要件定義から製造までまるっと一括で請け負ったベンダー。後だし要件に対応する義務はありや、なきや――?
IT開発を巡る裁判では、システムの要件――ベンダーがどのような機能をどこまで作るのか――についての争いの割合がかなり高い。本連載でも、そうした裁判の例を幾つも解説してきた。
ユーザー企業の「この機能を作ってくれるはずではなかったのか」というクレームに、ベンダーが「そんなことは約束していない」と反論をする。まさにIT訴訟の定番ともいうべきケースだ。アジャイル開発の割合が増えて開発中でもユーザーの要望を取り入れやすくなったといわれる今でも、こうした争いは後を絶たない。
今回取り上げるのも、「システムの要件の範囲」あるいは「契約の範囲」を巡る裁判だ。
簡単に説明すると、要件定義から開発までの全てを単一のベンダーが請負契約で行った。詳細設計中に要件の変更が入り、要件定義書を作り直した(新要件定義書)が、そこには想定されていなかった機能が含まれていた。
このプロジェクトは最終的には頓挫し、ベンダーは「失敗の原因は、新要件定義書に追加された契約外の機能実装を強要されたためだ」と主張している。対するユーザー企業は、「機能追加も当初契約の内であり、ベンダーが追加費用なしで対応するべき」と主張している。
通常であれば、ユーザー企業が要件を追加してスケジュールを乱したのが頓挫の原因と考えるところだが、このプロジェクトでは要件定義もベンダーが請負で行っている。
途中で変更された要件に無償で対応することは、ベンダーの責務なのだろうか。
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