「新しいBing」が話題です。AI(人工知能)によるチャットbot型検索エンジンが新たに搭載され、自然文(話し言葉)で質問を投げると、AIが答えを返してくれるようになったのです。筆者もいろいろ聞いてみたんですが、正直、イライラしました。例えが適切ではないかもしれませんが、“イケてない彼氏”との会話に似ていて……。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
「新しいBing」が話題です。AI(人工知能)によるチャットbot型検索エンジンが新たに搭載され、自然文(話し言葉)で質問を投げると、AIが答えを返してくれるようになったのです。チャットbot型検索エンジンは、OpenAIが提供する「ChatGPT」と「GPT-3.5」の技術を活用し、Microsoftが独自に開発した次世代言語モデル「Microsoft Prometheus」がベースになっています。
検索ウィンドウには「何でも聞いてください」とやたらフレンドリーな文章が表示されます。それならば……と筆者もいろいろ聞いてみたんですが、正直、イライラしました。例えが適切ではないかもしれませんが、“イケてない彼氏”との会話に似ていて……。
まず聞いてみたのは、「電子レンジで作るチョコのスイーツレシピ」です。私としては、これぞ! というベストな1案を欲しかったのですが、Bingが出してきたのは5種類。多い。大量の検索結果から1つを選ぶのが面倒だからチャットbotに聞いているのに、5つ並べられると、通常の検索と同様に自分で選ばねばならず、面倒です。
そこで、オススメを1つ聞いてみた結果、Bingは「材料が5種類と少なくて簡単なのに、とてもおいしくて濃厚なレシピ」を1つ提案してくれたんですが、ここでも納得がいきません。BingはAIであり、そのレシピで作ったお菓子を食べたことがないはず。なのに「おいしくて濃厚」と言い切るのは、違和感しかない。材料5種類も、多いように感じました。
ここから私たちはケンカになりました。「なぜ食べたことがないのに濃厚と言い切れるのか?」「材料5種類は多すぎる」……Bingも負けじと応じます。「他のレシピと比べて、5種類は少ないと思う」「材料から濃厚だと分かる」「焼き時間が短いから濃厚」。私は反論します。「焼き時間と濃厚さは無関係」……不毛すぎる戦い。
またBingが回答を生成するまでの間、「○○を検索しています……」と表示され、けっこう待たされます。真剣に話をしている彼女を前に、目線を外してスマホでググっている彼氏のような感じ。回答内容の外し具合と相まって、「私のこと、本当はどうでもいいと思っているんでしょ!?」と怒りたくなりました。
一通り使ってみて感じたのは、チャットのUIと検索はなじまない、ということです。
自然文で入力した質問に対して、AIが一見スラスラと、まるで人間とのチャットのように回答するので、どうしても、その後ろに人がいることをイメージしてしまいます。ただ、その“人”には、好みや感情、味覚など、人間が当然持っているものが欠落しています。
Bingが提示しているのはただの「検索結果を自然文でつないだもの」に過ぎないのに、会話文という「人間っぽい」回答スタイルのせいで、人間の好みや判断が含まれたチョイスに見えてしまう。機械的な回答内容と人間的すぎる表現の矛盾に納得できず、問い詰めたくなってしまいます。
さらにBingは、性格的に(?)「絶対負けを認めない」のが特徴。分からないことを分からないとは絶対に言わないので、不毛な争いが延々続いていったのです。
Bingを試した他の複数の記者も「ケンカになったことがある」「つい、えんえんと問い詰めてしまう」と言っていました。AIに人格的なものを感じたからこそでしょう。
ただ、この“性格”は初期のBingのもの。その後、MicrosoftはBingの“性格”を変更し、「1回につき会話は6ターンまで」に制限したため、えんえん問い詰めたりはできなくなりました。また都合が悪くなると、「申し訳ありませんがこの会話を続けることはできません。私はまだ学習中なので、ご理解とご協力をお願いします」と言い訳をして話を打ち切ってしまうようになりました。
そんなわけで、レシピ検索の結果にはまったく納得ができませんでしたが、土地勘がない分野を検索してみたら、普通に便利でした。
例えば筆者はプログラミングに疎いのですが、「学習しやすいプログラミング言語は?」と聞いてみると、PythonやJava、Swiftなど7種類を提案してくれ、その理由もシンプルにまとめて教えてくれました。
通常のキーワード検索で「学習しやすいプログラミング言語」を検索すると「初心者におすすめのプログラミング言語10選」などの記事がヒットします。これらの記事は文章や画像がやたらと多く読みづらい印象です。一方で、Bingのチャット検索結果は読みやすくまとまっています。
またChatGPTと同様、アイデアの壁打ちに使ったり、プログラミングやExcel関数など、答えがある程度決まっている内容を聞くには良さそうです。
結局、筆者が検索に求めていたのは、適切に要約してくれる能力……さらに言うと、「これでOK」という1案を提案してくれる力、なのかもしれません。大量の検索結果を自分で判断して回答を推し量る手間を、AIに省略してほしい。ただ、その結果は十分に根拠があり、間違いないものであってほしい。迷った時に「それで大丈夫だよ」と背中を押してくれる彼氏のように。
求めすぎでしょうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.