IBMは、Telumプロセッサを採用した「IBM z16」を発表した。トランザクションの実行中にAI推論が可能なオンチップAIアクセラレーターや、大規模な量子コンピュータが実用化された将来の脅威からもデータを保護するという耐量子暗号技術を備える。
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IBMは2022年4月5日(米国時間)、「IBM z16」を発表した。トランザクションの実行中にAI(人工知能)推論が可能なアクセラレーション機能を備える「IBM Telum」プロセッサを採用した。さらに、耐量子暗号技術を採用して、「大規模な量子コンピュータが実用化される将来も脅威からデータを保護できる」としている。
z16では、オンチップAIアクセラレーターによって、AI推論処理を1ミリ秒で実行できる。これは、1日当たり3000億回に相当する。こうした高速なAI処理は、運用データに基づく洞察によるビジネスローンや消費者ローンの審査の迅速化、小売業向けの詐欺や盗難に対するリスクのより適切なモデル化などを支援する。
また、不正行為が収益や消費者とのやりとりに与える影響に苦しんでいる金融機関において、決済前に高いリスクにさらされる取引やトランザクションの特定にも有効だという。
Morning Consultと実施した調査「2022 IBM Global Financial Fraud Impact Report」では、クレジットカード詐欺が最も一般的な詐欺のタイプだった。ところが従来のコンピュータでは、ディープラーニングモデルをリアルタイムで大規模に実行することは処理時間の関係で難しい。不正検出モデルが実行されているのは、大量のトランザクションの10%にも満たず、大半の不正は検出されていないという。
z16は、ハードウェアセキュリティモジュール「Crypto Express 8S」カードによって、従来の暗号化技術と耐量子暗号技術の両方を提供する。耐量子暗号とは、大規模な量子コンピュータが構築される将来も情報資産を安全に保つために、従来のコンピュータと量子コンピュータの両方による攻撃に対して抵抗性のあるアルゴリズムを特定することを意味する。
Crypto Express 8Sは具体的には、NIST(米国立標準技術研究所)のPQC(Post Quantum Cryptography:耐量子コンピュータ暗号)標準化プロセス中に最終候補として選択された耐量子暗号アルゴリズムを使用する「耐量子暗号API」を提供する。
セキュアブート機能も備え、悪意ある攻撃者が起動プロセスにマルウェアなどを注入してシステムを乗っ取ることができないようにした。
なお日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は、日本の顧客に向けて、「IBM Z and Cloudモダナイゼーション共創センター」を開設した。同センターでは、IBM Zのユーザーに向けて、幅広いツールや研修、リソース、エコシステムパートナーとの窓口を提供する。同センターを利用することで、「現在のIT資産を維持するための知見を得たり、IBM Z上で稼働する主要なアプリケーションとデータをハイブリッドクラウド環境にしていくための戦略を策定したりできる」としている。米国では、2021年12月に開設した。
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