「新型コロナ後」のGoogle Cloudは、国内でAWSやAzureにどう対抗していくのか一般企業のDXに照準(1/2 ページ)

Google Cloudは、2020年6月9日より開催した国内向けのオンラインイベント「Google Cloud Day」で、国内の一般企業におけるITを活用した事業変革が、新型コロナ後に加速するという認識を示した。ではコロナ後に、Google Cloudは国内でAWSやAzureにどう対抗していくのか。

» 2020年06月16日 05時00分 公開
[三木泉@IT]

この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。

 「(コロナ後は、自社のITを)このままにしておくわけにはいかないというのが、企業顧客の要望」。グーグル・クラウド・ジャパン日本代表の平手智行氏は、新型コロナウイルス禍を契機に国内企業の間でクラウドを活用したデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)が加速するといい、同社はその支援に注力すると話した。

 平手氏は、2020年6月9日より開催した国内向けのオンラインイベント「Google Cloud Day」で、Google Cloud Platform(GCP)に特徴的なサービスの一つに、「BeyondCorpリモートアクセス」を挙げた。

 「ゼロトラストネットワーク」あるいは「ゼロトラストセキュリティ」への注目が高まっているが、この考え方を具体化した代表例として知られているのが、Googleが社内で実践してきた「BeyondCorp」という取り組み。グローバルで2020年4月に発表したBeyondCorpリモートアクセスは、BeyondCorpに基づくサービスで、オンプレミス、GCP、他のクラウドへのアクセスに、文脈を考慮したきめ細かな認証と通信の保護を適用する。企業は従業員や関連スタッフに、世界のどこからでも職務に応じたアクセスを提供できる。社内向けWebアプリケーションへのアクセスをBeyondCorpリモートアクセスへ移行し、従来型のVPN装置は非Webアプリケーションに用途を限定して使い続けるといったことが可能だと、平手氏は説明した。

 一方、今回のイベントで目立ったのは、「エンタープライズっぽい」、あるいは「Googleらしくない」サービスだ。Google Cloudはこれまで「攻めのIT」や「デジタル変革」に向けたメッセージが目立ち、企業の既存業務システムに関する取り組みはあまり見られなかった。見られたとしても、例えばオンプレミスでGCPと連動するコンテナ環境を構築し、GCPによる管理に任せることのできる「Anthos」を活用し、コンテナ化を通じた既存の業務システムのモダナイゼーションをしようというメッセージだった。

 だが、トマス・キュリアン氏のCEO就任以来、エンタープライズニーズへの注力姿勢が強まり、これを受けて関連サービスが広がってきた。今回のイベントでは、象徴的な「Google Cloud VMware Engine」、そして「Oracle Database」にも対応する物理サーバサービス「Bare Metal Solution」を、2020年後半に日本で提供開始することを明らかにした。

 GCPでVMware環境を稼働するGoogle Cloud VMware Engineは、2019年7月の発表時には「Google Cloud VMware Solution by CloudSimple」という名称だったが、2020年5月の米国における一般提供開始時には、GCPの主力サービスである「Google Compute Engine」「Google App Engine」「Google Kubernetes Engine」と並ぶような名称に変更し、Google Cloudとしての力の入れようを強調している。

 なお、Google Cloud VMware Engineでは、GCPのデータセンター内ではなく、隣接したコロケーション施設でVMware環境を動かすという。とはいえ、GCPのデータセンターネットワークと直結され、同クラウドの各種サービスを利用できる。

 Google Cloud VMware Engineの運用・サポートはGoogle Cloudが一括して行うが、仮想マシンのオンプレミスからの移行ではVMware HCXが利用できる。つまりレイヤー2延伸でIPアドレスを変えることなく、ライブマイグレーションで一括移行が可能という。

 Oracle Databaseについては、OracleがGoogle Compute Engine上での稼働を認定していないことに変化はない。Oracleが「認定クラウド環境」としているのはAmazon EC2、Amazon RDS、Microsoft Azureのみだ。だが、米Google Cloudは解決策として、2019年11月、「Bare Metal Solution」という物理サーバサービスを発表した。同サービスは2020年中に、東京リージョンでも提供開始するという。

 Bare Metal SolutionはVMware Cloud Engineと同様、GCPのデータセンターに隣接するコロケーション施設で、Google Cloudが物理サーバを提供するサービス。さまざまなアプリケーションをこのサーバで動かせるが、Google Cloudが主な用途として想定しているのはOracle Databaseだ。オンプレミスのライセンスをそのまま持ち込むことができ、他のパブリッククラウドに比べてOracle Databaseのライセンスコストやサポート料を抑えられる可能性を示唆している。データベースのダンプファイルを移行できるサービスも用意している。

Bare Metal Solutionの最大の用途はOracle Databaseの稼働

 また、Google Cloudは今回のイベントで、アビームコンサルティング、日立製作所、SCSKが同社のパートナーに加わったことを発表すると共に、パートナーを対象としたDX人材育成トレーニングを2020年7月に開始することを明らかにした。

AWSやAzureではなく、GCPを積極的に選択する理由はあるのか

 とはいえ、新型コロナ禍は、Google Cloudだけでなく、全てのクラウドベンダーにとっての追い風だ。上記のエンタープライズ的な機能やパートナーエコシステム拡大への取り組みも、大まかにいえばAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureの後追いをしているようにも見える。

 では国内の一般企業がAWSやAzureでなくGCPを選ぶ理由、あるいはGCPがAWSやAzureに勝てるとしたら、その理由はどこにあるか。この質問に対する平手氏の答えを要約すると、次のようになる。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

Microsoft & Windows最前線2025
AI for エンジニアリング
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。