Uptime.com、2020年上半期のWebサーバダウンタイムレポートを発表金融、ヘルスケア、ソーシャルおよびITなど5業種別

Uptime.comは、2020年上半期に世界6000以上の主要Webサイトで発生した障害やダウンタイムの状況などを業種別にまとめたレポートを発表した。

» 2020年07月29日 15時00分 公開
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 Webサイトのアップタイムやパフォーマンスを向上させるソリューションを提供するUptime.comは2020年7月8日(米国時間)、2020年上半期に世界6000以上の主要Webサイトで発生した障害やダウンタイムの状況などを業種別にまとめた初の半期レポート「Semiannual Report of Unplanned Server Downtime | 2020 Q2」を発表した。

 Uptime.comは、世界のさまざまな地域でホストされているWebサイトをモニタリングしており、これらのサイトのメインランディングまたはログインページに3分ごとに接続し、サーバのパフォーマンス指標とダウンタイムインシデント(計画されたものと予定外のものの両方)を記録している。同レポートはその結果を、各種ビジネス、電子商取引、金融、ヘルスケア、ソーシャルおよびITという業種別に要約して報告している。

業種別の総ダウンタイム(出典:◆Uptime.com◇https://uptime.com/blog/semiannual-report-of-unplanned-server-downtime-2020-q1-q2◆) 業種別の総ダウンタイム(出典:◆Uptime.com◇https://uptime.com/blog/semiannual-report-of-unplanned-server-downtime-2020-q1-q2◆)

予定外のサーバダウンタイム:各種ビジネス

主要サイト - 各種ビジネス(2020年1月1日〜6月15日)

アップタイム:99.92%

障害件数:765

総ダウンタイム:6日1時間

平均レスポンスタイム:1.21秒

証明書の失効問題と防止できる障害

 Uptime.comは、証明書が失効する可能性や、外部システムで障害が発生する可能性があることが分かっているにもかかわらず、必要な対策を取っていない企業が多いと警告している。

 さらに、BitfieldConsulting.comのコンサルタントで、インフラの信頼性の専門家であるジョン・アランデル氏の次のような見解を紹介している。

 「多くのエンジニアは障害について考えることに慣れていない。エンジニアは作り手であり、当然のことながら、作ったものがずっと機能し続けると考える。だが、行き過ぎた楽観は禁物だ。大きな橋やトンネルは、設備が綿密に作り込まれ、定期的に負荷や損耗がモニタリングされ、機動的に保守が行われ、トラブルの兆候がわずかでもあれば、エンジニアにアラートが送られる。オンラインインフラについても、同様の姿勢で取り組むべきだ。実のところ、橋のバックアップはなかなか造れないことを考えれば、オンラインインフラの方が、レジリエンス(回復力)を組み込みやすい」(アランデル氏)

予定外のサーバダウンタイム:電子商取引

主要サイト - 電子商取引(2020年1月1日〜6月15日)

アップタイム:99.96%

障害件数:198

総ダウンタイム:2日23時間

平均レスポンスタイム:1.74秒

ユーザーの信頼とアップタイム

 電子商取引では、信頼とタイミングが肝心だ。ユーザーの信頼を築き、適切なタイミングで商品やサービスを提供するための基盤となるのが、インフラの信頼性だ。電子商取引業界の上半期のダウンタイムとアップタイムは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行を考慮すると、目覚ましい数字だ。

 電子商取引では、資産の稼働、取引の完了、ユーザーの登録、マーケティングなど、バランスを取るべき項目がたくさんある。現状では、安定性に関する実績が強力なので、レスポンスタイムを改善するために何ができるかが検討に値する。1.74秒も立派な数字だが、事業を拡大する過程では、常に現状改善の余地がある。

予定外のサーバダウンタイム:金融

主要サイト - 金融(2020年1月1日〜6月15日)

アップタイム:99.83%

障害件数:766

総ダウンタイム:7日23時間

平均レスポンスタイム:1.52秒

 金融サービス会社は、ダウンタイムに影響する「サービスの相互接続化」「サイバー攻撃の増大」というトレンドに備えるべきだ。2020年に入って、これらのトレンドに連なるインシデントが相次いだ。

 例えば、外貨両替大手のTravelexがマルウェアの被害に遭い、一部のサービスを一時停止したことで、消費者に加え、金融機関や旅行、宿泊といった業界の企業が影響を被った。株取引アプリを手掛けるRobinhoodも、システム障害でサービスの一時停止を余儀なくされた。

 金融会社は、こうしたインシデントを警告として深刻に受け止めるべきだ。現在は大手企業の障害が広く報じられているが、Uptime.comが蓄積してきたサイトモニタリングデータは、こうした障害の問題が金融業界に広がっている可能性を示唆している。

予定外のサーバダウンタイム:ヘルスケア

主要サイト - ヘルスケア(2020年1月1日〜6月15日)

アップタイム:99.34%

障害件数:120

総ダウンタイム:28日17時間

平均レスポンスタイム:637ミリ秒

懸念されるランサムウェア攻撃

 患者記録のメンテナンスとヘルスケアサービスの向上は、世界的な課題となっている。こうした課題への対応にはインターネット接続が必要となるが、インターネットでは、サイバー犯罪者が獲物を狙って手ぐすね引いている。

 ヘルスケア業界では、障害件数が比較的少ないのに対し、ダウンタイムが長い。このことは、ヘルスケア業界のDevOpsでは障害復旧時間が、見過ごされている大きな要素であることを示している。これは、高負荷の下でサービスを支えられるインフラがないか、あるいは障害復旧時間を短縮する効果的な施策が取られていないということだ。

ダウンタイムの平均と障害件数を業種別に比較 ダウンタイムの平均と障害件数を業種別に比較(出典:Uptime.com

 ランサムウェア攻撃は全世界で、インターネットに接続している企業に200億ドルの損害をもたらすと予想されている。ヘルスケア業界におけるダウンタイムの長さは、この業界がこうした攻撃に弱いことを示していると、Uptime.comはみている。

予定外のサーバダウンタイム:ソーシャルとIT

主要サイト - ソーシャルとIT(2020年1月1日〜6月15日)

アップタイム:99.98%

障害件数:60

総ダウンタイム:1日8時間

平均レスポンスタイム:742ミリ秒

トレンドに左右されるソーシャルメディア

 ソーシャルメディアでは、トレンドの影響によるダウンタイムが発生しやすい。クリスマスや新年に備えることはできるが、新型ウイルスの深刻な感染拡大、政治的な抵抗活動の全世界での急速な進展、自宅待機を余儀なくされた人々によるNetflixの視聴時間増加といった自然発生的な動きに備えることはできないからだ。

 大手のソーシャルメディアは、サーバと人員に多額の資金を投じて強力なインフラを整備する傾向がある。だが、こうした手を打てない企業もある。ソーシャルメディアサイトのモニタリングデータを見ると、多くの小規模サイトでダウンタイムの長さが分かる。

まとめ DDoS攻撃が大きな問題に

 2020年上半期にはDDoS攻撃が増加した。2023年までにDDoS攻撃の発生件数は1500万件に達する見通しだ。対策に投資していない企業が被害に遭うのは時間の問題だろう。

30%のサイトでダウンタイムが既に100時間以上

 新型コロナウイルス感染症の世界的流行やリモートワークの拡大に伴い、Webの負荷が高まっている。Uptime.comがモニタリングしているサイトのうち、Alexa Top Sitesにランク入りしている高トラフィックサイトの29.4%で、ダウンタイムが100時間を超えている。2020年下半期に向けて気掛かりな数字だ。

 新型コロナウイルス感染症の世界的流行の状況が今後どうなるか、それに伴って世界経済がどう展開するかは不透明だが、消費者と企業の両方によるオンライン利用が増加するのは間違いないだろう。これにより、オンラインサービスの信頼性がこれまで以上に重要になり、収益をさらに左右する見通しだ。

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