2025年10月にサポート終了を迎える「Windows 10」(バージョン22H2)に、「2023年11月のオプションの更新プログラム」で、Windows Updateに関連する新機能が1つ追加されました。それは、「Windows 11 バージョン22H2」以降に採用されている「制御された機能ロールアウト」です。
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「制御された機能ロールアウト」(Controlled Feature Rollout:CFR)は、「Windows 11」の「Moment Update」とも呼ばれる新機能の段階的ロールアウトを先行的に受け取るために、2023年5月の「オプションの更新プログラム」(更新プログラムのプレビュー、Cリリース)でWindows 11 バージョン22H2に追加された機能です。
CFRに対応したWindows 11では、「Windows Update」にある「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチをオンにすることで、新機能を先行的に導入できるようになります。
これまで「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチは、管理されたデバイス(「Microsoft Intune」や「Windows Server Update Service《WSUS》」クライアント、「更新プログラムの延期」ポリシー設定)ではオフの状態で、グレーアウトされ利用できませんでした。しかし、2023年9月のCリリースで、管理されたデバイスでもCリリースやオプションの更新プログラムをすぐにインストールする新しいポリシー「オプションの更新プログラムを有効にする」が追加されました。これについては、本連載第22回で説明しました。
CFRに対応したこれらの機能は、Windows 11 バージョン23H2には最初から搭載されています。
Microsoftは2023年11月のCリリースで、Windows 11 バージョン22H2以降のCFR対応機能をWindows 10 バージョン22H2(ビルド19045.3758以降)に追加しました。つまり、「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチが、Windows 10/11のバージョン22H2以降で全エディションに追加されたことになります(画面1)。
また、Windows 10の「Home」を除くエディションでは「オプションの更新プログラムを有効にする」ポリシーが以下の場所に追加されました。
管理されたWindows 10デバイスは、Windows 11と同様に「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチがグレーアウトされ、使用できません(画面2)。
しかし、「オプションの更新プログラムを有効にする」ポリシーを有効にして、以下のいずれかを設定することで「CFRを含むオプションの更新プログラムを自動的に受け取る」(画面3)、「オプションの更新プログラムだけを受け取る」「トグルスイッチのオン/オフとオプションの更新プログラムのインストールをユーザーに選択させる」(画面4)ことができるようになります。
「オプションの更新プログラムを有効にする」ポリシーを使用した場合のWindows Updateの挙動の検証結果については、以下の連載記事も参考にしてください。記事で言及しているように、「オプションの更新プログラムを有効にする」ポリシーの設定によっては、オプションの更新プログラム(Cリリース)が管理されたデバイスでインストール対象になってしまうことには、十分に注意してください。
MicrosoftがWindows 10にCFR対応機能を追加した理由の一つは、「Copilot in Windows(プレビュー)」の提供をWindows 10にも拡大するためです。Copilot in Windows(プレビュー)の段階的なロールアウトは2023年11月のCリリースと同時にスタートし、今後数カ月かけて広範囲のデバイスにロールアウトされることになっています(画面5)。
「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチをオンにすることで、Copilot in Windows(プレビュー)が利用可能になり次第、先行的に入手できるようになるのですが、以下のドキュメントにあるように、ロールアウト対象には制約があります。
なお、2023年11月のCリリースには、マルチモニター構成や垂直タスクバー利用のデバイスでのCopilot in Windows(プレビュー)に既知の問題があり、影響を受けるデバイスには問題が解決されるまで提供されません。
また、アプリケーションの非互換性問題が検出された場合、そのデバイスは「セーフガードホールド」の対象となり、こちらにも提供されません。
Copilot in Windows(プレビュー)の制約や既知の問題の影響を受けない場合でも、「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチをオンにすればすぐに利用可能になる(要再起動)わけではありません。
ちなみに、筆者の環境にあるWindows 10 バージョン22H2(ProおよびHome)は、Copilot in Windows(プレビュー)の制約や既知の問題の影響を受けないと思われますが、2024年2月(上旬)時点でまだ利用可能になっていません。
Windows 10の製品サポート終了は「2025年10月14日」で、その日以降は安全に利用できなくなるわけですが、そのWindows 10にいまさら新機能をWindows Updateに手を加えてまでロールアウトするというのはどうかと思います。
Windows Updateに手を加えず、Copilot in Windowsを利用したい人だけに提供するようにはいかなかったのでしょうか。あるいは、Microsoftは、今後もWindows 10に新機能を追加する予定があるのでしょうか。もし、新機能の提供が“Copilot in Windowsで終わり”というのであれば、Windows Updateに手を加えたことが無駄に思えます。
Microsoftとしては、Windows 10にCopilot in Windowsを提供することを、(フル機能版Copilot in Windowsを利用できるようになる《※1》)Windows 11への移行促進のためといっていますが、ユーザーにとってはセキュリティ更新プログラムが提供されなくなるその日まで(※2)、そっとしておいてほしいというのが正直なところでしょう。Windows 11(あるいはさらに新しい製品名)デバイスを購入するのは、その日が近づいてからの方が、まだ存在しない新技術に対応した最新のものを手に入れることができるはずです。
【※1】Microsoftの発表やそれに基づくニュース記事では、Copilot in Windowsが2023年12月1日から正式提供が開始されたように伝えられていますが、Copilot in WindowsはWindows 11、Windows 10ともに現在も“プレビュー”中です。2023年12月1日に正式提供が開始されたのは、「Microsoft Edge」や「Edgeサイドバー」からアクセスできる「Copilot」(旧称「Bing Chat」「Bing Chat Enterprise」)です。
【※2】MicrosoftはWindows 10向けに製品サポート終了後も最大3年間セキュリティ更新プログラムを受け取ることができる「拡張セキュリティ更新プログラム(Extended Security Update:ESU)」(オンプレミス向けは有料)を企業および個人向けに提供する予定です。
管理されたデバイスには当面、Copilot in Windowsがロールアウトされることはありませんが、企業では以下の「グループポリシー」を有効にすることで、Windows 10/11の「Copilot」を使用を禁止できます(画面6)。
Windows 10 バージョン22H2およびWindows 11 バージョン22H2以降でこのポリシーを有効にすると、Copilot in Windowsを使用できなくなるだけでなく、タスクバー上のアイコンやタスクバー(Windows 11)の設定トグルスイッチも非表示になります。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2024(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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