Microsoftは「Azure Bastion」の「Standard」プランで、新機能「共有可能リンク」がパブリックプレビューとして利用可能になったことを発表しました。この機能を利用すると、任意のユーザーにAzureサブスクリプションへのアクセス許可を全く与えることなく、Azure仮想マシンへの安全な接続を提供できます。
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本連載の第180回で紹介したように、Azure仮想マシンにインターネット経由で接続する場合は、「リモートデスクトップサービス」やSSHサーバが備えるセキュリティ機能だけでは攻撃を受けるリスクがあるため、追加の対策を講じるべきです。
例えば、「リモートデスクトップ(RDP)接続」はRDP(Remote Desktop Protocol)自身に暗号化機能を備えてはいますが、認証は「ユーザー名」と「パスワード」というシンプルなもので、ブルートフォース攻撃に対して脆弱(ぜいじゃく)です。
上記記事の最後に紹介した「Azure Bastion」は、Microsoft Azure上の完全に閉じた仮想ネットワークでも利用可能な、Azure仮想マシンに対するRDPおよびSSH接続のゲートウェイとして機能する有料のマネージドサービスです。
Azure BastionをAzure上の仮想ネットワークにデプロイすると、仮想ネットワークとの境界のサブネットが作成され、ユーザーによる管理が全く必要のない「Bastinホスト」(要塞《ようさい》ホスト)がデプロイされて、実行状態になります。
ユーザーは「Azureポータル」に統合された(または別のウィンドウ/タブで開く)Webベースのリモートデスクトップ接続機能を用いて、安全にAzure仮想マシンにアクセスすることができます(画面1)。ローカルPC上のネイティブクライアントを使用してAzure Bastion経由で接続することもできます(Standard SKUのみ)。いずれの場合も、RDPやSSHのポートをインターネットに公開する必要は全くありません。
Azure Bastionの従来の方法によるアクセスには、ユーザーはAzureポータルにアクセスできる必要があります(ネイティブクライアントの場合は「az login」)。そのためには、Azureサブスクリプションのユーザーの資格情報や、必要なロールが割り当てられた「Azure Active Directory(Azure AD)」ユーザーの資格情報が必要です。
今回、パブリックプレビューとして利用可能になった新機能「共有可能リンク」は、Azureポータルへのアクセス権限や、Azureのロールは一切必要ありません。Azureの管理者によって作成された共有可能リンクを、何らかの手段でユーザーに伝えるだけでよく、ユーザーは受け取ったURLをブラウザで開くことで、Azure仮想マシンへのブラウザベースのRDPまたはSSH接続を提供することができます(画面2、画面3)。
共有可能リンクはAzure BastionのStandard SKUの機能であり、デプロイ済みのAzure Bastionに対して、オプションで有効化(Basic SKUの場合はStandard SKUへのアップグレードも必要)できます(画面4)。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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