8TBのHDDだけ故障率が高い謎――自社利用HDDの調査で分かった「気になる真実」とは24万台のHDDを調べた

Backblazeは、2023年第2四半期の自社データセンターにおけるデータドライブの統計レポートを発表した。

» 2023年08月09日 08時00分 公開
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 クラウドストレージやクラウドバックアップサービスを提供するBackblazeは2023年8月3日(米国時間)、2023年第2四半期の自社データセンターにおけるデータドライブの統計レポートを発表した。

 2023年第2四半期末の時点で、Backblazeは世界中のデータセンターで24万5757台のHDDとSSDを管理していた。そのうち4460台が起動ドライブで、その内訳は3144台がSSD、1316台がHDDだった。同レポートでは、BackBlazeの管理下にある24万1297台のデータドライブに焦点を当て、2023年第2四半期と生涯の故障率を報告した。

2023年第2四半期のハードドライブの故障率

 2023年第2四半期では、顧客データの保存に使用される24万1297台のハードドライブが調査対象となった。テスト目的で使用されていたなどを理由に357個のドライブを除き、24万940台のハードドライブを分析し、これらを構成する31種類のモデル別に年間平均故障率(AFR:Annualized Failure Rate)を算出した。

2023年第2四半期のハードドライブの年間平均故障率(AFR:Annualized Failure Rate)(提供:Backblaze)

Avg. Age(months):平均使用期間(月数)、Drive Days:正常稼働日数、Drive Failures:ドライブの故障件数

2023年第2四半期の故障率統計に関する注目点

故障がゼロだったドライブ

 上の表から、2023年第2四半期の「故障件数」(Drive Failures)がゼロだったモデルを抜き出すと、次のようになる。各モデルは、第2四半期の「正常稼働日数」(Drive Days)が多かった順に並べられている。正常稼働日数は、各モデルのドライブが正常に稼働した日数の合計を指している。

2023年第2四半期に故障件数がゼロだったドライブモデル(提供:Backblaze)

 一般的に、統計的に意味を持つためには、ドライブモデルは1四半期の正常稼働日数が合計で5万日以上である必要がある。上位3つのモデルはこの基準を満たしているが、これらのモデルは生涯AFRも0.13〜0.45%と低く、この四半期の故障がゼロだったことは驚くには当たらない。

 下位の3モデルはこの基準を満たさないが、Seagate Technologyの2モデルは、幸先の良いスタートを切ったといえる。東芝の4TBモデルも、「平均使用期間」(Avg. Age《months》)が8年以上に及ぶことを考えると、故障がなかったのは喜ばしい。

最も古いドライブ

 平均使用期間が最も長いドライブモデルは、Seagateの6TBモデル(ST6000DX000)だ。このモデルの平均使用期間は98.3カ月(8.2年)で、最も古いものは、104カ月(8.7年)使われてきた。

 運用中のデータドライブで最も古いものは、Seagateの4TBモデル(ST4000DM000)の一つで、使用期間は105.2カ月(8.8年)に達している。

 Backblazeのデータセンターで運用中の最も古いドライブは、起動ドライブであるWestern Digital(WDC)の500GBモデル(WD5000BPKT)の一つで、使用期間は122カ月(10.2年)だ。

AFRの上昇

 2023年第2四半期のデータドライブ全体のAFRは2.28%となり、2023年第1四半期の1.54%から上昇した。四半期のAFRは変動しやすいが、さらなる調査が必要なトレンドを特定する上でも有用だ。

 Backblazeが管理するデータドライブは、全体的に使用期間が長くなっているため、AFRの上昇は予想されていた。それが本当の理由なのかどうかを調べるため、Backblazeはまず、ドライブのサイズ別に、平均使用期間、2023年第2四半期のAFR、生涯AFRを表にまとめた。

ドライブサイズ別の平均使用期間とAFR(提供:Backblaze)

 次に、上の表のドライブのうち、使用期間が長い、つまり古いドライブを対象に、AFRの時系列の推移をグラフ化した。その際、平均使用期間が5年(60カ月)以上のドライブを古いドライブと見なしたので、下のグラフでは、4TB、6TB、8TB、10TBの4つのサイズのドライブが取り上げられている。5年で線引きしたのは、Backblazeが現在購入しているドライブの保証期間が5年だからだ。

4TB、6TB、8TB、10TBドライブの過去3年の四半期AFR(提供:Backblaze)

 興味深いことに、使用期間が最も長い4TBおよび6TBドライブは、四半期AFRの上昇が小幅にとどまっており、古い割に健闘している。

 一方、8TBおよび10TBドライブは、平均使用期間がそれぞれ6年、5年だが、両ドライブのAFRの上昇傾向は、さらなる注意を要する。Backblazeはレポートの後半で生涯AFRを報告する中で、この点について解説を加えている。

ハードドライブの生涯故障率

 「2023年第2四半期のハードドライブの故障率」と同様に、Backblazeは24万940台のハードドライブを分析し、これらを構成する31種類のモデル別に生涯AFRを算出した。

2023年第2四半期末におけるハードドライブの生涯AFR(提供:Backblaze)

Avg. Age(months):平均使用期間(月数)、Drive Days:正常稼働日数 Drive Failures:ドライブの故障件数

生涯故障率統計に関する注目点

生涯AFRも上昇

 2023年第2四半期末におけるデータドライブ全体の生涯AFRは1.45%となり、2023年第1四半期末の1.40%から0.05ポイント上昇した。

 前述したように、2023年第2四半期のAFRの上昇については、8TBおよび10TBモデルのAFR上昇が大きな要因となったとみられる。

 Backblazeは、生涯AFRについてもこのことが確認できるかどうかを調べるため、ドライブのサイズ別に、2023年第1四半期末と第2四半期末における生涯AFRの差を計算し、次のようにグラフ化した。

2023年第1四半期末と第2四半期末におけるドライブサイズ別の生涯AFRの差(提供:Backblaze)

 データドライブ全体では、2023年第2四半期末における生涯AFRは、第1四半期末比で0.05ポイント増であるため、棒グラフが赤線の上に出ているドライブサイズは、データドライブの生涯AFRの上昇に寄与したことになる。

 このグラフは、8TBドライブと10TBドライブが、第2四半期末における生涯AFRの上昇の主因であることを示している。四半期AFRの上昇と同じ構図が、ここでも確認された。

 8TBドライブ(2万4891個)と比べて、10TBドライブ(1124個)ははるかに少ないため、Backblazeは8TBドライブについて掘り下げた。稼働中の8TBドライブは6モデルあるが、このうち3モデルが、8TBドライブにおける故障の99.5%を占めているため、この3モデルに焦点を当てている。

8TBドライブにおける故障のほとんどを占める3モデルの平均使用期間と生涯AFR(提供:Backblaze)

 3モデルはいずれも平均使用期間が5年を超えており、生涯AFRの上昇も顕著だ。移行のために注目すべきモデルを1つ選ぶとしたら、どれも良い候補になるだろうが、平均使用期間が最も長いSeagateの「ST8000DM002」が、最有力となりそうだ。

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