「名前重要」「塞翁が馬」「推測するな計測せよ」――若きエンジニアたちにまつもとさんが贈る教訓は、実用的で暖かい。
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Rubyの開発者であるMatzことまつもとゆきひろさんは、日本一有名なプログラマーの一人で、世界でもその名が知られている。
中学3年生からプログラミングを始め、大学卒業後の1990年にプログラマーとして就職。はた目には順風満帆の成功者に見えるかもしれないが、33年間という長いキャリアの中では「痛い目に遭っているし、他の人が痛い目に遭うのも見てきました」という。
そのまつもとさんが、学生エンジニアのキャリアや就職活動を支援する「サポーターズ」が開催した、エンジニアを目指す学生のためのオンラインカンファレンス「技育祭2023春」で、失敗から学んだ7つの格言を、就活生に贈った。
格言の中で、まつもとさんが最も重視しているのは、「名前重要」だ。「名前重要……を格言と言ってるのは、私だけだと思いますが(笑)」
人は、名前を付けて初めて概念を扱えるようになるとまつもとさんは言う。「プログラミングは概念を扱うもの。ソフトウェアも実体はなく、コンピュータの中にある情報でしかありません。名前を付けることで、その存在を把握できるようになります」
Rubyはコードを書き始める前に名前を決めたという。「Perl」(真珠)など宝石の名前を借りたプログラミング言語に倣い、「短くてきれいで、石としても価値が高い」Rubyを選んだ。
まつもとさんは、Ruby以前に「Tish」(ティッシュ)という言語も作りかけており、「RubyはTishになっていたかもしれません。Tish on RailsとかTishカンファレンスだと魅力的に聞こえない(笑)。名前でソフトウェアの未来は変わります」と楽しそうに話す。
機能や関数、変数を名付ける際にも同じことがいえる。「適切な名前を付けられるということは、機能や関数の概念を十分に理解している証左です。雑に名付けると後で何をやってるか分からなくなります。名前を大切に扱ってください」
名付けに迷ったときは、文章生成AI「ChatGPT」を使うことも勧める。「こういう概念を表現する良い関数名はありませんか? といった質問をすると、割といい候補を挙げてくれるらしいですよ」
次に紹介したのは「推測するな、計測せよ」だ。
プログラムには、処理速度やメモリ消費量といった「非機能要件」がある。非機能要件は、実際にプログラムを動かし、運用しながら計測して初めて分かる。
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