ランカスター大学マネジメントスクールなどの研究チームは、欧州各国の退職者2000人以上の認知機能を調査し、退職後のインターネット利用が、認知機能テストでの高得点と関連していることを発見した。
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ランカスター大学マネジメントスクールは2021年9月20日(英国時間)、欧州各国の退職者2000人以上の認知機能を調査した結果、退職後のインターネット利用が、認知機能テストでの高得点と関連していることを発見した。ノルウェー科学技術大学(NTNU)やダブリン大学トリニティカレッジ(TCD)との共同研究による成果だ。
「Journal of Economic Behavior and Organization」で論文が発表されたこの研究は、「Survey of Health, Ageing and Retirement in Europe」(SHARE)という国際調査のデータを用いた。この調査は、高齢者の健康や職歴、社会経済状態に関する情報収集を目的に実施されてきたもの。
研究チームはSHARE調査の中で2013年と2015年に行われた認知機能テストの結果を分析した。対象者は2004年以降に退職したオーストリアやベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、イスラエル、スペイン、スウェーデン、スイスの2105人の高齢者だ。
2013年と2015年のSHARE調査では、調査参加者のインターネット利用やコンピュータスキル、現在の仕事や退職前の最後の仕事でのコンピュータ(またはタブレット)利用を調査しており、研究チームはその結果と認知機能テスト結果の相関を分析した。
認知機能テストとしては、単語記憶テスト(10個の単語を瞬時に記憶して暗唱し、5分後に再び暗唱するよう求める)の結果を用いた。
分析の結果、退職後にインターネットを利用している高齢者は非インターネットユーザーと比べて、記憶テストで記憶できた単語数が平均1.22単語多かったことが分かった。
ただし、インターネットを利用している退職者は、男性や高学歴者の割合が高く、年齢がより低く、退職後の期間がより短い傾向にあった。飲酒や喫煙の習慣がある人の割合も高かったものの、より健康である傾向も見られた。
論文の共著者であるランカスター大学マネジメントスクールのビンセント・オサリバン博士は「われわれの研究結果は、退職後のインターネット利用が、認知機能の低下ペースの著しい鈍化につながることを示している」と述べている。
同氏によると、この傾向は女性に顕著に見られるという。インターネットを日常的に利用している女性の退職者は、利用していない女性と比べて、テストで記憶できた単語数が2.37単語多かった。この傾向は男性も同様で、インターネットユーザーの退職者は、非インターネットユーザーよりも0.94単語多く記憶できた。
在職時にコンピュータを使っていた退職者は、退職後もコンピュータを使い続ける傾向が高く、そのおかげで、認知機能も相対的に高かった。
さらに、研究チームは次のことも明らかにした。
コンピュータ利用が一般的だった仕事(金融サービスなど)に就いていた退職者は、コンピュータがあまり使われていなかった仕事(教育など)に就いていた退職者と比べて、退職後もコンピュータを使い続ける傾向が高かった。
欧州各国でインターネット利用パターンは大きく異なり、例えばイタリアでは、インターネットを利用する退職者の割合は12%にとどまるが、デンマークでは60%を超えている。
論文の共著者であるダブリン大学トリニティカレッジのリクン・マオ氏は、次のように述べている。「われわれの研究は、退職してからが、認知機能にとって重要な期間であることを証明した。『コンピュータ利用が高齢者の認知機能を改善する』という見解は広く受け入れられているが、われわれは、退職前のコンピュータ利用は、退職後の認知機能の低下に、直接的には影響しないことを明らかにした」
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