2023年以降、IT企業に影響を与えるテクノロジー市場の4つの新トレンドGartner Insights Pickup(302)

技術市場では常に変化が起こる。Gartnerは、2023年には、全てのIT企業が4つの新たなトレンドへの対応を迫られると予測している。

» 2023年05月19日 05時00分 公開
[Lori Perri, Gartner]

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」や、アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」などから、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 「ソフトウェアやサービス、ハードウェア、他のソリューションなど、どんな技術分野を手掛けるテクノロジー企業でも、経営者や幹部は、これらのトレンドがビジネス全体に与える影響を評価し、必要な行動を判断しなければならない」。Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイス プレジデントのラジェシュ・カンダスワミ(Rajesh Kandaswamy)氏は、そう述べている。

 Gartnerは、2023年から3年以上にわたってテクノロジーベンダーに影響を与えそうなトレンドを9つ挙げているが、このうち以下の4つは、2023年に生まれる新しいトレンドだ。

  1. 企業における技術の連携型購入の拡大:IT部門以外の意思決定者も購入決定に参加
  2. プロダクト・レッド・グロース(PLG:製品主導の成長)戦略の推進:見込み客に製品をいち早く体験してもらう
  3. デジタルマーケットプレースの台頭:潜在購入者による技術ソリューションの検索、調達、実装、統合を容易にする
  4. マーケティングと顧客体験(CX)へのメタバース技術の導入:顧客エンゲージメントの構築を目指す
(出所:Gartner)

技術市場の変化は製品戦略にどう影響するか

 技術市場は進化を続け、以下の動向に拍車を掛ける。

  • 技術に対する人々や企業の依存度の高まり
  • 新しい技術の絶え間ない出現
  • 外部のマクロ環境によるインパクト(サステナビリティ(持続可能性)への要求の高まりなど)

 「テクノロジー企業の経営者や幹部が新たな機会を生かして脅威を管理するには、財務やマーケティング、営業、オペレーションなどの分野の責任者と協力し、戦略を立てる必要がある」(カンダスワミ氏)

新トレンド1:企業における技術の連携型購入の拡大

 IT以外の部門を代表して、意思決定者や影響力を持つ担当者が購入決定に参加すると、購入決定の焦点は、単なる技術ではなく価値創出のシナリオや成果に移る。

 連携型購入モデルは、多くの企業でまだ成熟していない。だが、Gartnerが2022年に行った調査では、企業における技術に関する意思決定者の67%が、IT部門に所属していないことが分かっている。

 この新たなトレンドに関連する機会を創出するには、次のようにする。

  • 市場参入(GTM:Go-to-Market)戦略を技術ベースから顧客志向の価値創出のシナリオベースに転換する

 顧客が目指すビジネス成果が得られることを、影響力を持つ担当者や、購入者それぞれを取り巻くビジネスプロセスの文脈で説明する。

  • 理想的な顧客プロファイル(ICP:Ideal Customer Profile)を利用する

 顧客の購入アプローチに関する状況認識を改善し、成功の確率と質の高い取引を最大化する。

  • ベンダーと顧客の関係をより強固なものにする

 経験の浅い購入者を効果的な意思決定手法の習得と活用に導き、企業が成熟した連携型購入環境を構築するのを支援する。

新トレンド2:プロダクト・レッド・グロース(PLG:製品主導の成長)戦略の推進

 プロダクト・レッド・グロース(PLG:製品主導の成長)戦略では、営業担当者と見込み客がやりとりする前に、見込み客に何らかの形で製品を体験してもらい、価値を実証することで製品を前面に押し出す。

 Gartnerは、2025年までにPLGがSaaS企業の90%でGTM手法の標準的な要素になると予測している(現在、この割合は58%)。PLGを取り入れたGTM手法では、まず、セルフサービスで製品を体験してもらい、そのデータシグナルの集約結果を踏まえて、営業担当者が販売、拡販につなげる。

 その最良の結果は、従来のトップダウン型のマーケティングや営業を展開するよりも低いコストで、急成長を遂げることだ。Gartnerの2021年User Influence on Software Decisions Survey(ソフトウェアの購入決定におけるユーザーの影響に関する調査)では、無料トライアル/フリーミアムの50%以上が購入につながったことが分かった。ただし、成功は決して確実ではなく、製品の無料版を市場に投入するだけでなく、多くの知恵と労力が必要になる。

 大規模なPLGはデータ集約型であり、ユーザーや購入者の認知とオンボーディングを伴っており、製品が使用されるのに加え、必要に応じてガイダンスや手助けが行われ、最終的に使用価値に基づいて販売、拡販に結び付く。この成果には、他のユーザーからの支持や影響も関わってくる。

 PLGの導入への第一歩は、想定しているオーディエンスに対する製品の適合性を評価することで、PLGが有効かどうか、最適かどうかを判断することだ。以下の点を検討する必要がある。

  • その製品は非常に直感的なユーザー体験を提供するか
  • オンボーディングは簡単か、短時間で済むか
  • ユーザーはすぐに価値を認識、把握できるか(そして、その価値をコストと比較検討できるか)

新トレンド3:デジタルマーケットプレースの台頭

 デジタルマーケットプレースは、技術製品の購入場所として一般的になりつつある。購入者は、非技術者の比重が高まっており、コンポーザブルで簡単に利用できるソリューションを求めているからだ。

 Gartnerは2026年までに、クラウドプラットフォームやエンタープライズアプリケーションの全ての主要なプロバイダーが、顧客のコンポーザブル戦略を可能にするビジネスコンポーネントのマーケットプレースを提供し、品質、利便性、セキュリティで差別化を図ると予測している。

 このトレンドを活用するには、次のようにする。

  • マーケットプレースチャネルの自社にとっての優先度を評価する

 ソリューションの適合性などから市場機会を規模で分類し、ターゲット購入者の好みを検討する。

  • 技術製品の購入における非技術系購入者へのシフトに備える

 GTM戦略を調整し、マーケットプレースを通じて販売する。自社のソリューションが購入者の既存インフラと互換性があり、簡単に統合できることが購入者に伝わるからだ。

  • マーケットプレースの構成要素として顧客に対応する準備をする

 既存マーケットプレースの適合性を評価するか、独自のマーケットプレースを立ち上げる。

新トレンド4:マーケティングと顧客体験(CX)へのメタバース技術の導入

 メタバース技術は、ユニークな体験やインパクトのあるやりとり、斬新なエンゲージメントを創出するものとして、マーケティング分野で急速に普及している。技術製品を担当するリーダーは今、独自の体験を構築し、マーケティングとCXの取り組みを発展させるために、利用可能な機会を捉える必要がある。

 2027年までにB2C(Business to Consumer)企業のCMO(最高マーケティング責任者)の過半数が、メタバース体験におけるデジタルヒューマン専用予算を確保するようになる見通しだ。

 メタバース技術はまだ初期段階にあるため、まず、製品リーダーはいつ、どのように次のような行動を起こすかを判断する必要がある。

  • メタバース技術の有効性を評価する

 大規模なマルチプレーヤー/マルチエンテイティの仮想空間、仮想現実(VR)、アバターといった技術について、ユーザーや顧客へのリーチと、オーディエンスのエンゲージメント率の観点から評価する。メタバース技術が、潜在顧客とのユニークなエンゲージメントの機会を増やし、既存顧客に記憶に残るポジティブな体験を提供できそうな分野を探す。

  • 継続的に評価を行う戦略を策定する

 パートナーシップやエコシステムが拡大する可能性の評価を含む。これらのメタバース技術は今後5〜10年間に進歩し、集約されていくからだ。

出典:4 Ways the Tech Market Will Change for IT Companies in 2023(Gartner Insights Article)

筆者 Lori Perri

Content Marketing Manager


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