何だったのでしょうか。

マルティネス氏 データ解析が好きだったので関連した仕事を探していたときにSansanの募集を見たんです。もちろんプログラミングも好きですが、そこだけに特化すると、データを解析する機会はあまりないと考えていました。

 Sansanの仕事内容を聞くと「テクノロジーとデータサイエンスを融合させて答えを模索する、あるいは、次にこの会社が向かうべき方向性を考える」だと。これこそ思い描いていた仕事だと思い、応募しました。

阿部川 あなたの肩書は研究員ですが、同時にエンジニアでもあるわけですね。Sansanにいる他の研究員もデータの解析などを手掛けているのですか。

マルティネス氏 はい。SansanのData Strategy & Operation Center(DSOC)のR&D(Research and Development:研究開発)の部署に、SocSciチーム(社会科学者チーム)があり、現在5人所属しています。それぞれが違った経歴の持ち主で、リーダーは私と同じ経済学のバックグラウンドを持っていますが、データ可視化、ソーシャルネットワーク、機械学習などにも詳しいです。また2人計算社会科学や複雑ネットワーク科学の研究者ですし、1人はビジネス科学の研究者です。私は経済学が専攻でしたが、アプリケーションも開発します。

データからどのような意味をくみ取ることができるか

阿部川 マルティネスさんの仕事内容をご紹介いただけますか。

マルティネス氏 そうですね……。多くの会社における日々の業務に直接関係しませんが「データ分析や社会科学の力を生かして将来向き合うべき課題を見つけ出す」ことをしています。

 新しいプロダクトを開発するプロジェクトが始まった場合で説明しましょう。データ分析をして新規プロダクトのアイデアを思い付いたら、デモ用のアプリケーションを作ります。そして同僚にそれを見せて「ここはいいけど、ここは恐らくあんまり役に立たない」とか「おお、これはいけるね」とかアドバイスをもらいます。それを参考にしながらアプリケーションをブラッシュアップします。ブラッシュアップが一通り済んだら他の部署、例えば営業にそれを持っていって役に立つかどうかなどを聞き、フィードバックをもらいます。これらを何度か繰り返して、アプリケーションの精度を高める、といった具合です。

画像 Sansan」のJuan Martinez(ファン・マルティネス)氏(右)

阿部川 私はSansanのテレビコマーシャルの大ファンですから、貴社が「名刺データの活用を支援する企業」であることは分かっているつもりです。一方で、Sansanの方のスピーチなどを拝聴すると、貴社は「データ解析企業」を目指しているようにも思えます。名刺データをコアにしたより広範囲にわたるデータの利用価値といったことをお考えのように見えるのですが、実際はどうなのでしょうか。

マルティネス氏 名刺の交換から始まるデータというのが出発点ですが、それをどう分析できるかを研究していると言っていいと思います。具体的に詳しくお話しはできませんが、データからどのような意味をくみ取れるか、それによって顧客の生活の質がどれほど向上するかに、非常に一所懸命に取り組んでいます。

コーディングスキルだけでなく違ったスキルも身に付けるべき

阿部川 マルティネスさんの夢といいますか、今後どういった道に進みたいと考えていらっしゃいますか。

マルティネス氏 まずはギターをもっとうまくなりたい(笑)。というのはさておき、現状の仕事や生活に満足していますので、これから別の何かになりたいということはないですね。

 Sansanで仕事をしているとチームの多くの人から新たなことを学べますし、毎日のビジネスの現場でデータサイエンスについて学べます。皆元気で一所懸命ですし、仕事を楽しんでいます。環境もどちらかというと大学の研究施設のような雰囲気ですね。ですから今はいただける機会を生かせるよう、目の前の仕事や取り組みを全力でやるまでです。

阿部川 現状のキャリアに満足されているということですね。若いエンジニアたちは、プログラミングなど専門分野を極めるのがいいのか、あるいはある程度マネジメントのキャリアを積むのがいいのか迷っています。一方で現在プログラマーが極端に足りない。20万人以上足りないという試算もあります。もちろんこれを即座に解決できる特効薬はありません。このような現状を踏まえ、若いエンジニアにヒントやアドバイスはありますか。

画像 阿部川“Go”久広

マルティネス氏 プログラミングの技能は、従来に比べてより一般的になっています。でも、私は単にコードを書くスキルだけではなく、違ったスキルも同時に身に付けることをお勧めします。マネジメントを「幾つかあるスキルの1つ」と考えるのです。プログラマーであっても、一人だけで仕事をするわけではなく、多くの時間、他のプログラマーと一緒に仕事をしなければなりませんから。

 プログラミングスキルだけではなく、リーダーシップやマネジメントスキルを学ぶといった意味も含めて、コードキャンプなどを活用するといいでしょう。こういった仕組みを利用すればプログラミングを学ぶだけでなく、同じような問題意識やスキルを持ったエンジニアとコミュニケーションが取れます。単にプログラミングだけをやるのではなく、自分の能力の境界線や限界をぐっと押し広げる意識を持つといいですね。

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