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» 2022年06月01日 05時00分 公開

アジャイル開発の「透明性」を参考に、自分の状況を「見える化」する両立したいんです(1/3 ページ)

4人家族の家事育児をワンオペで担うことになった陽太郎さんは、エンジニアリングマネジャーとして学んできたアジャイルの知識を活用して、自分の状況を見える化することにした。

[高橋陽太郎(リクルート),@IT]

 こんにちは、リクルートでエンジニアリングマネジャーをしている高橋陽太郎です。

 エンジニアリングの知識と経験を総動員してワンオペ家事&育児をカイゼンしていく連載「家事場のシスぢから」、前回は、上司をはじめとしたステークホルダーにアジャイル開発での知見を生かして助けを求めました。そこで無事に協力をしてもらえることにはなったものの、差し込みが多く緊急対応もありがちなマネジャーの仕事で実際両立はできるのか。今回はこの点を掘り下げます。

透明性はとても大切だという話

 ワンオペ家事&育児と仕事の両立をする上で、自分の状況と周りの状況を正しく認識しておくことははじめの一歩として重要です。透明性は、開発現場だけでなくさまざまな場所で重視されています。アジャイル開発でも同様に透明性を非常に重視しており、「スクラムガイド」(※1)には下記の記述があります。

 創発的なプロセスや作業は、作業を実行する人とその作業を受け取る人に見える必要がある。

 スクラムにおける重要な意思決定は、3つの正式な作成物を認知する状態に基づいている。透明性の低い作成物は、価値を低下させ、リスクを高める意思決定につながる可能性がある。

 透明性によって検査が可能になる。透明性のない検査は、誤解を招き、ムダなものである。

良い部分だけでなく悪い部分も透明性は大事

 透明性の重要さを確認したところで、もう少し透明性という用語を深掘りします。透明性とは、「事実をもとに状況が分かっている」ということです。スクラムの創始者であるKen Schwaberの興味深い動画を紹介します 。

 13分33秒からのパートで、「正直優秀とはいえないメンバーが集まり、テクニカルスキルもチームワークもビジネスドメインも理解せずスクラムを実践したら、毎回のスプリントで『ゴミ』ができる」と話して会場の笑いを誘っています。その上で、「でもそれは良いことだ。現在地がはっきり分かっていること、これこそが透明性なのだ」と説きます。

 このように、良しあしの判断は抜きにして、起きていることをあるがままにまずは見えるようにすることは、ポイントです。

他者とのコラボレーションにおける透明性

 ここまで書いてきた透明性は、主に仕事の内容や成果物を対象にしました。しかし透明性は、より広範囲な具象を対象にでき、実際には表には出てこない内容についても必要になります。

 具体的には、他者とコラボレーションやコミュニケーションする場合です。

 これを分かりやすくあぶり出したものが、Agile2016でのBecky Winantの「How Collaboration Works or Doesn't」というセッション(※2)です。私は現地で聴講し、非常に印象深かったことを覚えています。

 セッションでは、参加者から4人のメンバーを募って、それぞれにある「コンテキストを持ったロール」を与え、開発現場のロールプレーイングをしてもらいました。

 その中で目を引くのは右端の男性。明らかに会話量が少なく、心ここにあらずといった感じで、とてもミーティングに参加しているとはいえない状況でした。ロールプレイが終わると、会場から感想タイムがあり、「彼は会話参加している感じではなかった」という意見がちらほら出ています。

 そしてネタばらし。メンバーがそれぞれのロールを読み上げます。右端の男性は、「数カ月前に産まれたばかりの子どもの夜泣きがひどく、昨日もほとんど眠れなかった。そのためいますごく眠くて、とてもじゃないがミーティングに集中できるようなものではない」ということでした。これを聞いて会場は「なるほど」という空気に包まれました。

 コミュニケーションする場面では、こうした個々人の置かれている状況は通常見えません。このセッションではそうした状況が見えにくいことを前提とし、その上で発せられる言動を受け取り、意味付け、良しあしを判断し、反応するときに先入観を持たないように気を付けるべき、ということを結論としていました。

 もちろんそれは重要ですが、同時にこういったコミュニケーションの場でも自分の置かれている状況を意図的に見える化(※3)することが、円滑なコラボレーションを促進すると私は捉えました。

 このように、他者とのコラボレーションでも透明性は重要です。

※3 透明性を担保することを、「透明化」「可視化」「見える化」などと呼びます。厳密にはそれぞれ意味合いが異なるとされていますが、本稿ではひとまとめに「見える化」という表記で統一しています

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