2022年9月初めにMicrosoft Edgeの安定版(Stable)メジャーバージョン「105」がリリースされました。このバージョンになって、とても気になるところがあるんです。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
Chromiumベースの「Microsoft Edge」は、同じChromiumベースの「Google Chrome」と同様に、4週間のメジャーリリースサイクルでリリースされています。
本稿執筆時点での最新版となるMicrosoft Edgeバージョン105の気になるところとは、「ユーザーエージェント(User Agent、UA)」の文字列です。Microsoft EdgeのUAは、アドレスバーに「edge://version」と入力することで簡単に確認できます。Microsoft Edgeバージョン104(および以前のバージョン)は以下のような文字列でした(画面1)。
Mozilla/5.0 (Windows NT 10.0; Win64; x64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/104.0.5112.102 Safari/537.36 Edg/104.0.1293.63
Microsoft Edgeバージョン105に更新後、UA文字列は以下のように変化しました(画面2、画面3)。
Mozilla/5.0 (Windows NT 10.0; Win64; x64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/105.0.0.0 Safari/537.36 Edg/105.0.1343.27
Mozilla/5.0 (Windows NT 10.0; Win64; x64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/105.0.0.0 Safari/537.36 Edg/105.0.1343.33
……
何かおかしくないですか? これまでバージョン105に対して複数のセキュリティおよびバグ修正のアップデートがリリースされていますが、いずれもUA文字列中の「Chrome/105.0.0.0」はそのままです。
UA文字列は、Webサーバに対してクライアント側がブラウザの種類やバージョン、OS、プラットフォームなどの情報を提供します。Webサーバ側は、それらの情報に基づいてWebページを最適化します。UA文字列が利用されるとしても、Chromiumの細かいマイナーバージョンまで取得して何かしら処理するようなWebサイトはまれなので、Webページの表示に影響はないとは思いますが、とても気になって仕方がありません。
セキュリティの観点からいうと、これまでは、このUA文字列から対応するChromium/Google Chromeのバージョンを知ることができました。「Chrome/105.0.0.0」では、詳細なセキュリティ更新がどこまで含まれているのか判断できません。Microsoft Edgeバージョン105になってから、Google Chromeリリース情報と、Microsoft Edgeのリリース情報を付き合わせて追い掛けなければ正しく判断することができなくなりました。
例えば、2022年9月2日(日本時間、以下同)にリリースされたMicrosoft Edgeバージョン105の最初のバージョン「105.0.1343.25」は、8月31日リリースのGoogle Chromeバージョン「105.0.5195.54」と考えてよいでしょう。Microsoft Edgeのリリース情報によると、Chromiumプロジェクトの最新のセキュリティ更新に加え、「CVE-2022-38012」というMicrosoft Edge固有のセキュリティ更新を含んでいるそうです。
2つ目の2022年9月4日リリースのMicrosoft Edge「105.0.1343.27」は、「CVE-2022-3075」の修正を含んでいることから、9月3日リリースのGoogle Chromeバージョン「105.0.5195.102」と同じ更新されたChromiumエンジンいうことになります。
3つ目の2022年9月9日リリースのMicrosoft Edge「105.0.1343.33」は、Chromiumエンジンの更新は含まれず、Microsoft Edgeのバグとパフォーマンス問題の修正でした。Google Chromeはその後、9月14日のセキュリティ更新「105.0.5195.127」がリリースされ、9月28日には次のメジャーバージョン106がリリースされています。
Google Chromeバージョン「105.0.5195.127」に対応するMicrosoft Edgeは、9月16日の「105.0.1343.42」で、次のメジャーバージョン106までに、Microsoft Edge固有のバグとパフォーマンス問題の修正バージョンがバージョン105向けにリリースされています。
Google Chromeは、Chromiumエンジンの更新リリースと同日、更新バージョンがリリースされますが、Microsoft Edgeはタイムラグがあり、数日後のリリースとなります。また、Microsoft Edge固有の更新リリースが度々あります。そのため、UA文字列から簡単にGoogle Chromeのバージョンが判断できたバージョン104以前と比較すると、確認がとても面倒になりました。
Microsoft Edgeバージョン106で改善されることを期待していましたが、2022年10月4日にリリースされたバージョン106の「edge://version」も「106.0.0.0」でした。
その時点で既にリリース済みのGoogle Chromeバージョン「106.0.5249.62」なのか「106.0.5249.91」なのか、はっきりさせるには、Microsoft EdgeとGoogle Chromeのそれぞれの対策済みCSV情報まで調べる必要があります。Google Chromeより先にMicrosoft Edgeの次のセキュリティ更新が出るかどうかでも判断できるかと思いましたが、その後、Google Chromeの3つのセキュリティ更新がリリースされる間に、Microsoft Edgeは2つのバグとパフォーマンス問題修正の更新プログラムしか出ていません(2022年10月13日時点)。
2023年3月にリリースされたMicrosoft Edge バージョン112以降、「edge://version」に「Chromiumバージョン」の項目が追加され、Google Chromeのセキュリティ更新バージョンとの対応が分かりやすくなりました。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.