Azureへのサインインはもう不要! Azure仮想マシンへの安全な接続を実現するAzure Bastionの「共有可能なリンク」が一般提供開始Microsoft Azure最新機能フォローアップ(193)

Microsoftは「Azure Bastion」の「Standard」プランで、新機能「共有可能(な)リンク」の一般提供を開始しました。この機能を利用すると、Azure仮想マシンにパブリックIPを割り当て、ポートを許可せず、また、Azureサブスクリプションへのアクセス許可を全く与えずに、Azure仮想マシンへの安全な接続を提供できます。

» 2023年05月19日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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Microsoft Azure最新機能フォローアップ

RDPとSSHのゲートウェイとして機能するAzure Bastion

 「Azure Bastion」(要塞《ようさい》)については、本連載でも何度か取り上げてきました。Azure Bastionは、Microsoft Azureで管理される、RDP(リモートデスクトッププロトコル)とSSH(Secure Shell)のゲートウェイとして機能する仮想マシンインスタンスです。

 Azure仮想マシンが接続されるサブネットと、インターネットとの間の境界のサブネットに配置され、TLS(443/TCP)でアクセスされるAzureポータルから、インターネットから隔離されたサブネット上のAzure仮想マシンのRDP(通常、3389/TCP)またはSSH(通常、22/TCP)への接続を中継します。

 Azure仮想マシンには、本連載第180回で紹介したように、RDPまたはSSH接続する方法が幾つかあります。Azure Bastionは有料になりますが、ブラウザだけで、またはRDPやSSHのネイティブクライアント(コマンドライン操作によるトンネルの作成が必要)からの安全なリモートアクセスを可能にします(画面1)。

画面1 画面1 Azure BastionによるAzure仮想マシンへのブラウザからのリモートデスクトップ接続

 本連載第184回で紹介した、これまでプレビュー機能として提供されてきた「共有可能(な)リンク(shareable links)」が、Azure Bastionの「Standard」プラン(38.671円/時間〜)で2023年5月10日(米国時間)に一般提供となりました。

 管理者は特定のAzure仮想マシンに対して共有可能なリンクを作成し、そのリンクをAzure仮想マシンの利用者に渡すことができます。Azure仮想マシンの利用者は、Azureポータルにアクセスすることなく、つまりAzureにサインインすることなく、ブラウザを使用してAzure仮想マシンの管理者アカウントの資格情報でRDPまたはSSHアクセスを開始できます(図1)。

図1 図1 Azure BastionによるAzure仮想マシンへの接続イメージ。共有可能なリンクを使用すると、Azureにサインインすることなく、直接、Azure仮想マシンにアクセスできる

Azure仮想マシンに接続するための「共有可能なリンク」を作成するには

 Azure Bastionは既定の構成の場合、Azure仮想マシンの「設定|接続」ページの「Bastion」タブやAzure仮想ネットワークの「設定|Bastion」ページから数クリックで簡単にデプロイできます(画面2)。

画面2 画面2 Azure Bastionは、Azure仮想マシンやAzure仮想ネットワークの「設定」ページからから簡単にデプロイできる

 既定の構成では「Basic」プランとしてデプロイされるので、「共有可能なリンク」を作成するには「Standard」プランにアップグレードします。アップグレードは「Bastion」管理ブレードで「設定|構成」ページを開き、プランを「Standard」に切り替え、「共有可能なリンク」オプションをチェックします(画面3)。

画面3 画面3 「共有可能なリンク」を作成するには、「Standard」プランに切り替え、「共有可能なリンク」オプションをチェックする

 プランのアップグレードが完了すると「Bastion」ブレードに「設定|共有可能リンク」が表示されるので、「+追加」をクリックして、Azure仮想ネットワークのAzure仮想マシン用サブネットに接続されたAzure仮想マシンを追加して、作成された「共有可能なリンク」をコピーし、利用者に渡します(画面4)。

画面4 画面4 共有可能なリンクによる接続を許可するAzure仮想マシンを追加して、リンクを作成、コピーする

 利用者がそのリンクをブラウザで開くと、「AZURE BASTION」ログインページが表示されるので、「プロトコル(RDPまたはSSH)」「ポート」「Azure仮想マシンの管理者アカウントの資格情報」を入力してログインします(画面5)。

画面5 画面5 共有可能なリンクをブラウザで開き、Azure仮想マシンの管理者アカウントの資格情報でログインする

 なお、Azure Bastionのインスタンス(既定は2インスタンス)は常時稼働しており、デプロイされてから1時間ごとに課金されます。Azure Bastion経由のリモートアクセスの有無やAzure仮想マシンの状態に関係なく、Azure Bastionのリソースが削除されるまで課金は継続します。そのため、常時稼働するAzure仮想マシンのある運用環境には適していますが、開発やテスト目的での利用には適していません。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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