身体性(Embodiment)とは?AI・機械学習の用語辞典

用語「身体性」について説明。物理的に身体が存在することによる効果を論じる問題を指す。現状のコンピュータ/人工知能は必ずしも身体性を有していないので、人間と同じようには知能を獲得できないとされる。

» 2021年02月10日 05時00分 公開
[一色政彦デジタルアドバンテージ]
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連載目次

用語解説

 認知科学や人工知能分野における身体性Embodiment)とは、物理的に身体が存在するか、もしくは存在することによる効果を論じる問題である。人間は、外界の環境と相互作用を持つ身体によって知覚や体験を得ることができ、そこからも学ぶことで高度な知能を獲得していくことが可能だと考えられる。一方、現状のコンピュータや人工知能は、そもそも人間と同じような身体が存在しないので、人間と同じようには知能を獲得できない、という点が課題となる。

図1 身体性のイメージ 図1 身体性のイメージ

 身体性はシンボルグラウンディング問題(=記号/言葉が実世界の意味に結び付いておらず、「人工知能が言葉を理解している」とはいえないとする問題)にも関係しており、コンピュータ/人工知能が人間のように言葉を理解するには身体性が不可欠とされている。

 知能に身体性が不可欠であることは、かなり昔から意識されてきた。より具体的になったのは、まずは認知科学の分野である。1980年代にロドニー・ブルックス(Rodney Allen Brooks)氏(iRobot共同創業者としても有名)が身体性を有するロボットを提唱し、1990〜2000年代にはロルフ・ファイファー(Rolf Pfeifer)氏などが人工知能における身体性の重要性を主張した。そういった発展を引き継ぎ、人工知能を含めた各学術分野(神経科学や、心理学、言語学、自律エージェント設計、哲学など)にも横断的な研究分野として身体性認知科学Embodied cognitive science)も生まれている(参照:1999年のオピニオン記事「An Embodied Cognitive Science?」)。ディープラーニングが登場して人工知能が注目されることで、あらためて身体性の問題が強く意識されるようになり、身体性を有する人工知能(Embodied AI)研究の重要性が叫ばれている。

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