安定性、低遅延性、高速性に優れる5Gのミッションは、今後訪れる労働人口の低下に対抗する「省人化」や人とロボットとの高度な協調による「人の可能性の最大化」などだ。だが、本格活用に至るまでには幾つかの課題がある。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
ローカル5Gの制度化、キャリア5Gのサービス開始から2年余りがたった。5Gネットワークはそろそろ、実証実験を行う第一段階から本格的に実用化する第二段階に進める頃合いだと思うのだが、それには2つの高い壁があると筆者は感じている。
企業ネットワークの未来を事例ベースで考える本連載。今回は、筆者の経験や先行企業の状況を踏まえて、5G活用のために乗り越えねばならぬ「2つの壁」を考察する。
5Gネットワークを作ったり実証実験をしたりしただけでニュースになるフェーズはもう終わった。今は5Gネットワークの成果を明らかにすべき段階だ。しかし、本格的な実用段階に進むには、高い2つの壁があると筆者は感じている。それは図1に示す「実利の壁」と「接続の壁」だ。
第一の壁は「実利の壁」だ。「なぜ5Gでなければならないのか」という理由付けが簡単ではないのだ。例えば後述するオムロンは、Wi-Fiで運用するモバイルロボットで世界中の企業に大きなメリットを提供している。Wi-Fiで十分な効果が得られているのに、なぜ5Gにしなければならないのだろうか。
5Gを適用した場合の効果を数値化することも簡単ではない。ローカル5Gは当初より安価になったとはいえ、導入コストがWi-Fiより高く、採算性が良いとはいえない。
第二の壁は「接続の壁」だ。5Gネットワークにモバイルロボットやセンサー、サーバなどを接続する適切なデバイスが少ないのだ。
本連載で再三書いているように、筆者はローカル5Gよりキャリア5Gを企業に推奨している。導入コストが少ないだけでなく、ユーザーが免許を取る必要がなく、専門知識も不要な上、サービスとして提供されるので陳腐化する心配がないからだ。しかし、キャリア5Gにも接続の壁はある。
キャリアは、モバイルロボットなどの産業用機器の接続に適した5Gルーターを用意していないのだ。産業用の5Gルーターは、ルーター本体をロボットの内部に設置し、アンテナは外部に出すという使い方をする。しかし、アンテナ端子があってアンテナを外部に出せるルーターは限られている。他にも産業用の5Gルーターには、コンシューマー用のルーターとは違うさまざまな要件が求められる。
5Gにつなげられるデバイスが見つかっても、パフォーマンスが出ない、使い勝手が悪い、という問題もある。スマートフォンの半分程度の速度しか出ないデバイスもあるのだ。
5Gで先行する企業の状況はどうだろう。JFEスチール データサイエンスプロジェクト部主任部員 四辻淳一氏に、5Gの活用状況をインタビューした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.