独立系の有力SD-WANベンダーとして知られるSilver Peak Systemsでは、2020年のSD-WANをどう見ているか。クラウド活用の進展と、ビジネスニーズのダイナミックな変化が、大企業におけるSD-WAN導入の主要な促進要因として定着してきたという。
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GartnerのWANエッジインフラに関する2019年のマジック・クアドラントで、VMwareと共にリーダーとして分類されているSilver Peak Systemsは、2019年から2020年におけるSD-WAN市場の変化をどう見ているか。同社グローバル・オペレーションズ担当プレジデントのイアン・ホワイティング(Ian Whiting)氏は、クラウド活用の進展と、ビジネスのダイナミックな変化が、大企業のSD-WAN採用を急がせるきっかけになっていると話す。
大規模な企業では、ビジネス上のダイナミックな変化がSD-WAN導入のきっかけになるケースが増えていると、ホワイティング氏は話す。
「私が最近会った米国企業の担当者は、『SD-WANの使い道はとてもシンプルだ。当社は積極的な企業買収を進めている。そこで買収した企業の従業員が、できるだけ早く全社的な業務アプリケーションを利用できるようにしなければならない。通信会社が買収先の拠点にMPLS回線を引くのを待っているわけにはいかない』と話した。また、ある銀行は、『1000以上に上るリテールバンキングの支店を、テクノロジーハブへと完全に変革しようとしている。従来の業務は自動化し、支店は顧客にデジタルツールの使い方を教え、こうしたツールを使って資産管理やファイナンシャルアドバイスを与える役割を担う拠点になる。そのためにSD-WANが必要だ』と言っていた。このようにビジネスニーズがけん引する大規模需要が加速している。その点では需要不足よりも、供給側の対応能力が問われる状況になりつつあるともいえる」
より一般的には、SaaSをはじめとしたクラウド利用の進展を挙げる。
「SD-WANの伸びは、クラウドサービス利用の広がりに依存することがはっきりしてきた。つまり、クラウド化が急速に進むと考えるなら、SD-WANの普及も急速に進むといえる」
Office 365、SalesforceなどのSaaSに加え、パブリッククラウド上でさまざまな業務アプリケーションを動かすことが増えている。そこで、多数の拠点を持つ大規模な多国籍企業が、ルータのメンテナンスアップグレードなどをきっかけに、従来のWANアーキテクチャを変えようと考えるケースが増えているという。
「これまでのWANアーキテクチャでは高価なMPLS回線を使って全拠点を社内データセンターに接続してきた。従来型のルータを手作業で設定する作業は複雑で、間違いが起こりやすい。新たな拠点を社内WANに接続するのに、6〜12カ月かかることも珍しくなかった。だが、例えば当社の製品を使うと、1000や2000の拠点を論理WANに接続する作業はとても迅速にできる。遠隔拠点にIT要員を派遣する必要はない。各拠点にインターネット回線を用意したら、後はオーケストレーターを使って多数の拠点を対象とした設定を展開すればいい。正しい設計と信頼できるパートナーがいれば、非常に速いスピードで導入が図れる」
SD-WANのスタートアップ企業は数社が、過去4、5年で大手ITベンダーに買収された。大規模企業顧客にアプローチするという観点では、大手ベンダーが有利だ。だが、既存のWANアーキテクチャや関連ソリューションを持たないSilver Peakのような企業は、上記のように全社的なWANアーキテクチャの改変や再構築を進めるユーザー企業にとって便利な存在だと、ホワイティング氏は主張する。
「私は社内で、『当社のような専業ベンダーが急いでつかむべきチャンスが訪れた』と話している。大企業の間で、WANアーキテクチャ変革への動きがうねりのようになっているからだ」
SD-WANの利用形態にも変化が見られるという。「最近では、大企業のCIOに、技術バックグラウンドを持たないマーケティングなどの出身者が着任する例が増えている」。このことが象徴するように、ITを徹底したビジネス視点でとらえる傾向が強まっており、これに伴ってSD-WANについてもサービスとして使いたいというニーズが高まってきたという。
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