ITベンダーの評価、選定を適切に行うにはGartner Insights Pickup(291)

ベンダーを評価するには、詳細な目標や基準の設定、優先順位付け、モニタリングが必要になる。そのためのヒントを紹介する。

» 2023年02月17日 05時00分 公開
[Colin Reid, Gartner]

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 企業のIT購買チームはベンダーを選択する際、ベンダーの営業チームから提供される詳細な資料やドキュメントを調査、検討する段階で行き詰まりやすい。想定したソリューションとユースケースに最適なベンダーを確実に選ぶには、ベンダーとその製品を直接比較する優れた方法が必要になる。

 購買チームの全員が最終決定に自信を持てるように、以下の4つのステップで、本当に重要な要件と基準に基づいて、包括的で偏りのない評価をするとよい。

ステップ1:ベンダーを評価する前に、適切なIT購買チームを編成する

 購入プロセスの各段階で適切な視点を取り入れることで、購買チームは、重要な事項を見落とす可能性を減らせる。例えば、チームが当初に、IT担当者を蚊帳の外に置いて要件について議論すると、購入プロセスの初期段階から導入準備について考慮しなければならないという、重要な必要性があることを見過ごしてしまうかもしれない。

 全てのユーザーグループの要件の詳細に注意を払い、それらの要件が主要なビジネスドライバー(推進要因)およびビジネス目標に合致していることを確認する必要がある。

 特定のベンダーの評価を開始するのは、ソリューションのビジネスケース(投資対効果検討書)が承認されてからにする。

ステップ2:ベンダーの評価基準(要件)を設定する

 チームは多くの場合、次の5つのカテゴリーに整理された基準を踏まえる。

  1. 機能:チームが評価する技術カテゴリーに特化した機能を持つ
  2. 技術:技術のセットアップ、デリバリー、統合、それらを実行する方法、固有のタスクの難易度など
  3. サポートとサービス:トレーニング、導入支援に加え、購入前後および所有期間を通じた継続的なサポートなど
  4. ベンダーの健全性:ベンダーの安定性、照会先、自社の文化との親和性、製品またはベンダーのロードマップなど
  5. 価格と取引条件:1回限りのコストと継続的なコスト、契約条件、ライセンス条件、更新など

 カテゴリーごとに、自社の具体的なニーズや目標に応じて具体的な要件を追加する。最終的なリストが完成したら、個々の要件に「高」「中」「低」の優先順位を設定する。また、自社と自社の目標にとっての重要性に応じて、必ず各要件のカテゴリーに重み付けをする。

 ベンダーの評価を開始する前に、リストの内容の妥当性をチェックするため、これらの優先順位を付けた要件とそのカテゴリーの重み付けを、全てのステークホルダーと確認する。

■要件に優先順位を付ける方法(下図)

各要件は、以下の記述に当てはまるか 当てはまる場合、優先順位を以下のように設定
自社や自社の目標に不可欠
非常に望ましいが、自社や自社の目標に必ずしも不可欠ではない
任意であり、満たされない場合でも、自社や自社の目標の妨げにならない

ステップ3:各ベンダーのソリューションが、自社の基準をどの程度満たしているかを採点する

 自社の基準や要件に合いそうな製品を手掛けるベンダーに連絡したら、購買チームはまず、製品デモをしてもらうスケジュールを組むとともに、提供できる全てのサポートドキュメント(トレーニング資料、導入ガイドなど)の提供を依頼するとよい。

 ベンダー評価プロセスでは詳細要件を参照し、「自社のニーズに各ベンダーがいかに対応できるか」をチームが正確に把握するために質問する必要がある。

 評価対象ベンダーの中でどこが最適かを特定しやすいように、基準や要件の各項目の採点法は、シンプルなもの(例えば、「1」(最低)〜「5」(最高)の5段階評価など)を使用する。正確に採点するための適切な情報がなく、自信を持って評価できないベンダーについては、採点せず、評価対象から外す。全てのベンダーを全ての基準と要件について採点する必要があり、さもなければ、同一条件での比較ができない。

第三者のレビューに目を向ける

 製品に関するベンダーの主張を検証したり、製品が自社のユースケースに適しているかどうかを把握したりするには、第三者のレビューや独立的な調査を利用するとよい。ベンダーとそのソリューションは、規模、複雑さ、戦略といった点で大きく異なるため、比較するのは難しい場合があるからだ。

 独立的な調査の一例であるGartnerのマジック・クアドラントは、市場とその重要な要件を定義し、市場の方向性や成熟度の視覚的なスナップショットを提供し、市場参加企業の実力をランク付けすることでこうした問題を解決する。さまざまなレビュアーがさまざまな基準を用いているため(マジック・クアドラントでは「ビジョンの完全性」と「実行能力」という評価軸を採用している)、各レビュアーの方法論を理解し、その優先事項が自社の優先事項に沿っていることを確認する必要がある。

 どの組織や個人のレビューを選ぶかにかかわらず、「ベンダーの財務状況、市場対応、顧客基盤、イノベーションのレベルといった基準での評価を比較できる(レビューの観点が自社と一致している)」ことを確認するようにする。自社が取り上げなかった要件にレビュアーが着目していたら、それを選定基準に取り入れることも検討する。

ステップ4:少数のベンダーを候補として絞り込み、最終選考の前に再採点をする

 評価と採点を進めるうちに、要件を追加、編集、または削除したり、全く新しいベンダーや製品をリストに追加したりする必要があることに気付くかもしれない。それは問題ない。この段階での目標は、1〜2社の有力ベンダーの製品から成る最終候補リストを作成し、最終決定や購入を推奨する前に、追加の質疑応答や製品デモを通じてより厳格なテストと評価を続けることにある。

 全てのベンダーを比較し、自社のニーズを最も満たせるベンダーを特定したら、最終候補リストからベンダーと製品を選択し、最終条件を交渉する準備が整う。


要約

  • ITベンダーを評価する時間とエネルギーを節約するには、組織的かつ体系的なアプローチで、主要な基準に基づいて選択肢を絞り込む
  • 確立されたモデルやプロセスを使用して、要件と基準を整理し、自社にとって最も重要な事項を優先する
  • 全てのベンダーを全ての基準および要件について採点する。さもないと、同一条件による比較にならない

出典:How to Evaluate Technology Vendors Properly(Smarter With Gartner)

筆者 Colin Reid

VP, Product Management


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