コーチングから学ぶ、1on1の「聴く」技術あなたの1on1、独演会になってない?(2/4 ページ)

» 2021年12月08日 05時00分 公開
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アンチパターン:進捗確認

 一番ありがちなのは、1on1を業務の状況や進捗(しんちょく)についての確認会にしてしまうパターンです。マネジャーはメンバーに成果を出してもらうのが仕事ですから、メンバーの業務の状況が気になるのは当然です。しかし1on1という貴重な場で単なる進捗確認をするのは、とてももったいないことです。

 また、1on1で業務の状況を確認しなくてはならないということは、普段から業務に関する会話が足りていない、つまりマネジャーとしての仕事が足りていないという証拠でもあります。

 コーチングでは、題材として「重要だが緊急ではないこと」が適しているとされています。1on1でも同様に、日々業務に追われてゆっくり考えることができない問題について話題にできれば、より有意義な時間になると思います。

 1on1を効果的に行うためにも、業務の情報は日常的に収集しておきましょう。

アンチパターン:人生相談

 日常的に業務の情報が収集できていると、1on1ではより深く重要な話題を取り扱えます。例えば、メンバーの悩みや不安について。ここでハマってしまうアンチパターンは、その悩みや不安を解決しようとして、がっつりアドバイスを与えてしまうことです。

 目の前でメンバーが悩んでいたら、メンバーより業務においても人生においても経験を積んでいるマネジャーが自分の経験から答えを引っ張り出し、アドバイスとして与えることで問題解決しようとするのはとても理解できる心境です。

 ですが、1on1ではアドバイスを与えることより、相手に自分で考えを深め、自分で言葉にしてもらうことの方がはるかに重要なのです。そのプロセスを通じて悩みや不安に対して自分で立ち向かい、何らかの解決に自分でたどり着けるようにサポートすることこそが、メンバーの問題解決や成長につながるのです。

 それに、過去の経験から引っ張り出したアドバイスを押し付けられるのは、場合によってはとても重たくうっとうしい時間にもなりかねません。そんな経験が続いたら、メンバーは1on1に出てくることに抵抗を感じてしまうでしょう。

 そんな事態を避けるためにも、過去の経験はグッとしまい込んで、まずは話を聴くことを最優先にしましょう。考えて、話して、もう何も出てこない……というところまできたら、一番重要だと思うことを1つだけアドバイスする、ぐらいのバランスでちょうどいいのです。

@IT編集部Mさん。自宅で栽培したしいたけとのこと

アンチパターン:独演会

 「進捗確認」や「人生相談」と併発しがちで、かつ一番タチが悪く、でも一番よくあるアンチパターンが「独演会」です。

 マネジメントなんて仕事をしている人は、もともとしゃべりたがりな性格をしていることが多いように思います。1on1で自分が何かしゃべるターンになると、ついそこでスイッチが入ってそのまましゃべり続けてしまう。典型的な独演会のパターンです。

 1on1は、相手の言葉や考えを引っ張り出して、そこから成長や成果につなげていくための場です。そこでマネジャーがしゃべり続けてしまっては、本末転倒もいいところでしょう。

 「進捗確認」や「独演会」のアンチパターンも、根っこにあるのはこの「しゃべりたい」という欲求だったりします。成果を求めるマネジャーとして、年齢も経験も積んだ先輩として、しゃべりたいことはたくさんあるでしょう。そこをグッとおさえて、話を聴くこと、引き出すことに専念する。これが1on1では求められます。

コーチングに学ぶ「聴く」技術

 コーチングでは「聴く」ことと「問う」ことを繰り返し、対話を深めることで相手の目標達成をサポートします。ですから、「聴く」「問う」を効果的に行うための「技術」が既に形式知としてまとめられているのです。

 ここからは1on1をアンチパターン(特に「独演会」)から守り、相手との対話を深めるための基礎となる「聴く」技術として、「傾聴」「ペーシング」「アクノレッジメント」についてお話ししていきます。

傾聴

 「傾聴」って言葉、聞いたことあるでしょうか。聞いたことはあっても「相手の話を集中して聴くこと」ぐらいの認識で止まっちゃってる場合も多そうですが、実はいろいろ気を付けることがあるのです。ポイントを順番に確認していきましょう。

聴く>>>>>話す

 当たり前ですが一番大事なポイントです。さきほど紹介したアンチパターンは全て、これを意識することでかなり防げます。しかし、アンチパターンが生まれてしまう程度には難しいスキルでもあるのです。

 まずは大事なのは「黙って聴く」こと。相手の話を聴いてるようでも、しゃべりたがりの人はついつい自分の意見をはさんでしまいがちです。また、せっかちな人が話の結論が読めると先取りして口を出してしまう、というケースもあります。しかし日本語は文の後半でまるっと否定にひっくり返すことができますから、先回りは危険なのです。

 何か話したくなっても、「今は話すべきタイミングだろうか? 相手は十分話しただろうか? もっと引き出せないだろうか?」と自問自答してから話す、ぐらいでちょうどいいと思っておきましょう。

管理本部Iさん。ブラウンマッシュルームが似合うダンディさんです

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