Windows 11も利用可能な「Windows 365」が正式にサービスをスタート、その中身は?Microsoft Azure最新機能フォローアップ(152)

Microsoftは、「Windows 365 Cloud PC」のサービスを正式に開始しました。Windows 365 Cloud PCは、Windows 10とWindows 11(2021年後半リリース予定)に正式に対応した、新しいながら技術的には実績のある「サービスとしてのデスクトップ」です。

» 2021年08月10日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。

「Microsoft Azure最新機能フォローアップ」のインデックス

Microsoft Azure最新機能フォローアップ

Windows 11にも対応予定のWindows 365 Cloud PCとは?

 「Windows 365 Cloud PC」は、「Azure Virtual Desktop」(旧称、Windows Virtual Desktop)をベースに構築された新しい「サービスとしてのデスクトップ」(Desktop as a Service、DaaS)です。2021年7月中旬に発表され、発表時の予告通り、2021年8月2日(米国時間)から正式にサービスの利用が可能になりました。

 Windows 365 Cloud PCをひと言で表すとしたら“月額サブスクリプションで利用できるクラウド上の最新のWindows(社員個人用デスクトップ)”です(画面1)。

画面1 画面1 Windows 365 Cloud PC(Businessエディション)にWebブラウザで接続したところ

 Windows 365 Cloud PCは常にクラウド上で稼働しており、必要時に再接続して業務を継続できるため、テレワークのソリューションとして期待されています。また、2021年後半にリリース予定の「Windows 11」はハードウェア要件が厳しくなり、多くの企業クライアントPCがアップグレードできないことが予想されています。Windows 365 Cloud PCではWindows 11が利用可能になる予定で、そうしたレガシーなクライアントPCに最新のデスクトップとアプリ環境を提供することもできます。その他、さまざまな利用シナリオ(例えば、一時的なWindows PCとして利用など)のために簡単かつ素早く導入できます。

Windows 365の特徴その1:明朗会計

 Windows 365 Cloud PCのベースとなっているのはAzure Virtual Desktopですが、Azure Virtual DesktopにはないシンプルさがWindows 365 Cloud PCの特徴です。シンプルさの一つは、明朗な料金設定です。

 Azure Virtual Desktopは利用する仮想マシンのサイズなどから月額料金を見積もる必要がありますが、Windows 365 Cloud PCは事前に用意された基本プランから固定の月額サブスクリプションを選択して利用できます。

 Azure Virtual Desktopは、「Windows 7 Enterprise」「Windows 10 Pro/Enterprise(シングルセッション)」「Windows 10 Enterpriseマルチセッション」「Windows Server(マルチセッション)」のVDI(仮想デスクトップインフラストラクチャ)環境を構築可能ですが、Windows 365 Cloud PCは、Windows 10とWindows 11(正式リリース後)のシングルセッション(1ユーザーに1 Cloud PC)に対応します。

 エディションとしては、300ユーザーまでの「Windows 365 Business」とユーザー数に上限のない「Windows 365 Enterprise」の2つが用意されています。基本的なプランは「Basic」「Standard」「Premium」の3つで、1ユーザーからあらゆる規模の企業で利用することができます(その他のプランもあり)(表1)。

プラン スペック 月額料金/1ユーザー
Basic 2vGPU、4GB RAM、128GBストレージ 4210円
Standard 2vGPU、8GB RAM、128GBストレージ 5570円
Premium 4vGPU、16GB RAM、128GBストレージ 8970円
表1 Windows 365 Cloud PCの料金プラン(Business/Enterpriseエディション共通)

 発表当初は、Azure Virtual Desktopを利用する場合と同様、WindowsクライアントOSのクラウドへのデプロイとアクセスのためのライセンス(Windows 10 Enterprise E3/E5またはWindows VDAまたはこれらを含むサブスクリプションライセンス)が必要とされていましたが、Windows 365 Businessの方にはその要件がありません(前提ライセンスはなく、ユーザーライセンスとしてのWindows 365 Businessライセンスだけで利用可能)。また、Windows 365 BusinessをWindows 10 Proライセンスのデバイスから利用する場合は、月額割引料金(日本の場合は500円)が適用されるという特典も提供されます。

 Windows 365 Enterpriseは「Microsoft 365」サブスクリプションにアドオンすることが想定されており、「Windows 10 Pro」「Microsoft Endpoint Manager」「Azure Active Directory P1」および「Microsoft Azure(仮想ネットワークに必要)」のサブスクリプションが必須となります。これらはWindows 365 Enterpriseの使用料金には含まれません。また、これらはMicrosoft 365 F3、Microsoft 365 E3、Microsoft 365 E5、Microsoft 365 A3、Microsoft 365 A5、Microsoft 365 Business Premium、Microsoft 365 Educationなどに含まれます。

 Windows 365 Enterpriseは、クラウドリソース(コンピューティング、ストレージ)を月額サブスクリプションで利用可能です。Windows 365 Enterpriseと同様、ユーザー単位のライセンス(Windows 10 Enterprise E3/E5など)を別途必要とするAzure Virtual Desktopは、クラウドリソースの使用料金だけで利用できます。

 そのため、利用環境(リソース使用量)によってはWindows 365 Enterprise Cloud PCよりもAzure Virtual Desktopの方がコスト的に有利になる可能性があります。Windows 365 Cloud PCは固定価格で利用できるのに対して、Azure Virtual Desktopは徹底的なサイジングによるコストの最適化が可能です。大量のデスクトップを高度にカスタマイズしたり、業務アプリを含めたりする場合も、Azure Virtual Desktopの方が柔軟に対応できるでしょう。

Windows 365の特徴その2:徹底してシンプルな導入

 Azure Virtual DesktopとWindows 365 Cloud PCは、どちらもAzureの仮想化基盤を利用したVDI環境ですが、Windows 365 Cloud PCはセットアップが徹底してシンプルであることが特徴です(そのため柔軟性が犠牲になっている部分もあります)。

 Azure Virtual Desktopの場合、「Azureポータル」を使用したホストプールの作成、仮想マシンの展開、仮想マシンのAzure ADへの参加設定、Azure Virtual Desktopへの登録など、導入にはさまざまな作業が必要ですが、Windows 365 Cloud PCはその大部分が自動化されています(利用者からは隠されています)が、最終的なエンドユーザーのエクスペリエンスに大きな違いはありません。

 Windows 365 Businessは、サインアップして数クリックで簡単にデプロイできます。最初の1台は30分程度でデプロイが完了し、HTML5対応のWebブラウザ(前出の画面1)または「Microsoftリモートデスクトップアプリ」(Windows、macOS、iOS、またはAndroid版)からアクセスできます。マルチディスプレイなど、最大限のエクスペリエンスを得るには、Microsoftリモートデスクトップアプリの利用をお勧めします(画面2)。

画面2 画面2 Microsoftリモートデスクトップアプリによる接続。Windowsへの言語の追加、Office言語パックの追加により日本語化が可能 

 Azureの仮想化基盤が利用されていることを意識することは全くありませんし、仮想化の知識も不要です。

 なお、Windows 365 Cloud PCで提供されているイメージは、Windows 10 Enterprise(バージョン2004以降)の英語版ですが、言語の追加やシステムロケールの変更で完全に日本語化することが可能です。

 また、Windows 365 BusinessのイメージにはMicrosoft 365のOfficeアプリがプリインストールされていますが、商用目的で利用するには別途ライセンス(Microsoft 365サブスクリプションまたはリテール版のプロダクトキー)が必要です。こちらもOfficeの言語パックをインストールすることで日本語化できます。詳しくは、以下の記事を参考にしてください。

 Windows 365 EnterpriseはAzure ADの組織ユーザーにライセンスを割り当てるだけで、自動的にWindows 365 Enterprise Cloud PCが準備され利用可能になります。ただし、オンプレミスのActive DirectoryとAzure ADの「Azure AD Connect」によるハイブリッド構成のセットアップ(ハイブリッドAD参加のために必須)やAzure仮想ネットワークの作成、プロビジョニングポリシーの作成といった、Windows 365 Businessでは不要な事前準備が必要になります。

 オプションでカスタムイメージを使用したデプロイが可能であり、デプロイ後はオンプレミスの物理PCを管理するのと同じように、Microsoft Endpoint Managerの「Microsoft Intune」で更新やアプリの配布、セキュリティを管理できます。

 Windows 365 Business/Enterpriseのどちらも、「プランと価格」ページから2カ月間無料試用版を試すことができます。Windows 365 Businessの方は、クレジットカードの情報(2カ月間は請求はありません)だけで試用を開始できます(画面3)。

画面3 画面3 Windows 365 Businessの2カ月無料試用版へのサインアップ。前提のライセンス要件はなく、クレジットカード情報だけで試用できる

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

Microsoft & Windows最前線2025
AI for エンジニアリング
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。