2021年10月に、Windows 10の長期サービスチャネル(LTSC)製品の最初のバージョン「Windows 10 Enterprise 2015 LTSB」のメインストリームサポートが終了し、5年の延長サポートフェーズに移行します。対象のデバイスがある場合は、次のシステムへの移行に向けて計画を始める良いタイミングです。
企業のクライアントPCのOSとして「半期チャネル(Semi-Annual Channel)」で提供される「Windows 10 Pro/Enterprise」は、半年ごとに新バージョンがリリースされ、「機能更新プログラム」によって継続的にアップグレードされます。そして、各バージョンはモダンライフサイクルポリシー下で18カ月(ただし、Enterprise/Education向けの秋リリースは30カ月)のサポート(「品質更新プログラム」の提供など)が提供されます。
Windows 10には、特殊な用途のデバイスを対象とした「長期サービスチャネル(Long Term Servicing Channel、LTSC)」で提供される製品「Windows 10 Enterprise LTSC」もあります。こちらは固定ライフサイクルポリシー下で、「5年」のメインストリームサポートと、その後「5年」の延長サポートで「計10年」の長期サポートが提供されます。Windows 10 Enterprise LTSCはリリース時の機能セットはそのままで、サポート期間中、品質更新プログラムが提供されます。Windows 10 Enterprise LTSCに、機能更新プログラムが提供されることはありません。
Windows 10 Enterprise LTSCは、機能などが時間の経過とともに変化しないことが重要な要件となる用途(例えば、医療システムや産業用制御システムなど)での使用が想定されたものです。企業の汎用(はんよう)的なクライアントPCのOSとして企業内に大規模に導入するようなものではありません。
本連載第38回で説明したように、「Microsoft 365 Apps」(旧称、Office 365 ProPlus)は1年前の2020年1月にWindows 10 Enterprise LTSCをサポートしなくなりました。ボリュームライセンス製品の「Office 2019」については、Windows 10 Enterprise LTSC 2019をサポートします(Office 2019の延長サポートフェーズが2年であることに注意)。
本連載第90回に説明したように、Windows 10 Enterprise LTSCの最初のバージョン、Windows 10 バージョン1507をベースに構築された「Windows 10 Enterprise 2015 LTSB」(LTSBは、LTSCの旧称、Long Term Servicing Branchの略)が「2021年10月」にメインストリームサポートを終了し、5年の延長サポートフェーズに移行します。
延長サポートフェーズの5年は、後継システムに刷新するための「移行期間」とすべきです。
Windows 10 Enterprise 2015 LTSBから、後継バージョンのWindows 10 Enterprise LTSCへのインプレースアップグレード(アプリやデータを引き継いでのアップグレード)は可能です(画面1)。
しかし、後継の「Windows 10 Enterprise 2016 LTSB」はWindows 10 バージョン1607(Anniversary Update)をベースに、最新の「Windows 10 Enterprise LTSC 2019」はWindows 10バージョン1809(October 2018 Update)をベースに構築されており、Windows 10 Enterprise 2015 LTSBとはOSの仕様から機能性、機能まで、多くの変更点があります。
そのため、Windows 10 Enterprise 2015 LTSBで問題なく動作していたアプリケーションが、後継バージョンのWindows 10 Enterprise LTSCでも同じように動作するとは限らないため、移行前には十分なテストを実施してください。
また、Windows 10 Enterprise 2015 LTSBで利用していたWindowsの機能が、後継バージョンのWindows 10 Enterprise LTSCでは既に廃止されている場合もあります。例えば、「ソフトウェアの制限のポリシー(SRP)」はWindows 10 Enterprise 2015 LTSBでは機能しますが、現在、Windows 10でこの機能はサポートされなくなったため、同様の機能を実現するには「AppLocker」を利用する必要があります。
以下のドキュメントで、Windows 10 Enterprise LTSCの各バージョンの新機能と、廃止または廃止予定のWindows 10の機能を確認できます。
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