Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)で失われた機能まとめその知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(167)

Windows 10の新バージョンでは、すぐにドキュメント化されない、あるいは今後もドキュメント化されることがないかもしれない重要な変更が行われることがあります。2020年5月末にリリースされた「Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)」をこれまで使ってきて、筆者が気が付いた、そのような変更点をまとめました。

» 2020年08月26日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。

「Windowsにまつわる都市伝説」のインデックス

Windowsにまつわる都市伝説

Windows 10 バージョン2004から削除された機能の公式情報

 「機能更新プログラム」と呼ばれる「Windows 10」の各バージョンでは、新機能が追加される一方、以前のバージョンで利用できていた機能が削除される場合もあります。Microsoftの公式ドキュメントでは各バージョンで削除された機能の一覧を確認できます。リリース直後は以下の3つの機能が削除されたことが公開されていました(現在はさらに幾つか追加されています)。

Windows 10に統合されたパーソナルアシスタント「Cortana」

 「Cortana」は、独立したユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)アプリに変更されました。しかし、新しいCortanaアプリは2020年6月末時点でまだβ版で、7月に入ってβ版が取れたばかりであり、ウェイクアップワード(“コルタナ(さん)”)の機能は無効化されている他、以前はできていた多くの操作(アラームのセットなど)はできない状態です。

Windows To Go

 「Windows To Go」は、Windows 10 バージョン1903で開発終了(非推奨)となり、「Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)」からは削除されました。

ビルトインUWPアプリとしての「モバイル通信プラン」と「メッセージング」アプリ

 これらのアプリは「Microsoft Store」から引き続き入手できます。また、OEMベンダーはプリインストールPCにこれらのアプリをプリインストールして提供することが可能です。

 Windows To Goは、「Windows 8 Enterprise」で初めてサポートされたEnterpriseエディション(評価版を含む)限定の機能です。Windows To Goに対応したUSBリムーバブルドライブにWindowsのイメージをインストールすることで、USBリムーバブルドライブからWindowsを起動できます。Windows 10 バージョン1703からはProエディションにも「Windows To Goワークスペースの作成」ツールが搭載されましたが、ワークスペースの作成にはEnterpriseエディション(評価版を含む)のインストールメディアが必要です。

 Windowsの新バージョンにアップグレードできないといった制約や、OEMベンダーによるWindows To Go認定デバイスの供給やサポートの終了などを受け、Windows 10 バージョン1903で開発終了扱いとなり、Windows 10 バージョン2004で削除されました。

 ただし、削除されたのは「Windows To Goワークスペースの作成」ツール(C:\Windows\System32\pwcreator.exe)であり、Windows 10 バージョン1909以前のツールでWindows 10 Enterprise バージョン2004のワークスペースを作成し、ワークスペースを起動して使用することは可能でした。

 つまり、Windows 10 バージョン2004では、Windows To Go環境で動作するための仕組みが完全に削除されたわけではないということです。しかし、Windows 10 Enterprise バージョン2004ベースのワークスペースの使用がサポートされるかどうかは別の話です。公式に削除された機能の一覧に追加されたのですから、サポートされないと考えるべきでしょう(画面1)。

画面1 画面1 Windows 10 バージョン1909以前にあった「Windows To Goワークスペースの作成」ツール(pwcreator.exe)は、Windows 10 バージョン2004には存在しない

 Windows To Goのように、何がどう削除されたのか、公式ドキュメントの削除された機能の一覧からは分からないこともあります。もっと言えば、一覧に掲載されていなくても、削除された機能もあります。本連載や他の連載、個人ブログでバラバラに書いてきましたので、今回は総括してみます。なお、今回紹介するものの中には、意図的にそうされているのか、意図せず生じてしまった不具合(バグ)なのか判断できないものもあります。

機能/品質更新プログラムのクライアント側延期設定

 Windows 10のPro以上のエディションは、「Windows Update for Business(WUfB)」というポリシー設定(グループポリシー、ローカルポリシー、Microsoft Intuneポリシーなど)が利用可能です。管理者はこのポリシーを利用して、機能更新プログラムや品質更新プログラムがリリースされてからインストールするまでの延期日数を設定し、更新サイクルを制御することができます。

 Windows 10 バージョン1703からは「設定」アプリの「更新とセキュリティ」の「Windows Update」にある「詳細オプション」を使用して、ユーザー自身が同様の延期設定を行うことを可能にする「更新プログラムをいつインストールするかを選択する」オプションが追加されました。

 Windows 10 バージョン2004でもWUfBポリシーは引き続き利用可能ですが、ユーザーが利用できる「詳細オプション」の「更新プログラムをいつインストールするかを選択する」オプションは廃止されたようです(画面2)。

画面2 画面2 Windows 10 バージョン1909以前のProエディション以上に存在した「更新プログラムをいつインストールするかを選択する」オプションは(画面左)、Windows 10 バージョン2004からは削除された(画面右)

 Windows 10 バージョン1909以前で設定されていた延期設定は、バージョン2004にアップグレードすると消えてなくなりますし、Windows 10 バージョン1909以前で延期設定を保持していたレジストリ値はバージョン2004では無視されます。この変更については、以下の公式ドキュメントの「Windows Update for Business」の項に2020年6月24日に追記されました。

 2019年から、機能更新プログラムの自動配布はサポート終了が近いデバイスのみを対象とするように方針が変更され、自動更新に任せている多くのデバイスでは年に1回の機能更新しか行われなくなりました。この方針変更を最大限ユーザーに提供しつつ、かつ混乱を避けるために、「詳細オプション」から削除されたそうです。

 なお、このオプションが削除された代わりというわけではないと思いますが、Windows 10 バージョン1803以降のWUfBポリシーには新たに「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」のオプションが追加され、明示的に機能更新プログラムのバージョンのロックやスキップができるようになっています。

 Windows Update関連ではこの他にも、PowerShell(Windows PowerShellおよびPowerShell Core)で利用できる「WindowsUpdateProvider」モジュールによるWindows Update関連の操作が、Windows 10 バージョン2004では利用できなくなるということも確認しました。これらの変更点について詳しくは、以下の連載記事をご覧ください。

自動ログオン構成オプションが消えた?

 以下の画面3は、どちらもWindows 10 バージョン2004で「netplwiz」(control userpasswords2)を実行したときの画面です。左側の画面には「ユーザーがこのコンピューターを使うには、ユーザー名とパスワードの入力が必要」があり、右側の画面には見当たりません。「ユーザーがこのコンピューターを使うには、ユーザー名とパスワードの入力が必要」をオフにすると、自動ログオンのためのユーザー名とパスワードを設定、保存して、自動ログオンを可能にできます。

画面3 画面3 Windows 10 バージョン2004では、自動ログオンの設定オプションが表示される場合とされない場合がある

 「ユーザーがこのコンピューターを使うには、ユーザー名とパスワードの入力が必要」の有無の違いは、Windows 10 バージョン2004で追加さえた新しいサインインオプション「MicrosoftアカウントにWindows Helloサインインを要求する」のオン/オフ状態と、この新しいサインインオプションを利用できない特定の状況下で発生します。少し複雑な話になりますが、詳しくは以下の連載記事をご覧ください。

「新たに開始」が新たに開始できないのはバグ?

 Windows 10 バージョン1703では、新機能としてローカルイメージを使用してWindows 10をクリーンインストールする「新たに開始(Fresh Start)」機能が追加されました。この機能は、これまであった「このPCを初期状態に戻す(Reset PC、PCのリセット)」機能と重複するところもありますが、個人データやアプリを保持せずに、再インストールするという操作を素早く実行できるようにしたものです。

 Windows 10 バージョン1909までは「Windowsセキュリティ」(旧称、Windows Defenderセキュリティセンター)の「デバイスのパフォーマンスと正常性」の「新たに開始」にある「追加情報」をクリックすると「開始する」ボタンが出現し、そこから開始できました。

 Windows 10 バージョン2004でも同じ手順で「追加情報」をクリックすると、既定のブラウザで「https://support.microsoft.com/ja-jp/help/4012986/」が開きます。そこには、「6.[新たに開始]で、[追加情報]を選択し、[開始する]を選択してプロセスを開始します。」と書いています。このページの内容が修正される前にここにたどり着いた場合は、ここまできた操作が正にその手順であり、頭を抱えたことでしょう(画面4)。

画面4 画面4 Windows 10 バージョン1909の「新たに開始」(画面左)とWindows 10 バージョン2004の「新たに開始」(画面右)。バージョン2004は開始できない

 これは、サポート情報「https://support.microsoft.com/ja-jp/help/4012986/」が2020年6月25日に更新されるまでの状況です。更新後は「[新たに開始]は、2004より前のバージョンのWindows 10で利用できます。2004 以降のバージョンでは、「[新たに開始]の機能は、[このPCを初期状態に戻す]に移行されています。」という注意書きが追記されました。

 「このPCを初期状態に戻す」で「すべて削除する」を選択すると、「クラウドからダウンロード」と「ローカル再インストール」の選択肢が表示されます。そして前者の「クラウドからダウンロード」は、Windows 10 バージョン2004からの新機能です。新機能に誘導するために意図的に「開始する」ボタンが表示されなくなったようにも見えますが、現状に合わせて取り繕っているような気もします。なぜなら、英語のオリジナルページ「https://support.microsoft.com/en-us/help/4012986/」が更新されたのは、この問題を指摘する記事が公開された数日後の2020年6月17日だったからです。

 筆者はこの問題を知ってすぐに、Windows 10 バージョン2004の中から「新たに開始」を探し、そして見つけました。コマンドプロンプトやPowerShell、または「ファイル名を指定して実行」から「systemreset -cleanpc」を実行すると、Windows 10 バージョン2004でも「新たに開始」を実行できます(画面5)。一応、以前のバージョンと同じように再インストールできることまで確認しました。

画面5 画面5 「新たに開始」は、コマンドライン「systemreset -cleanpc」を実行することでも開始できる。この方法はWindows 10バージョン2004でも利用可能

さよなら「Microsoft Edge(EdgeHTML)」

 これはWindows 10 バージョン2004に限った話ではありません。Microsoftは2020年6月から、Windows 10 バージョン1803以降のWindows 10 HomeおよびPro(Pro for Education、Pro for Workstationsを含む)エディション向けに、Windows Update経由でChromiumベースの新しい「Microsoft Edge」(以下、Microsoft Edge《Chromiumベース》)の段階的な自動配布を開始しました。2020年6月時点では「2020-05 Windows 10 Version 1909向けMicrosoft Edge Update(x64またはx86ベースシステム用(KB4559309)」として自動配布されています(画面6)。

画面6 画面6 Windows Updateで配布されたMicrosoft Edge(Chromiumベース)のインストールと再起動の後に、最初にサインインするとこのような全画面の通知が表示される

 なお、EnterpriseおよびEducationエディションは当初自動配布の対象外であり、手動でダウンロードしてインストールするか、管理者が何らかの方法で配布するかしない限り更新されることはありませんでしたが、2020年8月以降、自動配布の対象となりました(Active DirectoryやWindows Server Update Services《WSUS》で管理されている場合を除く)。

 Windows 10に標準搭載されていたこれまでのMicrosoft Edge(EdgeHTMLベース)は、Windows 10 バージョン2004で開発終了扱いとなり、2020年秋にリリース予定の次期バージョン(通称、20H2)では最初からMicrosoft Edge(Chromiumベース)が標準搭載されることになることが発表されています。つまり、Microsoft Edge(EdgeHTMLベース)は、Microsoft Edge(Chromiumベース)に入れ替わった時点で“完全にお別れ”ということになります。また、Microsoft Edge(EdgeHTMLベース)は2021年3月9日以降、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなることも発表されています。

 Windows Update経由で更新されたMicrosoft Edge(Chromiumベース)は、アンインストールがサポートされません。手動でダウンロードしてインストールしたMicrosoft Edge(Chromiumベース)はアンインストールすることで、Microsoft Edge(EdgeHTMLベース)に戻すことができますが、よほどの互換性問題がない限り、開発終了扱いのブラウザに戻す必要性はないでしょう。

 Microsoft Edge(Chromiumベース)に入れ替わった時点で完全にお別れと言いましたが、例外があります。「Windowsサンドボックス」を利用可能であれば起動してみてください。その中にMicrosoft Edge(EdgeHTML)が見つかるでしょう(画面7)。Windows 10の次期バージョンでは、Windowsサンドボックスの中もMicrosoft Edge(Chromiumベース)になると予想しています。

画面7 画面7 Microsoft Edge(Chromiumベース)に入れ替わったとしても、Windowsサンドボックス内ではMicrosoft Edge(EdgeHTMLベース)は健在

 なお、隔離されたセキュアなブラウジング環境を提供するWindows 10の「Microsoft Defender Application Guard」(旧称、Windows Defender Application Guard)は、2020年1月の時点で既にMicrosoft Edge(Chromiumベース)に対応済みであり、Microsoft Edge(Chromiumベース)に入れ替えるとMicrosoft Edge(Chromiumベース)で動作するようになります。

さよなら「Windows Defender」?

 Windows 10 バージョン2004には「Windows Defenderウイルス対策」はもうありません。とはいっても、標準のウイルス対策機能がなくなったわけではありません。「Windows Defenderウイルス対策」は「Microsoft Defenderウイルス対策」に名称が変更されただけです(画面8)。

画面8 画面8 Windows 10 バージョン1909以前の「Windows Defenderウイルス対策」(画面左)は、バージョン2004から「Microsoft Defenderウイルス対策」に。他にも「Windows Defender」を冠する機能は「Microsoft Defender」に名称変更あり

 Microsoftは公式ドキュメント上の表記やクラウドサービスとして、2019年ごろから「Microsoft Defender」を使うようになっていましたが(macOSやLinux対応のサービスもあるので)、Windows 10のユーザーインタフェース(UI)に対する変更はWindows 10 バージョン2004からになります。

 定義ファイルも「Windows Defenderセキュリティインテリジェンスの更新プログラム」から「Microsoft Defenderセキュリティインテリジェンスの更新プログラム」に変更されています。定義更新の名称変更は、「Windows Defenderウイルス対策」を実行するWindows 10 バージョン1909以前に対しても、Windows 10 バージョン2004の正式リリース以降、「Microsoft Defender……」の名称で提供されています。

 先ほど、「Microsoft Defender Application Guard」(旧称、Windows Defender Application Guard)と書きましたが、これもWindows 10 バージョン2004からの機能名です。ただし、「Windows Defender……」の名称の全てが完全に「Microsoft Defender」の置き換わったわけではなく、例えば「Windows Defenderアプリケーション制御」(Windows Defender Application Control、別名:Device Guard)のようにポリシー設定の中に「Windows Defender」が残っていたりします。

 最後に、Windows 10の新バージョンはドキュメントの準備が整っていなくても、一般向けにリリースされ、後から情報が公開されたり(中にはつじつま合わせ的なものも)、不具合であることが判明したりします。そんなことに振り回されたくない場合は、機能更新プログラムが広く自動配布される段階になるまで待つべきかもしれません。

 例えば、Windows 10 バージョン2004におけるWindows Updateの改善については公式ブログでも紹介され、IT系メディアでも改善点として記事になりましたが、筆者はこの新機能の実装には重大な不具合があると思っています。

 詳しくは、以下の連載記事をご覧ください。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

Microsoft & Windows最前線2025
AI for エンジニアリング
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。