コーチングから学ぶ、1on1の「聴く」技術あなたの1on1、独演会になってない?(4/4 ページ)

» 2021年12月08日 05時00分 公開
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アクノレッジメント

 アクノレッジメントとは「承認」のことです。ネットワークの知識や経験がある方には、「SYNパケットの返事として返ってくるやつ」といえばイメージできるでしょうか。

 「聴く」技術に分類していますが、アクノレッジメントはこちらから発信する情報です。相手を「承認」し、それを明確に伝えることで、より会話を引き出しやすくし、自発的な行動につなげていけます。

存在承認

 一番シンプルで、でも一番大切なのが相手の「存在」を承認することです。といっても許可を与えるような意味ではなく、相手の存在を認識し、尊重しているよというメッセージを送ることを指します。

 最も身近な存在承認は「あいさつ」です。「おはようございます」の一声は、実は相手の存在を認識していることを伝える重要なメッセージだったのですね。相手の方を見る、集中して聴く、相づちを打つ、など、今まで紹介してきたテクニックも、根っこの部分で存在承認につながっています。

 存在そのものへの承認から一歩踏み込んで、相手の能力や資質、経験を承認することも「存在承認」に分類されます。仕事を任せる、相談する、教えを請う、などは、相手にそれができるであろうという判断がないとできませんから、「尊重しているよ、認めているよ」という重要なメッセージになります。

成果承認、行動承認、成長承認

 成果、行動、成長の3つを承認することが、アクノレッジメントのもう1つの側面です。相手の変化を承認し、認識し、その変化を言語化して相手に伝えることがアクノレッジメントです。

 「成果、行動、成長を承認する」というと、「ほめて伸ばす」みたいなイメージを持ってしまいそうですが、称賛することやねぎらうこととアクノレッジメントはイコールではありません。

 アクノレッジメントは、相手の行動やそれに伴う変化を認識していることを客観的な言葉で伝えることで、もしかしたら相手も気付いていない変化に気付いてもらい、自信を付けたりさらなる成長につなげたりしてもらえます。

 「このプルリクエストのコードはきれいだな」「レビューの見落としに気付いたね」など、「ほめる」というアメの部分を取り除いて伝えるのは結構難しかったりします。うまくできるようになると、「変化に気付いてくれる」という信頼感を育てることができ、1on1での会話が広まったり深まったりする下地になりますので、意識してみましょう。

1on1とは「聴く場」だったのです

 1on1に生かせる「聴く技術」を3つ紹介しました。アンチパターンを思い出してみると明白なように、1on1はまず「相手の話を聴く」からスタートしなくてはなりません。相手の話を聴くためには、安心して話せる場を作らなければなりませんし、安心して話せる関係を構築しなければなりません。

 そこの人類、ただでさえ日々の業務に追われているのに、さらに1on1をやっていくのはしんどいなあ、などと思っていませんか?

 マネジャーの仕事は、最終的にはメンバーに成果を出してもらうことですから、1on1など丁寧に実施しなくても、成果さえ出ていれば問題ないという割り切りもあるでしょう。ですが、メンバーに持続的な成果を期待するのであれば、やっぱり安心して話せる信頼関係が必要だと思います。であれば、他の業務を整理してでも1on1の時間を捻出することは、マネジャーの大事な仕事ではないでしょうか。

 安心して話せる1on1の場を作るために、今回ご紹介したテクニックを活用してみてください。なんだったら、練習台として菌類に1on1を実施してくれてもいいんですよ?

社内写真部所属、営業本部Aさん。野生のきのこが似合うワイルドな男です
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