GPT-3をベースに開発されたチャットbot「ChatGPT」が話題だ。これが進化すれば、Googleはいらなくなるかもしれない――そう考える5つの理由。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
「これ、Googleいらなくなるかも?」
AIチャットbot「ChatGPT」にいろいろ質問しながら、筆者はこう思いました。
ChatGPTは、知りたいことを自然文で入力すれば、対話形式で答えを返してくれるAI(人工知能)です。2022年11月30日にプレビュー公開されると、わずか6日で100万ユーザーを突破。人間並かそれ以上のレベルの回答に、世界が驚嘆しています。
「AIとは?」「人生の意味は?」……どのような質問にも答えようとするのですが、回答には間違いも混じります。プログラミング関連Q&AサイトのStack Overflowは、ChatGPTで生成した回答に「間違いが多い」と、投稿を一時的に禁止する措置を取っています。
限界はありつつも、「ChatGPTに質問した方が、ググるより良いかも」と思うことが筆者にはありました。Google検索でいつも感じるいくつかの“イライラ”を、ChatGPTなら感じないのです。
まず前提として、ChatGPTの概要を押さえておきましょう。
ChatGPTは、米国の研究機関であるOpenAIが開発した、自然言語処理(NLP)を採用した対話AIです。GPT-3という大規模な言語モデルが採用されており、自然文で質問を入力すれば、分かりやすい文章で回答を返してくれます。
前の会話を受けてさらに対話を深められる他、間違いを認めたり、不適切な要求を拒否したりでき、人間からフィードバックを受けて強化学習していきます。
答えが決まっている質問はとても得意です。例えば、「Pythonで『Hello world』を表示するプログラムを教えて下さい」と聞くと、以下のような回答が返ってきました。
実際に「Hello World」を表示するための基礎的なソースコードが出力されました。さらに、変数「message」を使う方法、複数の引数を連続して表示する方法まで解説してくれた上、”h”ello “w”orldのhとwをそれぞれ大文字に訂正してくれています。
ソースコードやExcelの関数など、ネット上に豊富にデータがあり、答えが決まっている内容については、ChatGPTは正確で丁寧な回答ができる傾向があります。ITエンジニアの中には、ChatGPTを頼りにコードを書いている人も、既にいるようです。
では、より一般的な話題ではどうでしょうか。試しに「パンケーキのレシピを教えて」と入力してみました。
それっぽい回答です。だいたい合っている気がします。
……が、よくよく見ると、材料にベーキングパウダーが含まれていないので、この通りに作るとふくらまないでしょう。モチのような生地になりそう。また「反対側に移します」といった言葉使いも怪しい。この通りに作って美味しいかは不明です。
ChatGPTはまだまだ発展途上ですが、今後、回答の正確性もより高まっていくでしょう。より正確な回答が可能になった時、ChatGPTへの質問は、「ググるより良い体験」になる可能性は高いと思います。
筆者がそう考える理由は、以下の5つです。
例えば「パンケーキのレシピ」をGoogleで検索すると、さまざまなレシピがずらずらっと表示されます。選択肢が多すぎて、選ぶのが面倒です。
Google検索の結果は、「検索ワードに対する答えの候補」であり、直接の回答ではありません。1つ選んでクリックし、ようやく答え(レシピ)にたどりつきます。ChatGPTが、クリック不要で直接答えを返してくれるのに対して、ここにもひと手間、挟まってきます。
そして、広告の問題。Google検索では、オーガニック検索結果より上に広告が差し込まれるため、それを邪魔に感じることも。間違えて広告をクリックしたり、広告を公式サイトと誤認したりすることもあります。
オーガニックの検索結果でも、「本当にベストな結果」が得られるとは限りません。Google検索に最適化するようコストをかけたページが上位に表示される傾向があり、「万人が認めた、最も美味しいパンケーキのレシピ」が検索トップに出るわけではありません(SEOに最適化したサイトは、文章量の多さから本題がかなり後まで出てこないこともある)。
また、ChatGPTは穏やかな口調にチューニングされており、基本的にポジティブな回答をしてくれます。検索結果でネット掲示板やSNSに書かれた攻撃的な文言をうっかり目にしてしまい、しょんぼりするといったことも、ChatGPT相手なら、ほぼありません。
ChatGPTは、「検索ワードを考えるのが面倒」「検索結果が多すぎる」「広告やSEOに特化したコンテンツの氾濫」といった現在のGoogle検索に対する“イラッとポイント”が解消されているのです。
今後、ChatGPTの正確性が高まり、Google検索以上に“使える”ものになったと仮定してみましょう。
まず、コストの問題が発生します。現在は無料で利用できますが、1つのリクエストを処理するのに「1桁セント」(数円〜10数円)かかっているそうです。これを回収するため、今後、広告が差し挟まれたり、有料化していくといった可能性もあります。
「ChatGPTなら何でも調べられる」と、みんなが使うようになれば、メーカーやECサイトはGoogle検索に対するSEOのように「ChatGPTの回答に自社商品が出やすいようチューニングする」といったことを進めるでしょう。
そうなると、ChatGPTの回答も「誰もが納得するベストな回答」ではなく、「企業による『ChatGPTの最適化』が効いた、そこそこの回答」……になってしまうかもしれません。
「ググるよりチャットでAIに聞く」時代は来るのでしょうか? AI技術の進化と、ビジネスモデルとのバランスによっては、そんな未来も実現しそうですが……さて。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.