「単体」とか「結合」とか日本のIT用語はちょっと何言ってるか分からないGo AbekawaのGo Global!〜Michele_Ercoli編(2/3 ページ)

» 2021年06月28日 05時00分 公開

興味がある、NARUTOもある、恋人もいる。もう日本に行くしかない

阿部川 20歳のときに来日されました。「20歳の若者が、たった一人で、NARUTO見たさに日本に来た」ということですか?

ミケーレ氏 いえいえ、NARUTOのためだけではないですよ(笑)。ロンドンに留学していた日本人の恋人がいたのですが、恋人が日本に戻ることになり、「では自分も」と日本に行くことに決めたのです。もともと日本に興味があって、NARUTOも好き、恋人も日本人。全部がうまくつながった感じです。

画像 来日直後ミケーレさん。恋人とアニメが大好き

阿部川 最初は仕事もない状態ですよね。よく決心されました。

ミケーレ氏 そうですね。いきなり仕事を見つけるのは大変だろうと思ったので、まずは6カ月間の短期留学で語学学校に通いました。日本に来る前にイタリアで1年ぐらい働いていて貯金もあったので、お金の心配はしていませんでした。

阿部川 イタリアでは、どんな仕事をしていたのですか。

ミケーレ氏 システムの開発が多かったですね。在庫管理やWebサイトの開発、就職支援システム作成などをしました。いろいろなプロジェクトの現場に行っていたので、開発だけでなくネットワーク管理やヘルプデスクの仕事もしました。ある会社の社員として、他の会社に派遣される形式です。

阿部川 なるほど。現在所属されているPE-BANKでの働き方のように、いろいろな仕事があって、そこに出向く感じですか。

ミケーレ氏 はい、そうです。

阿部川 ミケーレさんはフリーランスエンジニアですが、外国籍の人が日本で働くに当たって最初からフリーランスを選ぶのは珍しいと思います。なぜ、フリーランスという働き方を選び、今も続けているのでしょうか。

ミケーレ氏 イタリアでしていた仕事も客先に出向いてする仕事だったので、仕事の内容は変わらないと考えていました。フリーランスという働き方を不安定だと考える人もいるかもしれないけれど、私はそう思っていません。案件が終わっても次の案件を探せばいいし、自分のスキルに自信がありますから次の案件も必ず取れると思っています。

阿部川 雇用形態というよりも、スキルがあれば仕事は必ずあるはずだから、不安に思う必要はないということですね。

ミケーレ氏 そうですね、後は自信。派遣先の面談などで他のエンジニアを見ますが、うまく話せなかったり、スキルシートを説明するだけだったりする人がいます。面談では人間性の部分が見られると思いますので、しっかりと自信を持って話すことも重要だと思います。

ここが変だよ日本の文化

阿部川 スキルと自信は重要ですね。ちなみに今までの仕事で一番難しかったことは何でしょうか。

ミケーレ氏 そうですね、日本のIT用語を理解することです。日常会話はできたのですが、日本のIT用語をあまり知らなくて、最初の案件では何を言っているのか全く分からなかったんです。いろいろあるじゃないですか。「単体テスト」とか「結合テスト」とか「基本設計」とか。何だろうと。

阿部川 日本語になってしまっているIT用語はややこしいですよね。片仮名だったり、日本語になっていたり。今でも苦労されますか。

ミケーレ氏 さすがに今は慣れました。

阿部川 イタリアにいたときはイタリアのIT用語を使っていたのですか。

ミケーレ氏 はい。ただ、最近は全部英語でやっています。インターネットで技術情報を調べても全部英語だし、英語にした方が楽だと感じるようになりました。

画像 リラックスモードのミケーレさん

阿部川 ITは英語の情報が早いので、英語でやった方がいいですよね。英語で苦労したことは、あまりないですか。

ミケーレ氏 最初は興味がなくて、高校のときは他の成績が全部良かったのに英語だけ悪かったんです。でも、先生に相談してからは「将来のことを考えると英語は大切だ」とやる気になりました。妻とも最初は全部英語で話していたのですよ。

阿部川 先生のおかげですね。勉強はどのようにされていたのですか。

ミケーレ氏 テレビのドラマを見て覚えました。日本語もアニメで学びましたし、私は聞いて学ぶ方が性に合っているようです。

阿部川 それは良い方法だと思います。私の友人の外国人たちも、ほとんどアニメで日本語を勉強しています。言葉はアニメでだいぶ鍛えられたようですが、文化についてはどうでしょうか? 日本の文化でイタリアと違うと思う部分はありますか?

ミケーレ氏 文化かどうかは分かりませんが、通勤ラッシュの電車はびっくりしましたね。

阿部川 イタリアでは通勤であんなに人が移動することはありますか。

ミケーレ氏 中心部ではあるかもしれません。でも、それに比べても東京はやばいですね(笑)。自分だったらちょっと早く出て次の電車を待つんですけれど。

阿部川 他にも「文化の違い」を感じるところはありますか? 例えば納豆は食べられましたか。

ミケーレ氏 食べられません(笑)。他には豆腐ですね。食べられますけど、あんまり味がしないのでおいしいとは思いません。イタリア料理は味が濃いので……。

阿部川 なるほど、それは面白いですね。

「戸惑うこともあるけどすぐ慣れちゃいます」

阿部川 現在の仕事について教えてください。飲食店向けの管理システム開発と伺いましたが。

ミケーレ氏 それはもう終わった案件ですね。今はアパレル向けの管理システムやECサイトのバックエンド開発などをしています。

阿部川 そうなのですね。コロナ禍で仕事の仕方は変わりましたか。

ミケーレ氏 在宅勤務になりました。テレワークは性格には合っているのですが、ソースコードのレビューをビデオ会議でやるのは大変です。コミュニケーションが取りにくいからです。まぁ無理というわけではないので、やっていくしかないですね。

阿部川 日本のエンジニアと仕事をしていて、イタリアとは何か違うなとか、うまくいかないなとか思うことはありましたか。

ミケーレ氏 仕事の進め方、コミュニケーションの取り方など結構違うと思います。私の印象では、日本は手順書をベースにして何かやることが多いけれど、イタリアではそういったことはなくて「取りあえず動けばいい」という感じです。そうするとトータルでかかる時間が全然違ってきますよね。

阿部川 イタリアはスピードを優先して「動くものをまず作る」なのですね。もし問題があればそのとき直せばいいといったところでしょうか。そう考えると日本は真逆かもしれません。きちんと動くかどうか、たくさん試験をしますね。そんな日本のやり方に少し戸惑ったと思いますが、もう慣れましたか。

ミケーレ氏 最初の仕事で全部慣れちゃいました(笑)。

阿部川 ミケーレさんは日本に順応する力が早いですね。なぜそんなにすぐ溶け込めるのでしょうか? イタリア人はよくしゃべるからだとか、「マンジャーレ、カンターレ、アモーレ」(食べて歌って恋をして楽しく過ごそうという生き方)だからだとか、何か理由があるんでしょうか。

ミケーレ氏 うーん、そうですね……。イタリア人は大勢で出掛けて騒ぐのが好きなので一人でいることはそれほどありませんが、私はそういった「イタリア人っぽい行動」があまり好きではありません。でも日本の人とはよく話せるんです。日本になじみやすいのは、もしかしたら前世が日本人だったからかもしれません(笑)。

阿部川 きっと日本向きの性格なのですね。最近はどんなことに興味がありますか。やはりアニメでしょうか。

ミケーレ氏 アニメは見ていますよ。最近だと「僕のヒーローアカデミア」ですかね。妻も興味のあるアニメは一緒に見てくれます。音楽も好きですね。日本のアーティストだと「ONE OK ROCK」が好きです。

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