日本IBMは、「人的資本経営推進と戦略的開示に向けて」と「自動化とAIが導く『拡張労働力』の世界」の2つの調査レポートを公開した。日本企業が抱える人的資本情報開示に関する課題や、AIによって仕事がどのように変化しつつあるのかを明らかにした。
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日本IBMは2023年11月16日、人的資本経営の調査レポート「人的資本経営推進と戦略的開示に向けて」と、AI(人工知能)による拡張労働力に関するレポート「自動化とAIが導く『拡張労働力』の世界」を公開した。
“人的資本経営推進と戦略的開示に向けて”では、日本企業が抱える人的資本情報開示に関する課題について調査している。
調査結果によると「人的資本情報の開示内容は自社の競争力を適切に示している」と考えている企業は7割を超えていた。その理由を聞くと約半数が「パーパス(企業の存在意義)や経営ビジョン、経営戦略と人的資本に関する情報の関係が十分に示せているから」「開示を推奨されている項目を全て満たしているから」と回答した。
ただ、人的資本の情報開示で必要な「人的資本の開示が企業価値を向上させるという一連の流れ」(統合的な価値向上ストーリー)の作成には苦労しているようだ。統合的な価値向上ストーリーを示すことに難しさを感じている企業は約4割で、苦労しているポイントを聞くと「データ基盤を整備した際に統合的なストーリーを描くことを前提にしていなかった」(71%)、「人的資本に関する戦略が会社の長期的な存続を支える観点で立案、実行されており、短期的な経営戦略とは必ずしも連動しない」(70%)、「関連部門間の連携が悪い」(67%)などが挙がった。
日本IBMによると、人的資本情報の項目のうち「サクセッション(後継者育成)」については「力を入れている、進んでいる」と回答した企業の割合が24%と低かった。同社は「機関投資家の立場でいえば、サクセッションプランは経営の安定性と持続的な成長を実現する上で重要な施策なため、強化が必要だ」と指摘している。
“自動化とAIが導く自動化とAIが導く「拡張労働力」の世界”はAIによって仕事がどのように変化しつつあるのかを明らかにしている。
調査結果によると、経営層は「今後3年間、AIと自動化の導入に伴って従業員の40%に学び直しが必要になる」と見込んでいた。また、経営層の87%が「生成AIによって従業員が代替されるよりも、拡張される可能性の方が高い」と考えていた。
従業員の目線では、仕事に関わる要素として重要度が高いものを聞くと「柔軟な労働形態」(38%)や「成長機会」(43%)よりも「有意義な仕事」(45%)と回答した割合が多かった。「担当業務の内容」「雇用主」「同僚」のうち、約半数が最も重要ものとして「担当業務の内容」を挙げた。
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