なぜかパスキーの認証や共有に失敗する場合の対策や回避策Tech TIPS

パスキーの利用が促される機会が増えてきた一方で、パスキーの認証や共有(同期)でトラブルが生じることも。Windows OSやスマホ、Google Chromeを中心に、パスキーのトラブルとその対策/回避策について説明する。

» 2024年12月18日 05時00分 公開
[島田広道デジタルアドバンテージ]
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パスキー 認証/共有 トラブル 対策

対象:Windows 10/11、Googleパスワードマネージャー、リモートデスクトップ接続(mstsc.exe)


 Google Chrome(以下、Chrome)などでGoogleアカウントにログインすると、「パスキー」の利用を促されたことはないだろうか(パスキーについては、Tech Basics/Keyword「最近よく聞く『パスキー』の仕組みと設定方法」参照)。このように長らく利用されてきたパスワードから、「パスキー」で認証することが普及し始めている。大多数のPCやスマホ(デバイス)では、既にパスキーの生成や認証が可能になっている。そして複数のデバイス間で、パスキーの同期(共有)ができるようになってきた。

 その一方で、「パスキーの認証になぜか失敗する」「同期されているはずのパスキーが別のデバイスで見つからない」といったトラブルに遭遇したこともあるのではないだろうか?  筆者にもそういう経験がある(中にはまだ解決できていないものもある)。

 そこで本Tech TIPSでは、筆者が遭遇したトラブルも含めて、パスキー認証/生成/同期で生じやすいトラブルや制限と、その対策/回避策を紹介する。基本的にWindows OS、iPhone(iOS)、Androidスマートフォン(スマホ)、Chromeを中心に説明したい。

 解決策が見つかったり、新たなトラブルが発覚したりしたら、随時更新していく予定だ。

ChromeとGoogleパスワードマネージャーでパスキーが共有できない

 Chromeでは、「Googleパスワードマネージャー」を使ってパスキーの共有(同期)ができる。例えば、Windows PCのChromeで、とあるWebサイトの認証でパスキーを登録すると、Googleパスワードマネージャーを介して、同じGoogleアカウントでログインしている別のPCやAndroidスマホのChromeでも、同じパスキーで認証できる。

 しかし、状況によっては、共有しているはずのパスキーが選択肢に表示されないことがある。幾つかのパターンを紹介しよう。

●Google Chromeのバージョンが古く、パスキーに対応していない

 結論からいえば、OSにしろChromeにしろ、なるべく最新版にアップデートしておくのが理想だ。特にパスキーの共有については、執筆時点では現在進行形で実装されている状態なので、バージョンを上げると解決する可能性がある。

 最低限のバージョンについて、Googleアカウントでの要件を紹介しよう。Googleアカウントにパスキーでサインインするには、OS/Chromeごとに以下のバージョン以降を利用している必要がある。

  • Windows OS: Windows 10/Windows 11
  • iPhone/iPad: iOS 16/iPad OS 16以降
  • Android: Android OSバージョン9以降
  • Chrome: バージョン109以降

 その他のサービスでのパスキー認証では、また別の要件が必要な可能性もある。またパスキーを共有する場合は、もっと新しいバージョンが必要なことも考えられるので注意してほしい。

 Chromeのアップデート手順については、Google Chrome完全ガイド「Google Chromeを手動で最新版にアップデートする」を参照していただきたい。

●Windows PCではTPMが非搭載だとパスキーを共有できない

 Googleパスワードマネージャーを使ってパスキーを保存する場合、Windows PCではTPM(トラステッドプラットフォームモジュール)の搭載が必要となる。TPMが搭載されていない、あるいはWindows OSからTPMが認識されない状態だと、パスキーの認証を選択したとき、Googleパスワードマネージャーが候補として表示されない。TPMが必須ではないWindows 10では特に注意したいポイントだ。

TPMを搭載したWindows PCでGoogleパスワードマネージャーのパスキーが候補として表示された例 TPMを搭載したWindows PCでGoogleパスワードマネージャーのパスキーが候補として表示された例
TPMを搭載していないWindows PCでGoogleパスワードマネージャーのパスキーが候補として表示されなかった例 TPMを搭載していないWindows PCでGoogleパスワードマネージャーのパスキーが候補として表示されなかった例

 TPMが「オン」(有効)になっているかどうかは、「Windowsセキュリティ」アプリの「セキュリティプロセッサの詳細」という画面で確認できる。それには「設定」アプリで「TPM」と検索すると表示される候補のうち、「セキュリティプロセッサ」をクリックする。

Windows OSでTPMが無効かどうかを確認する(1/3) Windows OSでTPMが無効かどうかを確認する(1/3)
これはWindows 10の例。Windows 11でも同様の手順で確認できる。
Windows OSでTPMが無効かどうかを確認する(2/3) Windows OSでTPMが無効かどうかを確認する(2/3)
これはTPMが無効なPCの例(TPMは搭載されているものの、UEFIセットアップで無効化されている)。
Windows OSでTPMが無効かどうかを確認する(3/3) Windows OSでTPMが無効かどうかを確認する(3/3)
これはTPMが有効なPCの例。

 TPMが搭載されていなかった場合は、対象PCをTPM搭載PCにリプレースしたり、PCではなくスマートフォンにパスキーを保存して共有したり、といった抜本的な対策が必要になってしまう。

●パスキーの共有が無効になっている

 Chromeで同期を有効にすると、パスキーはパスワードとともに、デフォルトで他のデバイスと同期(共有)されるように設定される。しかし、何らかの事情でパスワードの同期を手動で「オフ」にしていた場合、パスキーも同期されない。以下のように「オン」になっていることを再確認しておこう。

ChromeとGoogleパスワードマネージャーでパスキーの同期を有効化する(1/4) ChromeとGoogleパスワードマネージャーでパスキーの同期を有効化する(1/4)
ChromeとGoogleパスワードマネージャーでパスキーの同期を有効化する(2/4) ChromeとGoogleパスワードマネージャーでパスキーの同期を有効化する(2/4)
ChromeとGoogleパスワードマネージャーでパスキーの同期を有効化する(3/4) ChromeとGoogleパスワードマネージャーでパスキーの同期を有効化する(3/4)
ChromeとGoogleパスワードマネージャーでパスキーの同期を有効化する(4/4) ChromeとGoogleパスワードマネージャーでパスキーの同期を有効化する(4/4)

●iPhoneはGoogleパスワードマネージャーでのパスキー共有ができない

 Windows OSやAndroidスマホ、LinuxのChrome、ChromeOSでは、既にGoogleパスワードマネージャーによるパスキーの同期(共有)に対応している。

 一方、iPhone/iPad(iOS)版ChromeのGoogleパスワードマネージャーについては、まだパスキーの同期機能が実装されておらず、利用できない。つまり、Windows OSやAndroidでGoogleパスワードマネージャーに保存したパスキーを、iOSに同期して認証に使うことができない。

iPhone版ChromeのGoogleパスワードマネージャーではパスキーが見つからない iPhone版ChromeのGoogleパスワードマネージャーではパスキーが見つからない

 これは執筆時点で開発中とのことなので、実装されるまで待つか、ひとまずパスキー共有を別の手段で代替する必要がある。

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