システムの内製化を進める手段としてローコード開発が注目を集めているが、ただローコード開発ツールを導入するだけで自社の内製化が進むわけではない。ではどうすればよいのだろうか。IDC Japanの入谷光浩氏に話を聞いた。
システムの内製化を進める手段として「ローコード開発」を取り入れる企業が増えつつある。ローコード開発に必要なツールを導入することで開発速度を上げることができたり、コーディングの知識に乏しい非エンジニアの従業員でも開発に携わることができたりし、企業の内製化を促すと注目が集まっている。
しかしながら、ただローコード開発ツールを導入するだけで内製化が進むわけではない。どうすれば企業はローコード開発を用いて内製化を進めることができるのだろうか。ローコード開発で成果を獲得するポイントとは何なのか。IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ グループマネージャーの入谷光浩氏に話を聞いた。
――現在、日本企業においてローコード開発はどのくらい普及しているのでしょうか。
入谷氏 最初に弊社の想定しているローコード/ノーコード製品の定義について簡単に共有すると、コーディングせずにビジュアルをベースとしてアプリケーション開発ができるツールのことを「ローコード/ノーコードプラットフォーム」と表現しています。具体的な製品名でいうと、Microsoftの「PowerApps」や、サイボウズの「kintone」、Googleの「AppSheet」、Amazon Web Services(AWS)の「Amazon Honeycode」などです。
2020年8月に弊社が日本企業435社を対象に実施した調査(※)では、ローコード/ノーコードプラットフォームをすでに導入して開発に使っていると回答した企業は8.3%でした。PoC(概念実証)段階、導入でツールのテストや検証をしていると回答した企業は12.4%、導入の計画、検討をしていると回答した企業は23.9%と、普及の一歩手前の状況と見ています。ただ、テストや検証、計画や検討をしていると回答した企業を含めると40%を超えているので、もうすぐ普及期に入る見通しです。
(※)2021年 国内ローコード/ノーコードプラットフォーム市場動向:開発の民主化に向けて動き出した国内市場
――普及しているとまでは言えませんが、少なくない数の企業がローコード開発に注目しているのですね。企業がローコード開発を取り入れる背景としてはどのようなものが考えられますか。
入谷 導入の背景には2つ要因があると考えています。
1つ目は、内製化です。今までは、業務の効率化や自動化をするためにシステムやアプリを開発する際、従来はSIerに依頼して作ってもらうというやり方が普通のことでした。ただ、さまざまな要因によってビジネスを取り巻く環境がこれまでにない速度で変化しています。これにより従来通りのSIerに依頼してシステム開発をしてもらうという方式だと、ビジネスの変化を肌で感じている現場部門は遅く感じてしまうのです。ローコードプラットフォームを使うことで、「Microsoft Excel」のマクロを使えるようなITのスキルを持った現場部門の方が自分たちの部署で使えるようなツールを作ることができ、業務の効率化を図ることができるようになります。現場レベルのニーズの高まりがローコード開発の計画、検討につながっているのではないでしょうか。
2つ目は、コロナ禍の影響です。ローコードプラットフォームを導入することでリモートワークをする際に必要なツールや、感染者の情報共有など、変化の激しい状況の中で自分たちが求めるものをすぐに作ることができます。特に自治体での活用事例が多く見られました。今はワクチンに関する業務で活用されているローコードプラットフォームもあるでしょう。こういったさまざまな状況に1〜2週間の単位でアプリやシステムを開発して対応できるというのがローコードプラットフォーム導入の促進要因になっていると思います。
――ローコード開発のメリットの一つとして内製化を挙げられていました。企業の動きとして、内製化の方向にかじを切る、あるいは切りたいと考える企業は増えつつあるのでしょうか。
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