リモートワークで作業中に接続先の社内のPCがハングアップした、リモートで更新プログラムを適用したら起動しなくなった、という経験はないだろうか。再起動を実行するだけに出社するのは面倒だし、無駄だ。実は、最近いろいろなところから販売されているスイッチを操作できるIoTデバイスを使えば、リモートからPCの電源の操作が可能だ。その設定方法と注意点を紹介しよう。
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対象:デスクトップPC
在宅勤務で社内のPCにリモートデスクトップで接続したり、遠隔地のPCのサポートを行ったりすることが増えているのではないだろうか。このような場合に問題になるのが、接続先のPCのオン/オフではないだろうか。
電源をオフにするには、接続したPC上でシャットダウンを実行すればよいが、電源をオンにするのは簡単ではない。WoLでPCを起動「【リモートワーク自由自在】Windows 10 Wake On LAN(WoL)入門」で解説している「Wake On LAN」が使えれば、対象PCに対してマジックパケットを送信することで、電源をオンにすることができる。
これでPCの電源が正常にオンにできれば問題ないのだが、実際にはそうとは限らない。また、電源が入っていても、PCがハングアップしてしまったり、何らかの理由によりCPUやディスクの占有率が高くなったりして、再起動もシャットダウンもできなくなることもある。
実際、筆者も自宅から社内のPCをリモートデスクトップで使っていて、CPU占有率が高まってしまったので、何とか再起動を実行したものの、シャットダウンの途中で止まってしまい、仕方なく社内に残っていた人にお願いして、電源を入れ直してもらったことがある。
このようにある程度はリモートで電源のオン/オフ、再起動などが行えるものの、不具合が発生したような場合は電源スイッチを使った電源オフ/オンが必要になることがある。誰もいないような場合には、PCの電源をオン/オフするだけに出社しなければならない。
このような場合に役立つのが、最近いろいろなベンダーから販売されている「スマートデバイス」だ。スマートデバイスとは、ネットワーク経由でスマートフォンやPCなどから操作できるIoTデバイスのことである。スイッチ(物理的なスイッチをオン/オフする)や赤外線リモコン、電源コンセント(接続した機器への電源供給をオン/オフする)などが提供されている。
ここではWonder Labsの「SwitchBot」を例に、PCの電源をオン/オフする方法を紹介する。設定手順などは他の製品でも同様なので参考になるだろう。スイッチの形状からSwitchBotではダメでも、他の製品ならばPCの電源がオン/オフできる可能性もあるので、製品の形状やスイッチの押し方などを比較して選ぶとよい。
なお、PCの電源スイッチを物理的に押してオン/オフするため、電源スイッチにスライドスイッチを採用するPCや、電源スイッチが小さ過ぎるPCは、SwitchBotで押せないため、電源のオン/オフが行えない。基本的に比較的大きな電源スイッチ(押しボタンスイッチ)を採用するデスクトップPC/サーバ向けのソリューションと考えてもらいたい。
また、設定によっては他人がPCの電源のオン/オフを操作できてしまう可能性もある。こうしたセキュリティ面での設定については解説しないので、各自自己責任で行ってほしい。
SwitchBotをインターネット越しに利用するには、SwitchBotの「スマートスイッチ 超小型指ロボット(以下、スマートスイッチ)」の他に、スマートスイッチを無線LANに接続するためのSwitchBotハブが必要になる。SwitchBotハブは、機能によってSwitchBotハブミニとSwitchBotハブプラスの2種類があるので、用途に合わせて選択すればよい。SwitchBotハブミニはハブ機能のみ、SwitchBotハブプラスはハブ機能に加え赤外線リモコン(家電リモコン)に対応したものだ。
これらを設定、コントロールするために「SwitchBot」アプリをインストールしたスマートフォン(Android、iPhoneのいずれも対応)が必要になる。またSwitchBotハブは、2.4GHz帯の無線LANにしか対応していないので、2.4GHz帯(IEEE 802.11b/gなど)に対応した無線LANルーターも必要になる。セキュリティ上の理由などから2.4GHz帯を無効化している場合は、設定開始前に有効化しておく必要がある。
また、後述するが設定する際にはWindows 10のインストールUSBメモリなど、起動可能なUSBメモリがあるとよい。
スマートフォンのBluetoothを有効にして、スマートスイッチの電源を入れる(電池と接点を遮っているシートを外す。スマートスイッチには電源ボタンはなく、一度、シートを外すと常に電源がオンの状態になる)。この時点ではPCの電源スイッチにスマートスイッチを貼り付けておかないこと(理由は後述)。
スマートフォンでSwitchBotアプリを起動すれば、先ほど電源を入れたスマートスイッチが表示されているはずだ。まず、この状態でスマートスイッチのアイコンをタップして、スマートスイッチが正常に動作するかどうか確認しておこう。
次に表示されたスマートスイッチの[歯車(設定)]アイコンをタップし、スマートスイッチの名前を分かりやすいものに変更しておこう。社内に複数のスマートスイッチが導入されると、自動的に認識されてアプリ上に表示されてしまい、どのスマートスイッチが自分のPCを操作するものか分からなくなるからだ。他人が制御できないようにするためにパスワードを設定するなども必要になるが、本稿ではその設定方法などについては省略させていただく。
ここからPCの電源スイッチにスマートスイッチを貼り付けて、電源のオン/オフが可能かどうか試すことになる。貼る位置や押す時間などを何度かスマートスイッチのオン/オフを繰り返して試す必要がある。
この際、重要なポイントとしてPCの「電源を完全にオフ」にした状態で、かつコンセントを抜いてから行うこと。スマートスイッチが正しく動作するまでに何度か電源のオン/オフが繰り返されることになる。そのたびにPCの電源がオン/オフを繰り返すと、Windows OSの起動途中で強制シャットダウンが何回も実行されるなどして、最悪の場合、システムが壊れてしまうからだ。
まず、電源スイッチがスマートスイッチで操作可能なのか試そう。最終的にはスマートスイッチは両面テープでPC本体の電源スイッチ部分に貼り付けることになるが、位置決めする際に両面テープで貼ってしまうと、剥がせなくなってしまうので、手で持つか、粘着力の低い両面テープを使うかして、スマートスイッチの貼る位置を確定しよう。
注意が必要なのは、電源スイッチが隠れてしまうような位置だと、手動で電源スイッチが操作できなくなるので、電源スイッチが半分くらい見えるような状態にすることだ。だいたいの位置が決まったら、スマートフォンからスマートスイッチを操作し、電源スイッチが押せるかどうか試してみよう。
PCの電源スイッチの形状やサイズ、貼る場所の問題からスマートスイッチでオン/オフができない場合は、残念ながら諦めることになる。スマートスイッチは別の用途での利用を考えてほしい。
問題なく電源スイッチのオン/オフが可能であることが確認できたら、スマートスイッチが電源スイッチを押し続ける時間を設定する。電源スイッチの押す時間が短いと、PCがハングアップした際に電源オフできないし、長過ぎると電源オンした後に電源をオフにしてしまうなど、正常にPCの電源が操作できなくなるからだ。適切な時間を設定するために、電源のオン/オフを繰り返さなければならない。
そこで仮止めしていたスマートスイッチをいったん外し、PCをコンセントに接続した上で、USBメモリから起動できるように設定を変更しておく。用意しておいたインストールUSBメモリから起動できるようにして、スマートスイッチの押す時間を設定する。これで、電源のオン/オフを繰り返すことで、PCのディスク内のシステムが壊れることを防ぐことができる。
インストールUSBメモリから起動することが確認できたら、電源をオフにして、先ほど確定した位置にスマートスイッチを両面テープで貼ってしまおう。
スマートスイッチが貼れたら、SwitchBotアプリを操作して電源をオンにしてみよう。PCがUSBメモリから起動したところで、SwitchBotアプリでスマートスイッチを再び操作し、今度はPCの強制シャットダウンが可能かどうか試そう。
デフォルトでは、押す時間は「0s」に設定されており、電源ボタンを押すとすぐに戻ってしまう。そのため、PCがハングアップした際の強制電源オフ(電源ボタンの長押し)が行えないことがある。そこで、強制リセットが可能で、かつ電源のオン/オフに支障のない押す時間を設定する。
SwitchBotアプリの[歯車(設定)]アイコンをタップし、[Bot設定]画面の[詳細設定]をタップ、長押し時間をデフォルトの「0s」から増やせばよい。ただ、前述の通り、長押し時間が長すぎると、PCの電源をオンにできなくなってしまうので、どの程度がちょうどいいのか何度かスマートスイッチを操作して確認するとよい。ちなみに編集部で試したところ「1s」程度で十分だった。
スマートスイッチでPCの電源オン/オフが操作できるようになったら、SwitchBotハブに接続して、インターネット経由で操作できるようにする。
SwitchBotアプリを起動し、右上の[三]アイコンをタップし、メニューから[デバイスの追加]を選択する。SwitchBotのアカウントを作成していない場合、まずアカウントの作成が求められる。アカウントを作成したら、再びメニューで[デバイスの追加]を選択する。
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