人生は勉強だから、いろいろなことを学ばないとGo AbekawaのGo Global!〜フィトリさんFromマレーシア(後)(2/2 ページ)

» 2024年07月10日 05時00分 公開
前のページへ 1|2       

来日するなら「日常会話レベルの語学力」と「コミュニティー」が大切

編集鈴木 マレーシアのことについて教えてください。先ほどのお話ではITに進学した方が国のためになるということでしたが、今は政府としてもITを主要産業にしようと力を入れているのでしょうか。

フィトリさん そうですね、最近のマレーシアは、ITがもっと広まるように、業界だけじゃなく、学校でもITやインターネットを普及させようという動きが活発です。

編集鈴木 もう1つ。まずは、ご結婚おめでとうございます。(ありがとうございます)。結婚したら、奥さんは日本に来て一緒に日本で暮らすことになるんですよね。奥さんは、初めて会う旦那さまと初めて暮らす国で、よく知らない日本語に囲まれて暮らすことになりますが、その奥さんに、「日本で暮らすときはこういうところがマレーシアと違うから注意した方がいいよ」とか「こういうこと勉強した方がいいよ」などのアドバイスとはありますか。

フィトリさん 初めての日本での一人暮らしは寂しいよ、ということですかね。でも奥さんの場合は私がいるからその点は問題ありません。後は、日常会話ができるくらい日本語が分かっていた方がよいですね。日本に来てから勉強を始めるのはちょっと危ないと思います。

編集鈴木 英語が話せてもダメですか?

フィトリさん ダメですね。例えば銀行の書類は全て日本語なので、英語だけだと若干厳しいですね。実際、私もそういう経験をしました。

編集鈴木 奥さんは日本語を勉強中ですよね? 大丈夫ですか。

フィトリさん 私のことを信頼してくれているので、私に100パーセント任せてくれます。

画像 フィトリさんを信頼しているご家族との一枚

編集鈴木 責任重大ですね。けんかしちゃったら大変。

フィトリさん けんかしたら、私が謝ります(笑)。私が今住んでいる場所はムスリムやマレーシア人も多いので、コミュニケーションや友達作りについてはあまり心配していません。ああ、そういえばそれも重要ですね。もし日本で暮らしたいなら、コミュニティーがあるところを探した方がいいです。同じ国の人たちとか、同じ宗教の人たちの周りに住めば、安全だし、問題も少ないと思います。


編集中村 編集 中村

このインタビュー後、2024年4月に無事結婚式が開かれたそうです。当初の予定では式の後に日本に戻る予定でしたが、原稿執筆時点では奥さんと一緒にマレーシアで過ごされているそうです。奥さんが日本で孤立せずによかったですね。


人生とは学びの連続だ

阿部川 日本のエンジニアにメッセージはありますか。

フィトリさん 私の経験から話すと「人生は勉強だから、いろいろなことを勉強しなさい」ということを伝えたいです。私も毎日、それを考えながら仕事をしています。

阿部川 「勉強すること」はフィトリさんの中ではどういう位置付けなのでしょうか。

フィトリさん 生き方、ですかね。いい生活、良い人生にするためにどうすればいいかを学んでいます。仕事はもちろん、人間関係の構築の仕方やコミュニケーションの取り方も勉強しないといけません。もし、そういうことを完全にマスターできたとしたら良い人生が過ごせると考えています。

阿部川 仕事だけではなく、人生のための勉強もした方がよい、と。

フィトリさん 全てのことにはバランスが必要ですから、バランスを取るために勉強が必要ということです。

編集中村 就職活動のときに50社ぐらい面接を受けたとのことですが、海外の就職活動でお断りが続くのは結構ダメージが大きいと思うのですけど、それはどうやって乗り切ったんですか。

フィトリさん そうですね、今、改めて思い返してみると、最初はショックで「断られた」という気持ちになったことがよくありました。でも、私がマインドセットをチェンジして、面接は会社に入るための勉強だと思うことにしたのです。1社で面接に落ちても、「大丈夫です。勉強だから大丈夫です」という意識があるから、あまりショックは感じない。そういう気持ちで就職活動をしました。

編集中村 「次もうまくいかなかったら、どうしよう」じゃなくて「チャレンジしてみてダメだったらまた次の機会に生かそう」というマインドセットに変えたということですね。

フィトリさん そうです。後は、なぜその会社でダメだったのかを自分で判断して、「じゃあ次の会社の面接はもっと良くしましょう」というポイントを見つけて、勉強するというか、弱点を乗り越えるようにやっていました。

阿部川 なかなかその境地にはいけないですよ、すごいですね。フィトリさんのように「これも勉強だから」と思えるように、見習わないといけませんね。

画像

Go’s thinking aloud インタビューを終えて

 フィトリさんは「人生は勉強だ」と何度も繰り返した。それを日本人の真面目さや誠実さからも学んだと言ってくれた。

 だが、真面目さも程度が過ぎると「融通の利かなさ」や「視野の狭さ」にもつながる。フィトリさんがそれをバランスよくこなせるのは、バックボーンにイスラム教の教えがあるからだろうか。

 春には結婚なさり、現在は2人でマレーシアに戻り、念願だった「国への貢献」にまい進していると聞く。そんないちずな人が、人生の大切な一時期に日本で暮らしていてくれたことを、私たちは誇りに思ってよいだろう。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD) 訪問教授 インタビュアー、作家、翻訳家

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時から通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学の学部長、教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行う他、作家、翻訳家としても活躍中。

編集部から

「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOなど、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。取材はオンライン、英語もしくは日本語で行います。

ご連絡はこちらまで

@IT自分戦略研究所 Facebook@IT自分戦略研究所 X(旧Twitter)電子メール


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

Microsoft & Windows最前線2025
AI for エンジニアリング
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。