Gartnerは4つのトレンドが、近い将来のAIのイノベーションを促進するという見通しを示した。「責任あるAI」「スモールデータとワイドデータのアプローチ」「AIプラットフォームの運用化」「データ、モデル、コンピュートリソースの効率利用」だ。
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Gartnerは2021年9月7日(米国時間)、先ごろ発表した「Hype Cycle for Artificial Intelligence, 2021」(AIのハイプ・サイクル:2021年)に含まれる4つのトレンドが、近い将来のAIのイノベーションを促進するとの見通しを示した。
4つのトレンドとは、「責任あるAI」「スモールデータとワイドデータのアプローチ」「AIプラットフォームの運用化」「データ、モデル、コンピュートリソースの効率利用」だ。
Gartnerのシニアプリンシパルリサーチアナリスト、シュバンギ・バシスト氏は、次のように述べている。「AIイノベーションのペースは速い。ハイプ・サイクルにある平均を上回る数の技術が2〜5年以内に、広く普及しようとしている。エッジAIやコンピュータビジョン、意思決定インテリジェンス、機械学習(ML)がいずれも数年以内に、市場を変革するインパクトをもたらしそうだ」
AI市場は進化を続けており、AIイノベーションの多くが、ハイプ・サイクルの「黎明(れいめい)期」に位置している。Gartnerの定義によれば、黎明期は技術のライフサイクルの中で、「大きな注目が集まるものの、多くの場合、まだ使用可能な製品が存在せず、実用化の可能性が証明されていない」フェーズを指している。
このように新しいイノベーションが続々と生まれている背景には、現在のAIツールの機能を超えた特定の技術機能を求めるエンドユーザーが多いという市場動向がある。
Gartnerは近い将来のAIイノベーションを促進すると予想した4つのトレンドについて、次のように説明している。
Gartnerのリサーチバイスプレジデント、スベトラナ・シクラー氏は、「AI技術の信頼や透明性、公平性、可監査性の向上が、幅広いステークホルダーにとってますます重要になっている。データにバイアスがかかっていたとしても公平性を実現し、透明性や説明可能性を実現する方法が進化していったとしても信頼を獲得し、AIの確率的な性質に対処しながら規制順守を確保するために責任あるAIが役立つ」と述べている。
Gartnerは2023年までに、AIの開発やトレーニングのために採用される人員は全て、責任あるAIに関する専門知識と経験を要求されるようになると予想している。
AIの取り組みを成功させるための基盤を形成するのはデータだ。スモールデータとワイドデータのアプローチは、より強力な分析とAIを実現し、組織のビッグデータへの依存を低減し、より適切で包括的な状況認識を可能にする。
Gartnerによると、2025年までに組織の70%はビッグデータから、スモールデータとワイドデータへと重点をシフトさせ、分析のコンテキストを増やすとともに、AIに必要なデータを減らすことが必要になる。
「スモールデータはより少ないデータで有用な洞察を提供する分析技術の応用に関わる。一方、ワイドデータは多様なデータソースの分析と相乗効果を実現する。2つのアプローチを組み合わせることで、より強力な分析が可能になり、ビジネス課題を360度の観点から総合的に捉えることができる」(シクラー氏)
AIをビジネストランスフォーメーションに活用することの緊急性と重要性から、AIプラットフォームの運用化が求められている。AIプラットフォームの運用化は、AIプロジェクトのコンセプトを実行に移し、AIソリューションを全社的な問題解決に適用することを可能にする。
「Gartnerの調査によれば、パイロット運用から本番運用に進むAIプロジェクトは半数しかなく、移行に必要な期間は平均9カ月であることが分かった。『AIオーケストレーションと自動化プラットフォーム』(AIOAPs)や、『モデルの運用化』(ModelOps)のようなイノベーションは、AIの再利用性やスケーラビリティ、ガバナンスを実現し、AIの導入と発展を加速させる」(シクラー氏)
AIの展開に関わるデータやモデル、コンピュートリソースの複雑さと規模の大きさを考えると、AIイノベーションでは、こうしたリソースを最大限効率的に利用する必要がある。
AI市場では、幅広いビジネス課題を効率的に解決できる先進技術として、「マルチエクスペリエンス」や「コンポジットAI」「ジェネレーティブAI」「トランスフォーマー」の注目度が高まっている。
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