大切なのは「原因の追究」か?――トラブル発生時のコミュニケーション仕事が「つまんない」ままでいいの?(109)(3/3 ページ)

» 2024年01月17日 05時00分 公開
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「なぜ?」ではなく「どうすれば?」を問い掛けた

 そこで、ボクは不具合を報告してくれたメンバーに、次のように話し掛けました。

 「○○くん、正直に話してくれてありがとう。おかげさまで問題が大きくなる前に対処できそうだよ。でも問題は問題だから、どうすればこの問題を解決できるか、一緒に考えよう。どうすれば問題が解決できると思う?」

 このように話し掛けたところ、メンバーのおどおどしていた表情は一変し、覇気を取り戻した顔つきになりました。その結果、影響を最小限にし、解決策を講じることができました。

 もちろん原因追究も大切です。しかし、原因追究は相手の意識を「過去の問題」にとどめます。一方の解決志向は、相手の意識を「未来の問題解決」にリードできます。

 解決志向を知ってから、以前行っていた「何で気付かなかったんだ!」といった、過去の問題を追及する問い掛けは愚問だったと感じるようになりました。なぜなら、もし問題が発生する前に気が付いていれば、当然リリース前に不具合は修正しているはずだからです。つまり、問題に「気付かなかった」のではなく、「気付けなかった」わけです。

 気付いていないことに対して、「何で気付かなかったんだ!」と責め立てたところで、「意識が足りませんでした。以後気を付けます」としか言えません。これでは何の解決にもならないことを痛感しました。

大切なのは「問題を解決すること」

 これはあくまでも一例であり、全ての問題が解決できるわけではないでしょう。また、今回の震災や事故のような出来事には複雑な要因が絡んでいることもあります。「問い掛け方」を変えるだけで、一件落着……とはいかないでしょう。

 しかし、過去の問題に意識を向け続けているばかりでは、どうしてもネガティブな気持ちになりがちです。また、過度に「なぜ?」「どうして?」と責め続けられたら、つい保身を考えて「これは言わない方がいいな」と、真実を話さなくなる場合もあります。

 また今回のような重大な局面では、現場の皆さんは、昼夜問わず必死に働いてくださっています。そういった状況の中では、やみくもに責め立てたり、犯人探しをしたりするよりも、まずは「どうすれば解決できるか?」といった、未来に対して視点を置いておく。

 そうした方が、目の前の問題を、未来に向かって早く解決できるのではないでしょうか。

 とはいえ、こうした意識がある人ばかりではありません。時には、つい相手を責め立てたり、強めな言葉を使ってしまったりする人もいます。もしあなたが、「もう少し前向きに議論できたらいいな」と感じたときには、次のような言葉を掛けると、未来の課題解決に相手の意識をリードできるかもしれません。

 「大切なのは、犯人探しをすることではなく、問題の解決に向けて『いま、何ができるか?』をみんなで考えることではないでしょうか?」

筆者プロフィール

竹内義晴

しごとのみらい理事長 竹内義晴

「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。

著書「Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)」「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。


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