大切なのは「原因の追究」か?――トラブル発生時のコミュニケーション仕事が「つまんない」ままでいいの?(109)(2/3 ページ)

» 2024年01月17日 05時00分 公開

原因追究の問題は「犯人探し」で終わってしまうこと

 また、本来であれば、問題は仕組みやシステムで解決したいところです。しかし「なぜ?」「どうして?」といった原因追究が始まると、問題を起こした「人の原因」に焦点が当たり、「犯人探し」や「個人の責任追及」を始めてしまいがちです。

 話は少し異なりますが、情報漏えいのようなトラブルがあった場合、「なぜ?」「なぜ?」と原因を追究していくと、こういった感じになるのではないかと思います。

「情報漏えいが発生した」

「なぜ、情報漏えいが発生したのか?」

「パスワードを定期的に更新していなかったから」

「なぜ、パスワードを定期的に更新しなかったのか」

「ランダムなパスワードを幾つも覚えられないから」

 ここで、問題の原因が「仕事のやり方」や「管理の仕方」といった業務の仕組みやシステムの方向に向かえばいいのですが、さらに原因追究をして……。

「なぜ、パスワードを幾つも覚えるのは難しいのか」

「情報セキュリティの重要性を理解していないから」

「なぜ情報セキュリティの重要性を理解していなかったのか」

「情報セキュリティに対する意識が低いから」

 と、個人の問題に深掘りすることもできます。

 もちろん、人の意識を高めるために、教育や研修を行うことも大切でしょう。しかし、問題の原因を「人の意識」にした時点で、対策や効果検証が難しくなりますし、そもそも人の意識は完全ではありません。

 また、責任の所在ばかりに意識が向くと、犯人探しが終わった時点で、「つまり、あの人が悪い」のように、何となく「原因が分かった気持ち」が生まれて、問題を何も解決しないまま、結論が出たような気になってしまいます。

「過去の原因」よりも「未来の問題解決」に意識を向ける

 そこで提案したいのが、「なぜ?」という原因追究よりも、「どうすれば?」という解決志向です。

 解決志向とは、「問題」ではなく「解決」に意識を向けます。つまり、「なぜ? その問題が起こったのか?」という過去の問題よりも、「どうすれば? その問題は解決できるか?」のように、未来の問題解決に意識を向ける働き掛けです。

 ここで、ボクの経験をお話しします。

 以前、ボクはIT企業で管理職をしていました。そのとき、システムを開発したあるメンバーが、ボクの所にやってきて、こう言いました。

 「すみません。今日リリースしたシステムに、不具合があることが分かりました」

 彼は、非常におどおどしていて、いまにも泣き出しそうな表情でした。

こういうとき、どうすればいいんだろう……

 このような「不具合が起こった」状況のとき、以前のボクは次のようなコミュニケーションをしていました。

 「なぜ不具合が起こったんだ! ちゃんとテストしたのか? 何でリリース前に気付かなかったんだ!!!」

 一方、こういった感情に任せた原因追究型のコミュニケーションは、相手を萎縮させるだけで問題解決にはならないばかりか、チーム全体の士気を下げると感じていました。

 そこでコミュニケーションの勉強をし、学んだのが「解決志向」でした。つまり「どうすれば、解決できるか?」です。

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